第308話 練習だから

妹と堀北さんの会話がやっと一息ついた時


南城「ねぇねぇ、春香~」

とうとう痺れを切らして南城さんが堀北さんに声をかけた


堀北「千秋?どうしたの?」

どうしたのって……

話し込んでて本題を忘れてない?


南城「お化粧、練習しないでいいの?」


堀北「あ!そうだったわね……!もちろんやるわよ」

やらないでいいなら、やりたくないんだけど……


俺「うん」

お手柔らかにお願いします……


堀北「えっと、まずはベースからね……」

ベースってことは、土台か?



土台に取り掛かって、5分程して



堀北「次は……コレとコレかな」

土台を塗ったあと、更に何かを塗るみたいだ



2重3重に塗り重ねて、やっと終わったかと思ったら


堀北「あとは……チークとアイラインとアイブロウと、リップかな」

真剣な表情で、俺に化粧を施す堀北さんを妹が観察する

それを観察する南城さん


俺はされるがままにじーっとしている


時計を見ると、化粧を始めてから15分から20分くらい経ったな……

随分と時間がかかるなぁ


今、俺の顔どうなってるんだろうな……

鏡がないから、まったく分からないんだよなぁ


堀北「よし、できた。けど……なんでこうなっちゃったのかしら……?」

それって……


南城「なんか、う~ん……」


妹「変な感じがする?」


えっと、どうしてそうなったの?


堀北「おかしいわね……いつも通りやったのだけど……」

やっぱりおかしいのか……


俺「とりあえず、やり直す?」

顔洗ってくるか……


堀北「ごめんなさい」


俺「まぁ、練習だしね。しょうがないよ」


南城「そーだね。練習だもんね!」

妹「私自身はあんまり使わないから、好きに使っちゃってください!」


堀北「ありがとう」


俺「それじゃ、ちょっと顔洗ってくるよ」

お湯で洗う為に1階の洗面所へ向かう

どうなってるのか、鏡で一度見てみるか


そして階段を下り、1階に着いた時

玄関の扉がガチャリと開く音がする

え?と振り返ると


母「ただいま~」

マジかよ!?

なんて酷いタイミングなんだよ……!


慌てて母さんに背中を向ける

俺「おかえり~」


背中越しにそう言うと

母「どうしたの?」


俺「いや、なんでもないよ?」

振り返らずに話すと、さすがに怪しまれたか?


母「そう?」

頼むから、これ以上話しかけないでくれ!


俺「そうそう。なんでもないよ。俺に何か用事でもある?」

無いなら顔を洗いに行かせてくれ!!


母「千秋ちゃんと春香ちゃん来てるのよね?」

南城さんたち?


俺「うん。俺の部屋にいるよ」

それがどうしたんだ?


母「部屋戻ったら夕飯どうするか聞いて来てね」

夕飯か


俺「了解。それじゃ聞いたら言いに下りてくるから、くれぐれも上がってこないでね」

よし、話しは終わったな

早歩きで洗面所へ飛び込む


ドアを閉めて鍵をちゃんとかけて、やっと一息つく


俺「危なかったぁ……」


母さんに見られたら、何言われるか分からないからな……


さて、化粧はどんな感じになったんだ……?





これが俺か……

うん、色んな意味で違和感だらけだな

確かにこれは失敗だな


しげしげと鏡に映った自分を見てしまう

何か、変だな……





さて、あんまり待たせても悪いしちゃっちゃと顔洗って戻ろうっと

お湯を出して、洗顔石鹼で顔をゴシゴシ洗い


ちゃんと落ちたのを確認して部屋に戻れたのは

顔を洗い始めてから10分ほど経過してからだった


なかなか落ちず、苦労した……

化粧って、洗い落とすのも大変なんだな……

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