第406話 告白、失敗

俺と佐々木さんの2人っきりになる


俺「えっと、それじゃ……始めます」

告白、か

過去に失敗した事ならあるけど大丈夫だろうか……


佐々木「うん」

俺を真っ直ぐ見つめる瞳が、微かに揺れる


俺「……えっと」

どうしよう!!!

何も言葉が出てこない……!?

散々ギャルゲーやってきただろ、俺!!

何かヒントになるような事、思い出すんだ!!


俺「その、俺は……」

佐々木さんの事が、好き……ではない

勿論嫌いじゃないけど、あくまで俺達の関係性は友人だ

そんな友人に告白なんて……していいのか?


佐々木「あのさ。“私に”じゃなくて、君の好きな人を思い浮かべてみたらいいんじゃないかな?」

好きな人……?

えっと、誰だろ……俺の好きな人……か


俺「ちょっと待って……」

落ち着け

この勝負は、負けるわけにはいかないんだ

だから、手段を選んでなんていられない


俺「すーーーーは~~~~~……うん。おっけ」

大丈夫だ


俺「俺は佐々木さんの事が好きだ。最初会った時は、ビックリしたけど……今思うと、いい出会いだったと思う。俺達が出会えたのは、きっと奇跡みたいなものなんだと思う」


佐々木「うん、そうだね。私達の出会いは奇跡的だよ」

偶然に偶然が重なって奇跡が起きた


俺「この奇跡的な出会いを俺は……運命だと思うんだ」

出会うべくして出会った


佐々木「運命?」

そう


俺「赤い糸で結ばれてる、そういう運命」

いいよね


佐々木「ふふ、なんか……乙女みたい」

お、乙女?

そうかな?


俺「イヤだった?」

もっと男らしい方が好みだったか?


佐々木「ううん、そうじゃないの。昔ね、私も同じような事思ってたから」

昔?


俺「それって」

生きてた頃の……


佐々木「うん。ごめんね!今こんな話出すべきじゃなかったね」

そっか

あまり良くない事を思い出させちゃったか……

やっぱり、告白なんて柄じゃない事するんじゃなかったな


俺「えっと、あのさ……俺は佐々木さんの過去の事全然知らないからさ……軽はずみな事は言えないんだけど。それでも、1つだけ言わせてほしいんだ」


佐々木「何かな?」


俺「佐々木さんは、世界で一番純粋に恋してたんだと思う」

本当に、羨ましいくらいに……一途だった


佐々木「……うん。うん!」

震える声で、そう答える佐々木さんの目には涙が溢れていた


俺「自分を追い詰めてしまうくらいの愛がある。そんな大きな愛を、佐々木さんは誇っていいんだよ」

顔を伏せて嗚咽を漏らす佐々木さんをそっと抱きしめる

俺の服を掴んで震える佐々木さんの頭と背中をさす

涙を零し、今まで1人で溜め込んでいた思いを吐き出す


佐々木「私っ、私はっ、ただ好きだったの!大好きだったの!!」

うん


佐々木「それなのに、伝わらなくて!頑張ったのに!いっぱいいっぱい頑張ったんだよぉ」

もらい泣きしそうになるのを堪えながら、佐々木さんを支える


佐々木「どうして!?私じゃダメだったの!?何がいけなかったの!?分かんないよ!」

うん……


佐々木「……辛かったよ!自分に出来る精一杯の気持ちが、全然届かなくて!」

そっか


佐々木「それに……それに……大好きだったの」

うん


俺「落ち着くまで、こうしてて良いから」

暫くそのままの体勢で止まらない涙を、ただただ流し続けた








どれくらい時間が経っただろうか

佐々木「ごめんね」


やっと佐々木さんの涙が止まり、顔を上げる事が出来るようになった


俺「いや、辛い事思い出させちゃってゴメン」

そんなつもりは無かったんだ


佐々木「えへへ、それはちょっと自業自得かも……君から告白されるって考えたら、ついオッケーしちゃったし」

そっか


俺「ちゃんと告白できなくて、ごめん」

もっと上手くできればよかったんだけど


佐々木「ううん。すっごく嬉しかったよ」

目元が朱くなってるけど、それ以上に笑った笑顔は……輝いていた





A「ったく、いつまでいちゃついてんだよ」

はっ!?

いつの間にかドアの所に名前持ち化した俺が立ってる!?


俺「お、おまっ、外で待ってるんじゃなかったのかよ!?」

何で入って来てんだよ!?


A「あまりに遅いから何か変な事してんじゃないかって、見に来たんだよ」

変な事?


佐々木「ちょっと!?そんな事するわけないでしょ!?」


A「そうみたいだね。さて、次は俺の番か」

そうだ

次は名前持ち化した俺こいつが佐々木さんに告白する番だ


その結果次第で、俺の運命は決まる……

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