第412話 薬のこと

部屋で立ち尽くして、既に5分くらいは経っただろうか


ハッとある事を思い出した

妹に連絡してないや


スマホで妹に電話をかける


少しの呼び出し音の後、妹が控え目な声で出た


妹『おにぃ?』

心配と言うか、警戒した感じのこが聞こえてくる


俺「ああ、俺だ」

声の感じとしては、起きてたっぽいな


妹『こんな時間にどうしたの?』


俺「ちょっと報告しようと思ってな」


妹『報告?』


俺「そうそう。実はさ、戻れたんだ」

名前無しに、さ


妹『え?おにぃ、今なんて?』

聞こえなかったか?

もう1回言うぞ?


俺「もとに」

四季島「おい、A!」

うわっ!?


俺「四季島!?どうした!?」

そんな慌てて


四季島「お前に大事な話がある、こんな時間ですまないが一緒に来てくれ!」

マジかよ

これから?


妹『おにぃ!どうしたの!?何かあったの!?』

スピーカーから漏れ聞こえる声で、通話中だったのを思い出す


俺「すまん、ちょっと急用ができたから話はまた明日な」

答えも聞かず通話を切る


四季島「良かったのか?」


俺「ん?ああ、妹だし」

大丈夫、大丈夫


四季島「そ、そうか。それじゃ、付いて来てくれ」

何があったのか分からないけど、四季島が慌ててるし

よっぽどの事があったんだろうな


付いて行った先は、まさかの健太郎さんの所だった


健太郎「急に呼び出して、すまないな」


俺「いえ……。それで、どうしたんですか?」


健太郎「ああ、君の病室で発見された包装コレなんだけど……やっぱりウチの研究所の物だったよ」

それは、なんとなく四季島の態度でわかってたけど

何の薬だったんだろ


健太郎「コレね、『名前持ち化ネームダー』って名前なんだ」

ネームダー?


健太郎「名前無しを名前持ちへ変化させる、特別な薬だよ」

それって!?


俺「四季島が言ってた……」

薬の効果が切れると、よくて廃人になるって薬なんじゃ……


健太郎「ああ、太一から薬自体の説明は受けていたんだね。そう、その薬だよ」

え?

マジ?


太一「そして、検査の結果……お前が服用していたのが分かった」

ふく、よう?


俺「それって俺が飲んだって、こと?」

四季島親子が揃って頷く


マジかぁ……


もしかして、俺ヤバイのかな……


健太郎「ってわけで、君には要観察対象という決定が下された」

要観察、対象?


俺「俺、どうなるんですか?」

死ぬの?


健太郎「そうだねぇ、とりあえず監視が付くよ」

監視?


俺「俺を監視するんですか?」


健太郎「そうだね。君をより詳しく知る為に、必要な処置なんだ。窮屈かもしれないけど、我慢してほしい」

まぁ、監視されるだけなら……いいかな


俺「わかりました」


健太郎「それと、これからが本題なんだ」

本題?


健太郎「すまなかった。またウチの研究員がしでかしたみたいだ」

わざわざ立ち上がって頭を下げる健太郎さん


俺「あ、いえ……」

そっか

まだ売られてない薬って事は、持ち出された物なのか


健太郎「今回の不祥事は、すまないが公にできない理由がある。なので、どうか私に免じて黙っていてもらえないだろうか?」

ヤバイ薬だってのはきいてたし、公にできない理由は薬のせいだろうな


俺「その、頭を上げてください!何から何までお世話になってるんで、絶対に言いふらしたりしないですから!!」

そんな事するわけないじゃないですか!


健太郎「ありがとう。感謝するよ」

いや、俺の方が感謝してますから!!


俺「こちらこそ、お世話になりっぱなしで!何から何までありがとうございます!」


健太郎「さて、話は以上なんだが……何か聞きたい事はあるかな?」

聞きたい、こと…………あ、そうだ!


俺「1つ聞きたい事があるんですけど、いいですか?」


どうしてもって訳じゃないけど


健太郎さんに、質問してみたかったんだよ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る