第329話 開かないカギ

俺「あ、開かない……?」

ガチャガチャと揺すったり押したり引いたり、色々してみたがビクともしない


部員「あ~、やっぱりね」

やっぱり?


俺「知ってたの?」

何で言わなかったのさ⁉


部員「うん。注意しようと思った時には、君もう閉めちゃってたから」

……俺のせいか!


俺「どうしよ……」

南城さん達に連絡するか?

でも、ここの事はあまり知られたくないし……


部員「どうしよっかね~」

気楽だなぁ……


俺「えっと、誰か助けに来てくれる知り合いとかは?」


部員「いないよ~。だって私、幽霊部員だよ?ここに私がいる事を知ってるの君だけだし」

マジかよ……


俺「参ったなぁ……」

BやDは……もう帰ってるよな

後は……誰かいたっけかなぁ


部員「まぁまぁ、少し落ち着いて!ね?」

そう言われても……

こっから出られなくなったんだよ?


俺「兎に角、何か脱出する方法を探さないと」

最悪は鍵部分を壊して出るしかないか……


部員「あ、いくらボロボロでも学校の備品は壊したら怒られると思うよ?」

そうだよなぁ……

絶対に怒られるよなぁ


部員「それより、続き読んじゃえば?」

続きって……


俺「今はそれどころじゃないでしょ⁉」

何言ってんの⁉


部員「ほら、それミステリー系だし何かヒントとかあるかもよ?」

……ヒントか

あるか?


俺「これ読んだ事あるんだよね?」

だから俺におススメしてくれたんだし


部員「うん。でも、細かい内容は忘れちゃった」

おいおい……しっかりしてくれよ


俺「はぁ……どうするかなぁ」


部員「私もやってみていい?」

もちろん、いいけど……


俺「うん」

ドアの前から少し離れる


部員「見ててもつまらないでしょ?読んでていいよ?」

そんなに読ませたいのか……


俺「いや、でも……」

気になるし


部員「折角気に入ってくれたんだもん。こんな事で中断させたくないの」

慎重に鍵の部分を観察する部員さん


俺「わかったよ。それじゃお言葉に甘えて、続き読ませてもらうよ。でも、開きそうになったり手伝いが必要な時は言ってね?」

それだけ約束してくれれば、もう任せるよ


部員「うん。さぁ~、頑張って開けるよー!」

作業に取り掛かった部員さんに、少し不安を感じつつもイスに座って続きを読み始める


最初の数分は気になってチラチラと確認してたけど、本気で開けようとしてくれてるみたいだ


まぁ、あの子がココの主みたいな感じだろうし

任せちゃって大丈夫かな


もしかしたら、すぐ開くかもしれないし


それにしても、この小説面白いなぁ……


読み進めるペースは、昼休みほど速くはしない


授業中にふと思ったんだよ……

楽しい小説をパパっと読み終わったら、もったいないんじゃないか……と


この作品の世界をもっと堪能しないと、損な気がする!!


よって、続きが気にはなるけどゆっくり読むことにした


一言一句確認して、普段触れる表現と全く違う言葉選びを楽しむ


陽がだいぶ傾いてきて、部室に夕日が差し込む

開いた窓から弱い風が吹込み、備え付けの薄いカーテンを揺らす


こんなにゆっくりした時間を感じるの、久しぶりだなぁ……




部室ここ、やっぱ居心地良いな

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