第423話 妹と帰る

妹「おにぃ」

話が一区切りついて、安心したのか妹が俺に抱き着いてきた


俺「どうした?」

頭を撫でてやると、顔をグッと俺に押し付けてくる


妹「おにぃ……」

俺を呼ぶ声は、安堵の色が濃い


俺「心配かけてごめんな」

ったく、恥ずかしいな……今日だけだぞ

妹の頭と背中を包み込むように抱きしめる


妹「うぅ……っ、うくっ……ひぃ、あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

涙を堪えず、泣き出した妹の背中をさする


よしよし、よく耐えたな

俺が名前持ち化して、入院して……不安に押し潰されなかったな

偉いぞ


少しの間、みんなに見守られた状態で妹をあやす


妹がやっと泣き止んで、顔を離すと

俺の洋服が濡れていた

目は薄っすら赤く腫れて、頬には涙の跡が残る


そして、俺の服と妹を繋ぐ鼻水……

まぁ、そんな事になってるんじゃないかって気はしてた

してたけどさ!

お前、どーすんだよ!コレ!


妹「……」

俺「心配かけて悪かったな」

小さく頷いて、鼻水をポケットティッシュで拭いて

俺の後ろへ隠れる


南城「さてと、この後はどうする?」

どうするって、解散でいいんじゃないか?


堀北「そうね……快気祝いに、どこかへ遊びにでも?」

あ~、それはそれでアリだな


四季島「俺は、この後用事があるんだ。すまない」

多分、俺関係の事だよな……ほんと苦労ばっか掛けてるな

すまん!


南城「別に四季島くんには聞いてないよ」

……え?


四季島「そ、そうか。ははは……はぁ」

可哀そう


仁科「ごめんね!私、この後学校戻らなきゃダメだから」

学校に戻るの?


俺「何かやらかしたの?」

校則違反とか、テストで赤点とか?


仁科「違うよ!えっと……進路相談?するみたい」

進路相談か

でも、仁科さんはパティシエになるって言ってたし

卒業後は留学するんじゃなかったっけ?

まだ、決定ではなかったって事なのかな?


東雲「私は行くわ!」

江藤「残念ですが、お嬢様は不参加です」


東雲「なんでよ!」

江藤「今日は、夕食ディナーを当主様とご一緒する予定です。早く帰ってくるように言われましたでしょう?」

当主って事は、東雲さんのお父さんかな?


東雲「そんなのキャンセルよ!」

江藤「できません。観念してご帰宅ください」

強制的に連行される事が決定した東雲さんは頬を膨らませて不貞腐れてる


堀北「えっと、BくんとDくんはどう?」

B「えっ⁉俺達も参加していいんですか⁉」

なんで敬語なんだよ


南城「もちろんだよ。だって、彼の友達なんだから」

それは、暗に四季島と俺は友達ではないって事か

まぁ、友達かって聞かれたら……少し違う気はするけど


D「……俺は行けません」

どうした?


俺「なんか用事あるのか?」

南城さんと堀北さんと遊ぶチャンスを捨てるほどの用事が?


D「ああ、残念だけどな」

ほんとに、血涙しそうなくらい残念そうだな……


南城「そっかぁ、じゃ今日はやめとこっか」

うん

そうだね


俺「どうせなら、みんなで遊びたいしね」

予定を合わせて、ここにいる全員で遊びたいな


堀北「そうね。それじゃ、今日は解散かしら?」


俺「うん。そうだね」

さて、それじゃ帰るか


なんか、2日ぶりの家が急に恋しくなってきたな



解散となり、みんな揃って部屋を出ようと動きだす


妹は、俺にしがみ付いたまま移動してる

動きにくいし、熱いし、離れてほしいんだけど……

とりあえず、顔洗ってくるように言うか


俺「そこ洗面所だから顔洗ってこいよ」

中見るとびっくりするくらい広いし明るいぞ


妹「うん」

顔を俯かせて、小走りで洗面所へ入っていく


ドアの前で待つか……


南城「あれ?妹ちゃんは?」

最後尾の俺達を気にして振り返った南城さんが聞いてくる


俺「顔洗いに行ったよ」

洗面所を指さす


南城「そっか」

そこで皆が立ち止まる

待ってくれるつもりなのかな?


俺「あ~……、気にしないでいいよ。妹も多分顔見られたくないだろうから、先行ってて」

顔を洗ったって、目の腫れは簡単には引かないだろうし


堀北「そうね。それじゃ、また明日」

B「明日な~」

D「じゃ!」

南城「また明日ね」

江藤「では、失礼します。行きますよ、お嬢様」

東雲「ちょっ、江藤!引っ張らないで!行く!ちゃんと帰るから!子供みたいに引っ張らないでってば!」

四季島「それじゃ、またな……何かあればすぐに連絡しろよ」


全員が部屋を出て行く


俺「おい、もう出てきて大丈夫だぞ」

洗面所へ声をかける

すると、妹がおずおずとドアから顔を覗かせる


俺「みんな、先に行ってくれたから」


妹「うん」


やっと安心して出てきた妹は、目元が若干赤くなってはいたけど

それ以外はいつも通りの妹に戻っていた


俺「帰るぞ」


妹「うん!」


監視者「では、行きましょうか」

おっと⁉

そうだった、この人は残ってたんだった


妹「っ⁉」

俺以外誰もいないと思ってたから、びっくりして硬直する妹


監視者「どうされましか?」

いや、うん……どうもしてないよ


俺「まだ、アナタがいる事に慣れてないみたいで」

監視者「そうでしたか。やはり挨拶が堅過ぎましたかね……妹さん」


妹「は、はい?」


監視者「怖がらなくて大丈夫です。私はお兄さんを守る為にいるだけですから」


妹「は、はい……」

さっきの俺の趣味クイズの時は大丈夫だったのにな


監視者「う~ん……私の事は、気軽にW・AとかWって呼んでくださいね」

手を差し出して、握手を求める

てか何で、W・Aなんだ?


俺「ほら、大丈夫だから」

握手を促す


妹「うん」

躊躇いがちにW・Aさんの手を取る


W・A「よろしくお願いしますね。お近付の印にコレを差し上げます」

小さく折られた紙を妹の手に乗せる


妹「これは?」

W・A「とても良いものです。帰ったらお一人の時に開いてください」

なんか、ヤバイものじゃないよな?


俺「それ、中身何ですか?」

粉末状のモノじゃないですよね?


W・A「心配には及びませんよ。ただのメモですから」

メモ?

それが良いもの?


俺「ヤバいモンだったら、すぐに俺に言うんだぞ?」


妹「うん」

ま、W・Aさんが嘘を吐くとは思えないし

とりあえず、妹の判断待ちでいいか


W・A「おそらく外で車が待ってますので、それに乗ってお帰りください。私は別の車で見守ってますので」

そっか

ずっと監視するって言っても、家の中には入ってこないよな


俺「だってさ。帰ろうぜ」

妹「うん!」






妹と俺は、四季島が用意してくれた車に乗り自宅まで帰った

W・Aさんは、監視用の車で付いてきてるらしい


多分、何台か後ろにいる車のどれかだろう





さぁて、帰ったらまずは何するかなぁ……

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