第366話 選ばれた服は
天草「はーい、後5分で終わりねー!」
さて、残り5分か
俺「ところで、天草店長さん」
天草「改まって何かな?」
俺「俺はコンテストとかどうでもいいんですよね」
1着買えればそれでいいし
天草「だろうね」
俺の思考なんて、お見通しかな……?
俺「こうして協力してるんだし、何かしらサービスしてもらったりできませんかね?」
例えば……割引とか!
天草「ふ~ん。私と交渉でもするつもり?」
もちろん、断られたらそれまでだけど
俺「そんな交渉だなんて……ただ、ちょっとした提案ですよ」
さて、どう出る?
天草「提案、ね。何か要望とかあるの?」
乗ってきた!
俺「少ーし、割引してもらえたりすると助かるんですよね」
ここの服、良い物なんだろうけど……ちょーっと高いんだよね
天草「学生にはちょっと高いと、そういう事?」
有り体に言えば、そういう事です
俺「どうですかね?」
天草「う~ん……うちは割引サービスはしてないから」
ちっ、ダメか
俺「それは残念です」
あ~あ、痛い出費だなぁ
天草「でも……」
でも?
天草「1着買ってくれれば、もう1着プレゼントしてあげる」
はぁ⁉
2着目タダ⁉
いや、いらないんだけど⁉
俺「それは……」
貰っても嬉しくないなぁ
天草「はい!終ー了!!こっちに集合してー!」
各々手に服を持って集まってくる
天草「それじゃ、誰から発表する?」
ピシッと1番に手を上げたのは東雲さんだった
東雲「私1番がいい!」
まぁ、誰が1番最初かは重要じゃないしね
天草「どうぞー」
全員の見える位置に立って、選んだ服を掲げる
東雲「私は、コレ!」
手にしているのは黒と白が半々くらいの割合の服だ
特筆すべきは、多分だけど袖や裾に施された金糸の刺繍かな
それがあるだけで華やかさが格別に上がっている
天草「それを選んだのは何故?」
気に入ったから、とかじゃないの?
東雲「これが私の持ってるデザインに一番近いから!これ着てくれればお揃いだよ!」
マジか……
俺「却下で」
お揃いだからって、妹の文化祭以外で着るつもりはないし
東雲「えぇー⁉」
当たり前だろ
俺「それ、派手すぎるかな」
もっと地味な感じのがいいな
天草「はい、残念!次の人ー!」
天草さん、楽しそうだなぁ……
南城「はーい!」
次は南城さんか
天草「はい、千秋ちゃんどーぞ!」
何か、慣れ慣れしいな……
南城「私はコレにしたよ!」
ちょっと意外な事に、南城さんが選んだのは白の割合が多い服だった
天草「へぇ、ミニスカタイプしたのね」
う~ん……
南城「はい!これ、可愛いなって思ったから」
確かに可愛いけど……ちょっと、生地の面積が少ない気がするなぁ
ミニスカートは、ちょっと遠慮したいな
天草「どうかしら?」
俺「パスで」
それは着れないよ……
天草「だそうよ?」
南城「そっか、ざんねーん」
あっさりしてるって事は、選ばれるって思ってなかったのかな
天草「はい、次は誰かしら?」
堀北「私、かしら?」
妹と仁科さんが手を上げないから、堀北さんが挙手する
天草「貴女は、お名前は?」
堀北「堀北 春香です。私はコレにしました」
そう言って見せてくれたのは、“普通の”という形容詞でいいのか分からないが、シンプルなゴスロリ服だった
天草「スタンダードタイプね」
いろんなタイプがあるんだなぁ
堀北「これは、どうかしら?」
うん、悪くないかな
俺「いいと思う」
それなら、着ても平気かな
スカート丈も長いし、派手じゃないし
天草「好評みたいね。もしかして、コレで決まりかしら?」
仁科「あ、待って待って!折角選んだから、見るだけ見てほしいな」
そうだよね
俺「うん。仁科さんはどんなの選んでくれたの?」
てか、何で俺がゴスロリ服着るのかすら知らないのに律儀に選んでくれたんだ……
天草「仁科さんっていうのね」
仁科「はい!仁科 豊です。私が選んだのは、コレ!」
え……、それ?
天草「まぁまぁまぁ、随分と攻めたデザインのにしたのね」
袖や裾がボロボロに見えるんだけど、気のせいじゃないよね?
仁科「なんか、コレは他のと違うから面白いかなぁって」
面白いか面白くないかで言えば、面白い……のかな?
天草「どうかしら?」
どうって……
俺「ごめん。それはあんまり好きじゃないかな」
ボロボロの服にしか見えないよ
天草「残念ね。最後は、妹さんね?」
妹「はい。私はコレです」
それって……!
天草「あら、嬉しいチョイスね」
嬉しいの?
妹「店長さんが着てたのってコレですよね?」
天草「そうよー。それはね、私の原点でもあるし至高でもあるの」
原点で、至高?
妹「きっと、兄さんにも似合うと思いました」
そうかな?
まぁ、悪くないけど……
天草「どう?」
俺「それ、俺に似合うのか?」
微妙な気もするけど……
天草「実は私もソレを勧めようよ思ってたの。君に似合うのは、このデザインじゃないかって思ったのよ?」
本当に?
俺「じゃあ、2択か」
堀北さんが選んでくれたスタンダードタイプもいいけど、店長の一押しがあるならコッチかなぁ
堀北「私もそれ、良いと思うわ。先に選ばれちゃったからコッチにしたのよね」
そうなんだ?
俺「なら、ソレにしようか」
堀北さんと天草店長が選んだなら、間違いはないかな
妹「やった!」
えーっと、幾らだ……?
値段を確認して……うん、何とか足りそうか
俺「店長さん。コレ買います」
天草「お買い上げありがとうございます!サイズの微調整サービスもあるからフィッティングルームに案内します。他の皆は店内をゆっくり見て待っててね」
店長に連れられて、俺は別室へ案内される
そこで、試着して各所の調整をしてもらう
天草「で、もう1着はどうする?」
あ~……断ってもいいけど
ちょっと勿体ない気もするんだよなぁ
俺「とりあえず、今回は保留でいいですか?」
また来る機会があるとは思えないけど
天草「もちろんいいけど……ホントに今日じゃなくていいの?」
俺「はい」
その1着を巡って喧嘩にでもなったら大変だし
天草「なら、引換券渡すから次の1着が決まったら持って来て」
俺「ありがとうございます」
さて、この後はどうするかなぁ
天草「はい、できた。どう?腕とか肩の辺りに違和感ない?」
うん、違和感はないけど
俺「これ、胸のトコって」
スカスカなんだけど
天草「それはテキトーに詰め物しておけば大丈夫」
そーですか……
俺「それじゃ、もう着替えていいですか?」
天草「あ、ちょっと待って」
そう言って一旦部屋を出て行く天草さんを見送る
何か、いい事を思い付いたって顔してたみたいだけど……大丈夫かな?
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