第328話 ドキドキした……

何とか東雲さんから隠れきったな


部員「ふふ、ドキドキしたね」

俺を間近から見上げる姿勢で話しかける部員さん


俺「う、うん」

何か、近くない?

気のせいかな……ちょっと気まずい


部員「どうしたの?」

より顔を近づけてくる部員さん⁉


俺「あ、いや、なんでもないよ。協力してくれて、ありがとね」

折角善意で協力してくれてたのに、最後に変な気分になったらダメだろ……!

一歩後ろへ下がって距離を取る


部員「どういたしまして。それはそうと……」

なぜかズイッと一歩前へ出て距離を詰めてくる⁉


部員「なんで下がるの?」

いや、ちょっと、何で近付くの⁉


俺「気を悪くしたらごめん。人にはさ、パーソナルスペースっていうのがあるんだよ。知ってる?パーソナルスペース」

説明しないとダメかな?


部員「もちろん、知ってるよ?私だって、全く知らない人にこんな近付いたりしないよ。でも、君なら」

何口走ろうとしてんのかな⁉


俺「まずは少し離れてくれるかな?あんまり近いと会話しにくいよ」

もう一歩後ろへ下がる

もう後ろは壁だ……後が無い


部員「ふ~ん。協力してあげたのに、冷たいな~」

今度は距離は詰めて来ないが、言葉に詰まる事を言ってきた⁉


俺「いや、でも……」

あんまり近付くのは良くないと思うんだけど⁉


部員「普段はあんなに可愛い子とイチャイチャしてるくせに~」

ふ、普段からイチャイチャなんてしてないよ⁉


俺「誰かと勘違いしてないかな⁉」

それは俺じゃないよ!

イチャイチャした覚えなんて無いし!!


部員「へぇ、あの程度じゃイチャイチャじゃないんだ~」

だから、何の事!?


部員「ここ、下校する生徒とか良く見えるんだよね」

そ、そうなんだ……?

話が変わった?


俺「へぇ、それは知らなかったなぁ」

ん?ってことは……

ここから見張ってれば東雲さんが帰る姿も確認できるって事か!

便利だな


部員「いつもいつも両手に華で登下校してるくせに、イチャイチャしてないって言うんだ?」

あ……そういう事ね⁉


俺「いや、ほら、あれは一緒に歩いてるだけって言うかさ」

別にイチャイチャしてたつもりは全くないんだけど……


部員「手が触れそうな距離にいるのに?さっきの私たちみたいに」

それとこれとは別だよね⁉


俺「……ここ室内だし」

この言い訳は苦しいか……


部員「へぇ~、外だったら私も近付いていいの?」

いや、それはそれで困るんだけど⁉


俺「ごめん。もう勘弁して……」

あんまりそれっぽい事言われると勘違いしちゃうから!


部員「ふふ、ごめんね。ちょっと揶揄ってみただけなの」

はぁ……そうだろうとは思ったけど、だからこそ限度があるでしょ⁉


俺「あんまり、そういう揶揄い方しない方がいいよ。冗談が通じない男に勘違いされたら大変な目に遭うよ?」

何かあってからじゃ、遅いんだから


部員「心配してくれてありがとね。でも、大丈夫……そんな事する相手なんていないから」

相手がいないって……部員さんも友達少ないんだな……


俺「そっか。なら安心だね。……さてとっ、もう鍵は開けて大丈夫かな」

閉めた鍵を開けようとするが……開かない⁉

サビが酷くて金具が回らない⁉


おいおい、嘘だろ……⁉

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