第296話 学校へ戻る/ヤマト視点

南城「大丈夫だった?」

カウンセリング受けてきた人に聞くことじゃないよ、それ


俺「大丈夫だよ。もう帰っていいってさ」


南城「そっか!あ、それじゃ一旦学校行かないと」


俺「えっと……そうだね」

健太郎さんが車を手配してくれたみたいだし

診察券とか何も出してないし、とりあえず学校に戻って四季島に聞いてみるか

診察料と手当のお金は、いくらなのか

保険証も持っていかないとなぁ




病院から出ると、黒い車が1台来ていた


運転手さんが俺達を見てお辞儀をしてくれる


もしかして、四季島の専属運転手さん?


運転手「お久しぶりでございます」

あ、やっぱり!


俺「お久しぶりです」

南城「こんにちわ」


運転手「どうぞ、お乗りください」

開けてもらったドアから車に乗り込む


後部座席に並んで座ると運転手さんがゆっくりと車を発進させる


病院を出て少し走ったところで

運転手「ご自宅までで宜しいでしょうか?」


南城「いえ、学校までお願いします」


運転手「お二人ともでしょうか?」


俺「はい。お願いします」


運転手「畏まりました」


車線を変更し、向かう先を学校へ変えてもらい

俺と南城さんは学校へ戻った





_____________________________________

一方、Aが診察を受けていた頃学校では……


教員達から事情聴取を散々受けて、やや疲れ気味のお二人

堀北「はぁ……多分、嫌われちゃったわね」

溜息を吐き、悲しそうな表情をする堀北春香さん

同じ事を何度も聞かれて、大変でしたね……


四季島「何故だ?」

嫌われたと、そう思う理由が分からない太一様

さすが皆に好かれる主役級の名前持ちでございます


ヤマト「あの場面では致し方ないと、きっと彼だって理解してくれますよ」

名前無しの彼にとって、あの言葉は重かったでしょうけど

嫌うほどじゃないと、私も思います


四季島「ヤマトさん?」

太一様には、嫌われた可能性がある事自体が理解できないのでしょうね


ヤマト「名前無しmobの気持ちが、まだ理解し足りないようですね」

まだまだ、これから知っていけばよいんですけどね


四季島「そう、なのか……すまない」

素直に謝る姿勢は、立派でございます


ヤマト「なぜ、彼が堀北さん彼女を嫌う可能性があるのか……何か想像できますか?」

ヒントも無しで答えに辿り着くことは果たしてできるでしょうか?


四季島「そうだな。まず……今回の件だと、堀北さんは加害者である彼女達に危害を加えてはいない。そして、アイツの頼みである抹消も回避できた。一見して万事解決した様に思う」

