第407話 現実へ帰還

A「はぁ、……好きです。付き合ってください」

何それ!?

やる気どこ行った!?


佐々木「ごめんなさい」


A「だろうな」

な、何がしたかったんだよ!?


俺「ちょっと待てよ!お前、勝負は」


A「ンなもん、やる前から負け確定だろ……お前らの事見て勝てるって思うほど、俺はお気楽じゃねーよ」

え?


佐々木「やっぱり、最初から」

最初から?


A「そうだよ。最初から分かってたよ」

どういう事?


佐々木「そっか。ほんと、君は優しい人だね……名前持ちになって、ちゃんと自分にも優しくなれたんだね」

何?何?何?

話が見えないんだけど?


A「まぁ、な」

2人は何を話してるの!?

片方は俺なのに、何言ってんのか分かんないんだけど!?


俺「ちょっと、さっきから何話して」


A「名前無しには関係無い話だよ。だから、説明する気はない。俺なんだから考えろ」

はぁ!?


佐々木「あはは、自分同士で喧嘩なんてすごい事するね」

笑いごとじゃないよ!?


A「それじゃ、勝者には権利を行使してもらおうか」

ん?


佐々木「ほんとにいいんだね?」

んん?


A「ああ、元から未練なんて無いからな。俺はどうすればいいんだ?」

佐々木「君は何もしなくていいよ。彼が帰れば全部終わるから」

A「全部?それは」

佐々木「そう。全部だよ」


ねぇ!?

俺も話に交ぜてよ!?


A「いいのか?」

佐々木「うん。やりきったって思えたから」

え?


A「そっか」


佐々木「はい!それじゃ、そろそろお開きにしよ」

これで、終わり?


A「だな。ほら、早く帰れよ。っと、そうだ!その前に1つ頼みがあるんだった」

頼み?

俺に?


俺「なんだ?」

何か碌な事じゃなさそうだけど……


A「南城さんに、ちゃんと謝ってくれ」

あ~、その事か


俺「わかった」

それは、俺も考えてたからな


佐々木「帰るのは簡単だよ。自分の姿を思い出しながら、そこのドアから出ればいいから」

そっか


俺「了解。佐々木さん、色々ありがとね」


佐々木「ううん。なんだかんだ私も楽しかったから」

俺なんかの相手して、楽しめたなら光栄だな


俺「それじゃ、またね」


佐々木「……うん」


A「ほら、早く行けよ」


俺「あ、ああ」


ドアを開けて、1歩外へ出ると

真っ白な光に包まれて、目を瞑る


俺「眩しっ!!」

何か目閉じた状態なのにチカチカする……


もう大丈夫かな?

暫くして薄めを開けると、そこは……病室だった

しかも床の上で寝ていた

いや、倒れてた?

何でベッドで寝てないんだ?


名前持ち化した時から病室に来た事までは覚えてるんだけど……その後、どうしたんだっけ?


思い出せない……


ま、まぁ、いいか!


細かい事は気にしない!!


窓ガラスに映る俺は、ちゃんと名前無しだ

結果的に、何の問題もないしいいだろ


ナースコールする訳にもいかないし、とりあえず電話使ってみるか

番号って押す必要あるのかな?


受話器を上げて耳に当てると、既にプルルルルと何処かへ発信していた

便利だな


「はい、どうなさいましたか?」

もっと待たされるかと思ったけど、存外早かったな


俺「えっと……四季島は?」

この人が俺の事を知ってるか分からないし、四季島に繋いでもらった方がいいかな


「社長は、会議中でございます」

社長!?

あ、そうか!

四季島って言ったら親父さんの方が出てくるのか!?


俺「すいません。太一君の方です」

俺が社長を呼び捨てに何かするかよ!


「太一様は……はい、お繋ぎしますので少しお待ちください」

保留のメロディーが受話器から流れ、待つ事2分くらい


四季島「どうした?」

おお、四季島の声だ


俺「今、大丈夫か?」

忙しかったら明日でもいいんだけど


四季島「ああ、何があった?」


俺「戻れたんだけど」


四季島「……は?」

聞き取れなったか?


俺「戻れたんだけど、俺はどうしたらいい?」

すぐ出て行くべきか?


四季島「戻れたって……名前無しにか?」

そうそう


俺「うん」

ちゃんと狭間の事を覚えてるから、きっとあれは夢じゃないんだろうけど

説明しても信じてもらえないだろうな


四季島「どうやって!?」

どうやってって、とりあえず説明してみるか


俺「ちょっと、長くなるかもしれないけど」

いいか?


四季島「込み入った話なのか……分かった今からそっち行くから、俺以外に誰にも話すな」

お前以外には話すつもりはないから、問題ないな


俺「わかった」

と返事をしたが、既に電話は切れていた


とりあえず、四季島が来たらしっかり話せるように頭の中整理しておこうかな

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