第322話 部室でお昼
弁当箱を持って、旧校舎に来てみたのは初めてだったかな
3階に上がって、一番奥の部屋へ向かう
そういえば、鍵って開いてるのかな?
開いてなかったら……どうしよう……
まぁ、テキトーにこの辺で座って食べるか
開いててくれと願いながらドアノブを捻り、引っ張る
ドアは何の抵抗もなく開いた
俺「よかったぁ」
部室に入ると、そこには先客がいた……
まぁ、いなかったら開いてないか
俺「君も昼飯?」
部員「うん。もう食べ終わったから今は読書だけど」
早いな……
俺「そっか。俺もここで食べていい?」
断られたら……まぁ、廊下で食べるか
部員「いいよ」
よし、許可は得た!
イスに座って机の上に弁当を広げる
今日もいつも通り美味そうな弁当だな
パクパクと美味い弁当を食べ進め、完食する
俺「ごちそうさまでした、っと」
ふぅ、食った食った
さて、折角来たんだし何か読んでいくか
弁当を片付けて本棚の前に行く
え~っと……何がいいかなぁ
本を選んでいると、隣に部員さんがやってきた
ん?
読み終わって戻しにきたのか?
俺「邪魔かな?」
退いた方がいい?
部員「いいえ。本を探してるみたいだから、何かアドバイスでもって……余計なお世話だった?」
いや、助かるよ
俺「特に読みたい本がある訳じゃないんだけど……何かおススメは?」
あるかな?
部員「えっと、何でもいいの?」
もちろん
俺「うん。でも、あんまりにも難し過ぎる話は遠慮したいかな」
理解できないのは読めないからね
部員「う~ん……なら、この本はどうかな?ミステリーなんだけど、初めて読む人にもおススメだよ」
ほう、ミステリーか
俺「ミステリーって、シャーロックホームズとかアガサクリスティーとか?」
それはそれで読んだ事ないからいいんだけど、難しそうなイメージあるんだよなぁ
部員「違うよ。これの作者は日本人だし、舞台はとある高校。主人公も高校生だから、君でも読みやすいんじゃないかな」
そんなのもあるんだ……
俺「面白そうだね。それ読んでみるよ」
本を受け取って、席に戻る
早速最初のページを開き、読み始めた
登場人物の紹介的な事が小出しに出てくる
読み進めれば読み進めるほど、その登場人物がどんな人か分かってくる
そして、最初の事件が起きた
推理は乗り気じゃない主人公かと思ったけど、案外好きみたいだ
なるほど……面白いなぁ
そっか、それが繋がってくるのか
ページをめくる手が止まらず
気がつくと1冊読み終えてしまっていた……
俺「やべぇ……面白い……!!」
部員「ふふ、お気に召したみたいね。おススメした甲斐があったね」
うん
俺「完璧なチョイスだったよ」
これ以上ないってくらい、食後に丁度いい内容だった
食後はどうしても眠気がやってくるけど、このミステリーは
少しの眠気も許さない面白さだった
次々出てくる情報や供述、それを元に行動する主人公
一緒になって考える事もできるけど、俺なんかの予想の遥か上を行く展開
良い意味で予想を裏切ってくれる
それが不快にならなくて、楽しめる
頭を使いつつ、疲れない
こんな本があったなんてな……人生損した気分だ
キーンコーンカーンコーン
と予鈴が遠くで鳴っているのが聞こえてくる
俺「もうそんな時間か」
部員「続き、どうする?持ってく?」
う~ん……あるなら読みたい!!
俺「止めとく」
借りてったら授業中に読んじゃいそうだし
そのせいで先生に没収なんてされたら最悪だ
部員「いいの?」
よくないけど、しかたないんだ
俺「放課後、また来ていいかな?」
それなら自由に読めるし
部員「もちろん。あなただって部員なんだから自由に来ていいんだよ?」
それはそうだけど……
俺殆ど来ない幽霊部員だし
俺「うん。それじゃ、また放課後ね」
部員「うん。待ってる」
文芸部員の女子と別れて、空の弁当箱を手に教室へ急いだ
遅刻するわけにはいかないからな
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