まずは持論を整理するところから始めるんですね


ヤマト「確かに、そう見ることもできますね」


四季島「しかし、堀北さんはアイツに嫌われたんじゃないかと心配している」


ヤマト「はい」


四季島「う~ん……があったとするなら、最後まで抵抗していた彼女の心を折った時だろうか」

そうでございます


四季島「あの時、堀北さんの言葉で可能性があるものと言えば……“関係者すべてを抹消する”って言ったことだろうか」

そうです


ヤマト「ほぼ正解でございます」


四季島「ほぼ、か……やはりまだまだ理解が足りないようだ」

落ち込まないでください

たった少し想像しただけで

そこまで理解できれば、今は充分でございますよ


堀北「四季島君……彼はね、最初私達名前持ちネームドを恐怖してたのよ」

私なりの解説をしようと思っていたら、どうやらご本人から説明してくれるようです


四季島「恐怖?」

ピンと来てませんね


堀北「そうよ。名前持ちという存在が、とても怖い存在だと思っていたの」

今は、そうは見えませんが……過去に何かあったのでしょうね


四季島「もしかして、俺のせいか!?」


堀北「違うわ。彼が小学生の頃、名前持ち関連でちょっとトラウマになるような事があったの」

トラウマ、ですか……


四季島「まさか小学生の頃から巻き込まれ体質だったのか……」

太一様、問題はそこではございませんよ


堀北「その時以来、極力名前持ちと接しないように過ごしていたそうよ」

ふむ……そこまでの恐怖が、彼の中にあったとは


四季島「そうだったのか……」


堀北「そんな彼に、千秋と私が近付いちゃったの。きっと怖かったでしょうね……名前持ちが2人も関わってきて」


四季島「それで、アイツは堀北さん達の好意を断っていたのか」

恐怖の対象からの好意……なんとも難しいものです


堀北「そう。それからがあって、その後も遊園地でも色々あったわね」

4月の『不良に殺されそうになった』件ですね

さらに『遊園地』の件も、関係していたんですね


堀北「それで彼と色々話して……やっと知れたの。何で彼が私達を選んでくれないのか」

コミュニケーションは大切ですね


堀北「話し合いをして、私達は約束したの……今後は名前無しを抹消しないって」


四季島「ちょっと待ってくれ。それじゃあ堀北さん達は、どうやって自分の身を守るんだ?」

色々と狙われる事の多い名前持ち

護身の為に相手が名前無しだった場合、抹消する事で助かる事もありますからね


堀北「本当に命の危機になれば、抹消するわ……でも、そうでないなら他の解決策を考えるわ」


四季島「そんな事してたら、手遅れになるかもしれないのにか!?」

名前持ちだって、死ぬときは死ぬ

それを太一様も知っているからこそ、何でそんな危険な約束をしたのか理解できないんでしょうね


堀北「大丈夫よ。もし私に何かあっても、千秋だけは助かる様にするから……千秋なら、彼を愛しながら守る事もできるはずよ」

なるほど

どちらか一方が助かればいいと、そういう事ですか


四季島「それは、ダメだ。堀北さん……その選択は絶対にしちゃいけない!」

太一様……?


堀北「彼を守る為よ……」

愛する人を守る為に、自分を犠牲にできる……なんて高潔なんでしょう


四季島「そんな事をしても、アイツは守れない!!」

そんな高潔さを、真っ向から否定するなんて

変わられましたね


堀北「守れるわ。命に代えても守ってみせるのよ」


四季島「俺は、まだアイツの事を深く理解できていない……そんな俺でも分かる!アイツが堀北さんの犠牲の上で生き延びても、幸せにはなれない!」

太一様……


堀北「私はもう嫌われちゃったのよ……なら、これからは陰から彼と千秋の幸せを見守るわ。それが私の役割よ」


四季島「だから、アイツが堀北さんを嫌うわけないじゃないか!」


堀北「彼から見たら、私は『恐怖の存在』そのものよ。名前無しを抹消する、殺人犯なのよ!?」


四季島「アイツがそう言ったのか?言ってないだろ!?なら、勝手に決め付けちゃダメだ。アイツの本心を知る前に、諦めちゃダメだ。堀北さんの気持ちは、そんな簡単に諦められるものじゃないはずだろ!?」


堀北「……っ」

太一様の言葉、しかと録音させていただきました

後で社長に提出させていただきます!

ボーナス獲得のチャンスです


四季島「アイツと、しっかりと話し合うべきだ。諦めるのは、その後でも遅くはないはずだ……と俺は思う」

そこは、最後断言して欲しかったですね


堀北「……ふふ。まさか、四季島君に励まされるなんてね。そうね。もう一度、彼と向き合ってみるわ。もし嫌われてないなら……もう少しだけ頑張ってみてもいいかもしれないわね」


四季島「そうだよ。まぁ、もし万が一嫌われたなら……俺の彼女になるって手もある」

おお、さりげなく彼女になれよアピールを入れましたね!?


堀北「ふふ、面白い冗談ね」

しかし、残念ながら脈は無さそうでしたが……


四季島「……あ、ああ。俺も冗談のセンスが上がってきたみたいだ!」

動揺しすぎですよ、太一様


ヤマト「おや、アレは……ウチの車ですね」

屋上から見えたのは黒い車が校門の前に止まった所でした


四季島「ん?俺の迎えに来たのか……?今日は頼んでないはずだが」

止まった車から、2人の学生が下りてきました

あれは……A君と、南城千秋さんですね


ヤマト「どうやら、話し合いはすぐに出来そうですね。さぁ、迎えに行きましょう」



お二人と一緒に、昇降口へ向かうとしましょう

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