第333話 雑誌に夢中な妹

アニメを1話観て、だいたい25分が過ぎた

母さんから言われた夕飯の時間、ちょうどぐらいかな


テレビやレコーダーの電源を切り、部屋を出る

階段を下りてリビングへ向かうと……妹が珍しく雑誌を手に座っていた


母「できたわよー」

唐揚げが盛られた皿を手に母さんがキッチンから現れる

唐揚げか、久しぶりだなぁ


母さんが皿をテーブルに置くが、妹は雑誌から目を離さない

そんな集中して読むなんて、どうしたんだろうな


俺「母さん、何か手伝う?」

よく妹が手伝ってるけど、今日は望み薄そうだし


母「そうね。小皿と冷蔵庫からマヨネーズとレモン出して」

了解


俺「はーい」

先ずは冷蔵庫を開けレモンの形をした容器と、マヨネーズを出す

そして、食器棚から小皿を3人分用意してリビングへ戻る


妹の前と母さんの席、そして俺の分と小皿を置いて

マヨネーズとレモンは唐揚げの皿の近くに置く

後は……ご飯と味噌汁か?


母「ありがとね」

両手にご飯茶碗を持ってくる母さん


俺「他には?」

味噌汁とかよそう?


母「そうね、ならお味噌汁頼める?」

うん、予想通り


俺「おっけ」

母さんと入れ替わりキッチンに入って鍋からお椀に味噌汁と注ぐ

お椀を3つ用意して、大体同じ量を入れる

今日の味噌汁は……豆腐か


流石に3つ一気に運んで溢したらヤバイから、2人分を先に

と思ったら、片手にご飯を持った母さんが1つ味噌汁を持ってくれる

往復しなくてよくなったな


母「ありがとね」

別にいいよ


俺「さて、食べよう」

味噌汁を妹と自分の前に置く


俺「いただきまーす」

母「いただきます」

妹「…………」

ん?


俺「おい、飯だぞ?」

妹に声をかけるも、無視される……

というか、聞こえてない?

どんだけ集中してんだよ


見かねた母さんが、雑誌を取り上げる

妹「あっ!」


雑誌を手放して、初めて目の前にご飯の準備が整っているのに気づく妹


母「ご飯よ?続きは食べた後にしなさい」

そう言って雑誌を返す母さん


妹「ご、ごめんなさい」

それにしても、何をそんなに食い入るように読んでたんだ?


俺「その雑誌、そんなに面白いのか?」

ファッション系の雑誌みたいだし、漫画が載ってそうには見えないんだけど?


妹「えっと、……おにぃの服探してた」

ん~……?


俺「俺の服?」


妹「そう。ほら、本番まで時間もないし……」

本番……ああ、文化祭か


俺「それなら、南城さん達と相談して決めるんじゃないのか?」

3人集まれば、すぐ決まるだろ?


妹「その、前持って勉強しておこうかなって……私、あんまり服とか詳しくないし」

そうなのか


母「長くなりそうな相談ならご飯の後にしなさい」

それも、そうだな


俺「はーい。冷めちゃうし、まずは食おうぜ」

先ずはマヨネーズからかな


小皿にマヨネーズを入れて唐揚げに付ける

そのまま口に運ぶ

サクッ!!

と衣が割れて、中から肉汁が溢れ出す


醤油と生姜の下味と、マヨネーズが程よくバランスを取る


俺「美味いなぁ……」

揚げたてっていうのもあるけど、母さんって料理上手いよなぁ


妹「いただきます!」

俺が美味そうに食べたのを見て、慌てて妹も唐揚げを食べる

妹は最初からレモン汁か


妹「美味しーーー!」

だよな!


母「残さず食べてね」

そう言って母さんも唐揚げに手をつける


普段なら妹は揚げ物を一定量以上食べないけど……今日は違いそうだな

うかうかしてると無くなるかもしれない


ご飯一口→唐揚げ2個→ご飯一口→味噌汁→ご飯一口……


唐揚げが半分くらい無くなった頃、口をさっぱりさせる為にマヨネーズからレモン汁へ変更


ローテーションを変えず、そのまま唐揚げが無くなるまで食べ続けた


唐揚げが先に無くなって、ご飯と味噌汁が1口づつ残り

それを口へ運んで、完食


妹「ご馳走様でした!」

俺「ごちそうさまでした」


母「ごちそうさま。二人とも沢山食べたわねぇ」

美味かったからね


妹「なんか今日の唐揚げ、いつも以上に美味しかった!!」

たしかに……

食べながら考えたけど、何かが違うけど違うのか分かんなかったんだよな


母「気付いた?今日は隠し味を入れたのよ」

隠し味……いったい、何入れたんだ?


妹「それでなんだ!」

特に妹は隠し味を気にしてる様子はない?

もしかして、隠し味が何か気付いて……⁉

俺すら分からなかったのに?

そんなはずは……


母「そうよ。ちなみに隠し味はヒミツだから、教えてあげないわよ」

なんだよ……教えてくれたっていいじゃんか


俺「気になるな……お前は何だと思う?」

もし何か気付いてるなら……


妹「え?う~ん……わかんない!でも美味しかったから、何でもいいかな!」

……そうだよな

コイツはそういうヤツだった


俺「お前に聞いたのがバカだった」

ちょっとでも、可能性を感じた俺は間違っていたみたいだ


妹「むぅ~~!隠し味なんだから、隠してるんだし!もう!!分かる訳ないじゃん!」

あ~……うん


俺「そうだな」

気にすらしてないって事か


母「はい!それじゃアンタ達は何か相談があるんでしょ?」

別に今日しなくてもいい話だとは思うけど……


妹「うん!おにぃ、部屋来て」

何か話したい事でも、あるのか?

特に俺からは無いんだけど……

まぁ、いっか


自分の食器を下げて、妹と一緒に部屋へ向かった

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