第415話 監視者さん

俺「そういえば検査って何時からするんだろ」

と独り言を言ったつもりだったのに


「検査は10時から開始ですよ」

え!?


俺「誰!?」

ここって俺しかいないんじゃないの!?

オバケ!?


「おはようございます」

部屋の隅に、スーツを着た女性が立っていた……

スーツのオバケ?


俺「……おはよう、ございます?」

でも、挨拶したよな?

オバケって挨拶するのか?


「その感じだと、私のことを知らないようですね」

知らないよ!!


俺「どちら様で?」

ちゃんと会話が成り立ってるし、こんだけはっきり見えてるって事はオバケじゃない……?


「私はアナタを監視する者です」

監視……って昨日も言ってたアレか!?


俺「へ、部屋の中まで来るんですか?」

てっきり外だけだと思ってた……


監視者「はい。以前の観察とは違い、今回は監視なので」

観察と、監視の違い……?


俺「それって、プライベート的なものは……?」

ないの?


監視者「もちろん、お風呂やトイレまで監視はしませんよ。ただし、こうした日常は常に監視させてもらいます」

ま、マジかよ……

これは、安請け合いしちゃったか……?

監視が付くって、そういう意味だったなんてな


俺「わ、わかりました」

でも、四季島と親父さんには助けてもらってばっかだし……

これくらいは我慢しないとダメかな


監視者「もう一眠りしますか?」

あ~、どうしようかな

何かびっくりしちゃって、眠気なんて飛んでっちゃったんだよな


俺「いや、起きてます」

で、何するかだけど

南城さんへ、どうやって謝ればいいか考えないとな


監視者「そうですか」

見られてるはず、なんだけど……

全然気配がないな

部屋の隅を見ると、確かにそこにいるのに

全く気配がしない……ほんとに生きてる人なの?


監視者「何か?」

気づかれた!?


俺「あ、いえ、何でもないです。すいません」

ダメだ!ダメだ!

集中しよう!!







って出来るかーーーー!!


俺「あ、あの」

監視者「何ですか?」


俺「少し話し相手になってもらっても?」

監視者「話し相手、ですか?」

そうそう

1回気になっちゃうと、もう気になって仕方ないんだよ


監視者「わかりました。何の話でしょう?」

話題かぁ


俺「えっと、アナタの事を教えてくれますか?」

友達までいかなくとも、知り合い程度には知りたいんだよね

全く知らない人に監視されてるって、何かメッチャ緊張するし


監視者「私ですか?」

そうそう


俺「はい」

どんな事でもいいんで


監視者「そうですね…………、身長は165cm、体重は」

ちょっと待って!?


俺「違います!!」

なんでそんな事喋りだしてんの!?


監視者「嘘ではないですが」

そういう意味でもない!!


俺「そういう事じゃなくて……えっと、趣味とか!そういう話をお願いします」

なんで身長や体重を喋りだしてんだよ

からかってる?

いや、なんか真面目そうだしそんな雰囲気でもなかったよな……


監視者「趣味、ですか……」

そんな悩むような事だった!?

もしかして、地雷ワードだった?


監視者「趣味と言っていいのかわからないけど、人間観察は好きです」

に、人間観察?


俺「それって」

趣味なの?


監視者「楽しいですよ。街中の人を観察して、どういう人物なのか想像するのは」

それって……もう、半分くらい仕事なんじゃ


俺「そ、そうですか」

変わってる人かもな……

確かに人間観察は楽しいだろうけど、趣味になるのかぁ


監視者「アナタの趣味は、二次元サブカルですよね」

俺の話はどーでもいいんだよ?


俺「そ、そうですね」

大きく括るとそうなりますけど……

間違ってはないですけど……


監視者「他にも料理、特に製菓に力を入れていますね」

青果?

……って製菓か

お菓子作りだから、間違ってはないけど……大袈裟な言い方だな


俺「ええ、まぁ」

なんか、詳しいなぁ


監視者「他にも、楽しむことが好きで色々な事に興味が」

なんでそんなことまで知ってるの!?


俺「く、詳しいですね!?」

怖っ!


監視者「常に観察してましたから」

えっと……もしかして


俺「俺を観察し始めたのっていつくらいからですか?」


監視者「観察任務は……そうですね、アナタが名前持ちの遺伝子を持ってる事が分かった時からです」

ず、ずいぶん前から俺を見てたのか……


俺「で、でも、初対面ですよね?」

もしかして、前に会ったことある?


監視者「はい、こうして言葉を交わすのは初ですよ」

常に俺を監視してたけど、一切声はかけてこなかったって事か


俺「うん?って事は、もしかしてあのビルに乗り込んだ時も?」

ずっと俺を見てたって事か?


監視者「すいません、その時は一時的に見失ってまして」

だ、大丈夫なのか……?


監視者「まさか、4人体制で見守っていたのに……見失うほど気配を消されるとは思いませんでした」

あ~~、もしかして

俺が気配を消したせいで見失ったの?


俺「なんか、ごめんなさい」

余計な手間を取らせちゃったな


監視者「いえ、まだ訓練が足りてませんでした。以後このような事がないよう、より一層厳しい訓練メニューを行っていきます!死ぬ寸前まで、訓練します!!」

死ぬ寸前!?

なんかホントすみません!!



俺の軽はずみな行動のせいで……


俺を監視してた人、ごめんなさい!!

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