第410話 学生の時の健太郎さん

健太郎「佐々木……乱子…………今になってその名前を聞くことになるとはな…………」

知ってる……?


俺「もしかして、ご存知なんですか?」

佐々木さんの事を知ってる人が、いる?


健太郎「あ、ああ。知っている」

!?


俺「それは、生前の佐々木さんを知ってるってことですか!?」


健太郎「生前……そうか、そうだな。彼女が生きていた時の事を知ってる」

すごい……

これは偶然なのか?

佐々木さんはこうなる事を見越して俺を……?


俺「そっか。ちゃんと覚えてる人がいたんだ……よかった……」

よかった


健太郎「太一、A君の話は真実かもしれない」

太一「父さん、どういう事か説明してくれませんか?」


健太郎「佐々木乱子さん。彼女は私が学生の時の後輩だったんだ」

佐々木さんの先輩か


健太郎「学年も部活も委員会も違った、でも面識はあったんだ」

太一「どういう面識だったんですか?」

健太郎さんの表情は、当時を懐かしむ感じだけど

少しだけ、暗い感じもした……


健太郎「相談相手をしてたんだよ。乱子ちゃんは、恋で悩んでいたんだ」

太一「恋愛相談ですか?」

恋愛相談の相手……

そっか、名前持ち同士だから


健太郎「そうだな…………。でも、私では力になれなかった」

太一「父さんが?」


健太郎「ああ、むしろ私の方が色々と教わったくらいだった。女心や特別な存在ヒトについて、乱子ちゃんほど熱く語る女性には会ったことがない」

へぇ


太一「それほどの人が」

四季島が関心してる……!?


健太郎「ああ、それほどの人がとは思いもしなかった……」

太一「それは、自殺したということですか!?」

そうだ

佐々木さんは、文字通り命を賭けて恋をしていた


健太郎「結果だけ見れば、その通りだ」

うん?


太一「どういう事ですか?」


健太郎「私は……乱子ちゃんの最期の声を聞いたんだ」

最期の声?


健太郎「あの日も、乱子ちゃんは私に『相談したい事がある』と連絡をくれたんだ。でも私はそれを断ってしまった……」

太一「なぜ、断ったんですか?」


健太郎「あの日、私には優先したい用事があったんだ」

優先したい用事か……まぁ、そりゃあるよな

用事が全くない方が、おかしいよな


太一「その用事とは」

健太郎「告白をしようと、していたんだ」

え?


太一「こ、告白ですか?」

健太郎「そうだ。まぁ、フラれてしまったがな」

え!?

フラれた!?


太一「父さんが、フラれる?」

四季島も思いもよらない言葉に、目が点になる


健太郎「ああ、あれは中々に辛いな」

やっぱ、辛いんだな……


健太郎「少し話が逸れたな。フラれた後、意気消沈している私は……乱子ちゃんに連絡を入れたんだ。フラれてしまった事を相談したくてな」


健太郎「でも、いくら電話をかけても出てもらえず。メールも返事がなかった。相談を断った事をきっと怒っているのだろうと、その時は思って翌日謝りに行こうと思ったんだ」


健太郎「翌朝、学校に着くと騒ぎになっていた。1人の女生徒が自殺をしたと」


健太郎「胸騒ぎがして、その現場へ走って向かう途中……黒い袋を運ぶ人を見つけたんだ」


健太郎「その袋には、死体が入ってると直感した。だから運んでいる人を説得して、顔を確認させてもらった」


健太郎「中の死体は……乱子ちゃんだった。私は、その時初めて“死”というものを知ったよ」


健太郎「全身から力が抜けて、頭が真っ白になって、なにも考えることができなくなった。私があの時ちゃんと相談にのっていれば……、そう悔やんでも悔やみきれない思いを未だに抱えているよ」

佐々木さんとそんなことがあったんだ


健太郎「乱子ちゃんは、彼女は私について何か言っていたか?」

えっと……


俺「いえ、それらしい話は聞いてないです。俺が知ってる佐々木さんは、ただただ、恋する乙女だったので」

生きている時に好きだった人への想いで、幽霊になるほど


健太郎「そうか」


佐々木さんの未練って、だったんだよな?

なら、やっぱりまだ未練は残ってるはずだし

近いうちにまた、夢に出てくるかな?


そしたら聞いてみよう

四季島健太郎という人を知っているか、そして知っているならどう思っているか



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