第324話 おっちょこちょいな先生

警戒しつつ、何か打開策がないか考えていると


次の授業の担当の先生が教室に入ってきた

先生「席に着いてくださーい」


先生の号令で、泣いていた男子は机に突っ伏して座り

空を眺めていた男子達は一見すると普通にしてる様だが

まるでマネキンの様に固まったまま動かなくなり


頭を抱えていた女子たちは、完全に復帰したのか平常通り授業を聞く姿勢になっていた


そういえば四季島は……

あ、いた……よかった

あいつもちゃんと復帰してるな


堀北さんは心配そうにこっちを見てたけど

俺が大丈夫だよと頷くと、前を向いて授業を受ける準備をした

南城さんは、こっそりと後方のドアから教室に入って何食わぬ顔で自分の席に着いた


ほぼ全ての男子が授業を受けられる状態ではないが、先生はそんな事はお構いなしにいつも通り授業を開始した


男子にこの問題の答えは?と聞いても生気のない声で『わかりません……』しか返って来ず

最終的には男子には聞かず、女子だけに問いを出すようになる


そんな中、唯一楽しそうに授業を受けているのが東雲さんだった


やりにくそうな授業を終えて、先生は疲れた足取りで教室を出ていった


さて……この後、どうするかな

東雲さんの周りにはまた別のクラスからの生徒が集まり取り囲んでいる


逃げるなら今、だと思う


でも、闇雲に逃げても直ぐに捕捉されるだろうし

何より、教室から逃げた所で……江藤さんに捕まれば一巻の終わりだ


逃げるなら万全の体勢をとってから、江藤さんと東雲さんの目を掻い潜る必要がある


迂闊に動けないなら……とりあえず南城さんと堀北さんに相談するか


南城さんに声をかけようとした時、Bが俺の肩を掴んできた!?

生気のない奴に両手で両肩を掴まれる状況……まるでゾンビ映画だな


俺「な、なんだよ?」


B「おい……ツラ貸せや」

なんで言葉遣いが悪くなってんだ⁉


俺「どうしたんだ⁉何があったんだよ?」


B「お前のせいだ……すべてお前のせいで……」

俺が何かしたか⁉

いや、してないよな⁉


俺「俺が何したってんだよ⁉」


B「お前の、せいでぇぇ……」

え?は?

泣いてる⁉

何で⁉マジで意味分からないんだけど⁉


俺「一旦落ち着こう、な?」

このままじゃ話にならない


B「うぅぅぅぅぅ……」

唸るなよ

コイツ、いつになったら正気に戻るんだよ……⁉


そうこうしてる内に次の授業をキーンコーンカーンコーンと報せるチャイムが鳴る


チャイムの音を聞いたBは俺の両肩を離して、自分の席に着く

結局、南城さん達と相談できなかったな……


マジで、今どういう状況なんだ?


先生がやや駆け足で教室に入ってきて、プリントを先頭に配り後ろへ回す様に言う


もしかして、抜き打ちテストとかじゃないよな⁉

回ってきたプリントは、テストではなく授業に必要な資料のコピーだった

何が書いてあるか良く分からないけど、きっと今回の授業で教わる内容なんだろうな


でもこの先生、少しおっちょこちょいなトコあるから間違った内容のプリントだったりして……な~んて


先生「え~、あれ?おかしいな……これ違うな……」

な~んて……?


先生「すまない。今配ったプリントは3年の内容だった。回収は……面倒だな、各自処分してくれ。プリントを取ってくるから、私が戻るまで自習してる様に」

それだけ言って、先生はまた駆け足で教室を出て行った……


何やってんだか

まさか、本当にプリント間違えてるなんて……


ま、自習の時間ってのは好都合だな

対策を考える時間ができたって事だし


何とか放課後までに対策をしないとな……

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