第327話 かくれんぼ
一気に2巻目を読み終えた俺は、本から顔を上げる
部員「読み終わった?」
俺「うん。やっぱ、コレ面白いよ」
部員「よかった。薦めた甲斐があったよ」
そう言って、そっと3巻目を渡してくれる
俺「ありがと」
読み終わった2巻目を返して、3巻目を受け取る
部員「読むの速いね」
そうかな?
俺「普通じゃないかな?」
特に気にしたことないけど
部員「それに、楽しそう」
え?
そんな分かりやすく態度に出てた⁉
俺「ま、まぁ、実際楽しいからね」
ちょっと恥ずかしいなぁ……
次はもっと落ち着いて読もうかな
部員「その作品気に入った?」
それはもちろん!
俺「うん。凄い楽しいよ」
さて、3巻目も読むぞー!!
ペラ
ペラペラ
ペラペラペラ
面白れぇ……
集中して読み進め、真ん中あたりまできた所で一息つく
俺「ふぅ……」
ちょっと休憩っと……
ん?
ふと視線を感じ、前を見ると……何故か視線がぶつかった?
何でコッチ見てるんだ?
俺「……何かな?」
部員「え、ううん。なんでもないよ?」
何でもないの?
俺「じゃあ何でコッチ見てたの?」
何かあるんでしょ?
部員「えっと……放課後にね。ここに私以外の人がいるって、何か新鮮な気がして」
あ~、なるほど
普段いない俺が居るせいで、読書に集中できないのか
俺「ごめん。迷惑だったか」
お互い幽霊部員だし、そこまで気が回らなかったな
部員「え⁉迷惑⁉違うよ!!そうじゃなくて……なんて言ったらいいのかな……新しく買った洋服に袖を通す時、みたいな……そんな感じ?」
よくわかんない……
俺「えっと、迷惑ではないんだよね?」
部員「もちろん!」
なら、いっか
俺「さて、一旦トイレに」
行こうと、イスから立ち上がったその時
廊下から聞き覚えのある声がする⁉
「こっちは何にもないよ⁉」
「ええ、こっちは無人よ?生徒はおろか教師すらいないわ」
「でも、行ってみたいなって!!なんか探検みたいでワクワクするの!!」
なんで⁉
南城さん、堀北さん、東雲さんがここに⁉
どうする?
このままじゃ、ドアを開けられて……
部員「どうしたの?」
俺「ここって中から鍵閉められる?」
部員「え?うん。でも」
閉められる⁉
そっとドアに近付き、備え付けの古い鍵を静かにかける
これ、倉庫とかで見たことある……
四角い穴の開いた板を通して、南京錠を輪っかの部分にかけるやつだ
でも、南京錠なんてないし……
とりあえず、このままでいいか
一応は閉まってるし……
あとは……隙間から絶対に見えないように隠れればやり過ごせるかな
俺「ちょっと協力してくれるかな?」
小声で頼むと、何かを察してコクリと頷いてくれる
ドアの隙間から見えない位置に荷物を置いて、俺達も隠れる
俺「ごめん」
部員「いいよ。君を狙ってる人?が来たんでしょ」
察しがよくて助かるな
俺「そうなんだ」
ここで見つかったら、元も子もない
部員「ふふ、かくれんぼみたいで懐かしいな」
かくれんぼか……普通はこの年になってたらやらないからな
子供っぽ過ぎる
俺「確かにね」
まぁ、俺は隠れる必要があるから割と頻繁にこんな事してるけど……
部員「しぃー……だいぶ近付いてきたよ」
ほんとだ、声だけじゃなくて足音も聞こえてきたな
息を殺して、待つ……
とうとう、ここの前まで来た……
東雲さんがドアに手をかけ、引く……しかし、鍵がストッパーの役割をしていてガコンと引っ掛かる
1センチもない隙間しか開かない
よし!
東雲「えー、ここも開かないのー⁉」
堀北「当たり前でしょ?使われてない場所は殆ど鍵が閉まってるのよ」
南城「ね?もうコッチはいいでしょ?そろそろ約束の時間だし、家庭科室行こ!」
約束の時間……家庭科室、ってことは仁科さんと何か約束してるのか
東雲「あ、ほんとだ!じゃあ今日の探検はここまでね。家庭科室行きましょ」
今日の⁉
明日もやる気なのか⁉
これは……明日もここに隠れる必要があるかもな……
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