第315話 夢への来訪者

目が覚めた……はず

でも、あんまり意識がハッキリしてないな

寝起きのせいか?


周りを見回して、場所の確認をする


ここは……文芸部の部室の前?


えっと……あれ?

なんでここに来てるんだっけ?


う~ん……

まぁ、部活しに来たって事でいいのか


えーっと、あの子は……

ドアを開けて中に入ると、そこには何度か見た部室と……なんか美少女がいた

あれ?

会ったことある気がするな……


俺「えーっと、佐々木さん?」

たしか、佐々木 乱子さんって名前だった気が……


佐々木「あ、名前覚えててくれたんだ」

ま、まぁ


俺「ここは……?」

部室だよね?


佐々木「部室に見えるけど、部室じゃないよ?ここは君の夢の中、ちょっとお邪魔させてもらってるよ~」

夢?

……夢!?


俺「え?夢なの?なんか現実みたいだけど」

すごいリアルな夢だなぁ


佐々木「あ、それは私のせいなんだよね。君の記憶だけだと色々あやふやで部屋にならないから、私の記憶で補完してこうして違和感のない部室にしたんだよ。凄いでしょ?」

凄いでしょって言われても……


俺「これって俺の夢なんだよね?」

じゃあ、なんで佐々木さんがいるの?

俺、今会うまで忘れてたんだけど……

潜在意識で会いたかったとか?


佐々木「君の夢だけど、君の意思だけじゃ起きれないからね。君が望む望まず関係なくココで私とお話するしかないんだよ」

はぁ?

え?何?俺起きれないの?

このまま死ぬの?


俺「イヤなんだけど……」

起きたい


佐々木「そんな拒絶されると、傷付くんだけど……」


俺「だって、起きれないなら死ぬじゃん」

イヤに決まってるじゃん?


佐々木「え?あ~、それは大丈夫!ちゃんと朝までには起きれるよ!ただ、今すぐ起きるのは無理って意味!」

なんだ……じゃあ、いっか


俺「どうせ夢なら、もっと明るい場所がいいんだけどな」

なんで薄暗い部室なんか選んだんだろうな


佐々木「ごめん。それも私のせい……ほら私、部室ここにしか居ないから」

まぁ、しょうがないか


俺「それで、何か話があって来たんでしょ?」

サクッと話をして、普通の夢に戻してもらわないと


佐々木「え?えっと……元気してるかなぁ~って」

…………もしかして


俺「元気してるよ。話はそれだけ?それなら俺寝るから」

夢の中でも寝れるなら、もう面倒だからこのまま此処で寝るのがいいだろ


佐々木「待って!ねぇ、寝ないで!お話しようよ!」

煩いなぁ……


俺「なんで?」


佐々木「なんでって……だって、寂しかったんだよ!?君ってば、全然部室に来ないし!いいじゃん!!ちょっとくらいお話してくれても!!」

逆ギレ!?


俺「いや、だって部室に来ないって言っても佐々木さん居ないじゃん……」

いるのは名前無しの幽霊部員だけだし


佐々木「いるのー!いつもいつも君をずーっとずーっと待ってたの!!君が来てくれたら、それで満足なのに……なんで来てくれないの!?」


俺「俺だって忙しかったんだよ……色々あって、それはもう死ぬほど忙しかったんだ」


佐々木「ちょっと顔出すくらいは出来たでしょ⁉」


俺「……ぶっちゃけて言うと、文芸部の事忘れてたんだ」

それほど忙しかったんだよ


佐々木「忘れ……はぁ!?それはあんまりだよ!!酷過ぎるよ!!私なんてどうでもいいって言うの!?」


俺「いや、そういう意味じゃなくて」


佐々木「じゃあ、どういう意味⁉事と次第によっては君の事呪うからね⁉」

こっわ……

そしてめんどくせー


俺「色々あったって言っただろ」

一言では言えないくらい、色々あったんだよ


佐々木「じゃあ説明して!今すぐ!じゃないと朝までこのまま騒いで君を疲れさせるからね⁉」

最悪じゃねーか


俺「わかったよ……」





眠気を堪えて、Dさんに告白された事と体育祭の後屋上で殺されそうになった事なんかを話した


佐々木「そっか……大変だったんだね」

やっと分かってくれたか


俺「そう、大変だったんだよ」

だから、早く寝かせてくれ……

このままじゃ起きた時、疲労感半端ないだろうし


佐々木「それはそうと、君ってはホントーにモテるね。羨ましいなぁ」

俺だって、モテるやつは羨ましかったよ

実際に複数の人から好意を向けられるまでは……


俺「そんな良いモンじゃないから……。さて、それじゃそろそろ」

もういいだろ?


佐々木「あ、うん!バイバイ!たまには部室に来てよ?」

他にも何か話せって言わないんだな……


俺「もういいんだな?」


佐々木「いいも何も、もうすぐ朝だからね!いっぱい話してくれてありがとね!!」

はぁ!?

えっ、ちょっ、マジかよ!?


ちょ、俺全然寝れてないんだけど⁉

文句を言う間もなく視界がどんどんぼやけていき、真っ暗に染まる


ピピピピッ…ピピピピッ…!

アラームの音が聞こえ始めて、次第に大きくハッキリと聞こえるようになる


俺「はっ……!?」

目が覚めて、一番最初に感じたのは


意味の分からない疲労感だった……

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