第330話 開いて……⁉

3巻目を読み終えた時には、日は沈み暗くなっていた


さて、まったく開きそうにないなら本格的に誰かに助けを呼ぶべきだよなぁ

誰がいいかなぁ……


南城さん達は、ダメだな

家庭科部仁科さんのとこに向かったみたいだし、連絡を取れば東雲さんにもバレるリスクが高い


数少ない友人のBとDは学校にもういない可能性が高いし……

いや、Bはいるかもしれないけど絶対に東雲さんのこと追いかけてるよな

呼ぶわけにはいかないか


あとは……四季島だけか?

四季島にはちょっと頼めないか……

いつもいつも迷惑かけっぱなしだしな


さてさて、俺の交友関係には頼めそうな人はいないな!


いよいよ怒られるのも覚悟の上で、鍵のとこ壊すしかないかぁ



俺「どう?開きそう?」

開かなきゃ壊す、もうこれは決定だ

もうすぐ下校時刻だし、申請も無しに居残りしてると怒られる

どの道怒られるなら、壊してしまった問題ないだろ


部員「え?あ~……うん?」

なんだ?


俺「どうしたの?」

まさか、全然開きそうにないとか?


部員「実はね……もう開いてるんだよね」

……は?


俺「開いてるって……開きそうになったら声かけてって」

言ったよね?


部員「ここのドア、コツがいるだけで簡単に開くんだよね。だから、君が小説それに集中したあたりには開けられちゃったんだよ」

また、揶揄われたのか……


俺「何か、俺に怨みでもあるの?」

何かした?


部員「え?君を怨んだ事なんてないよ⁉私が怨んでるのは、別の人だし」

怨んでる人いるんだ……


俺「じゃあ、何でいじわるな事ばっかり……」

もしかして、元々そういう人なのか……?


部員「君のことが好きだから……かな」

もう引っ掛からないからな?


俺「そういう冗談は、俺嫌いだよ。はぁ、もう下校時刻だし帰ろうよ」

何か、もういいや……


部員「あ~……、私はまだやる事あるから先帰っていいよ!」

やることあるなら、先に言ってくれればいいのに


俺「何するの?手伝うよ」

一応、俺も部員だし


部員「え⁉いいよ!私一人でやるから!だから君は先帰って、ね?」

なんだ?

そんな遠慮しなくてもいいのに


俺「1人より2人の方が早く終わるんじゃないかな?」

早く帰らないと、マジで先生に怒られるから


部員「いいから!先帰って!私一人で大丈夫だから!」

俺の腕をグイグイとドアの方へ引っ張る

俺の方が体重も力もあるから、抵抗すれば動かせないだろうけど

無駄に抵抗する必要はないか


俺「ほんとに1人でいいの?」

部の日誌とか部室の掃除とか、そういうのでしょ?


部員「むしろ1人がいいの!だから、君はもう帰って!」

う~ん……

俺が手を出さない方がいい、のか?


俺「わかったよ……。それじゃ、また明日」

何か手伝える事があれば、明日は手伝おう


部員「え⁉明日も来てくれるの⁉」

東雲さんから隠れるのに最適な場所みたいだし、ここの事がバレなきゃ当分の間来ると思うよ


俺「迷惑じゃなきゃ、だけど」

1人でやりたい事があるなら、俺は他を探すけど


部員「迷惑なわけないよ!!待ってるね!」

待ってる、か……


俺「昼休みと放課後……頑張れば君より早く来れないかなぁ」

たまには1番乗りしてみたいな

俺が来る時は、いつも居るしなぁ


部員「それじゃ競走だね!ま、私の勝ちだけど」

お?


俺「余裕そうだね」

その余裕も、今日限りかもしれないのに……


部員「私が負ける事は、あり得ないからね。ほら、もう時間だよ。帰って……また明日ね」

絶対に勝ってみせる……!


俺「うん。それじゃ、また明日ね」


部員さんを残して、俺は1人昇降口へ向かう



誰もいない……外は真っ暗だし、当然か


俺が廊下を歩く音だけが聞こえる、不思議な静けさだ


ハハハ……

なんか、幽霊でも出そうだな


さて、もう誰も残ってないだろうし安心して帰ろう

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