第295話 カウンセリング?

健太郎「それじゃ、まずは今回の件について簡単に説明できるかな?」

簡単に、か


俺「あの、これって誰にも話さないですよね?」


健太郎「当たり前だろう。例え太一から頼まれたって口外する事はないから、安心していいよ」

そっか……それなら、大丈夫かな


俺「えっと、まずは……事の発端は、4月にあった出来事なんです」


健太郎「4月……それは今年の4月かい?」


俺「そうです」


健太郎「何があったんだい?」


俺「俺が南城さん達に告白されて……それを面白く思わなかったのか、不良グループに狙われまして」


健太郎「ふむ、4月に不良に狙われたと」

メモも取るんだ……


俺「はい。それで偽の手紙で屋上に呼び出されて、屋上に行ったら4人くらいの不良に襲われて」


健太郎「ほう……また凝った手を使ったね」


俺「俺ってケンカとかメチャクチャ弱いんで、簡単にやられちゃいまして……あと1歩で命に関わるぐらいまでボコボコにされてたみたいです」


健太郎「みたい……というと?」


俺「俺自身は覚えてないんです。南城さんと堀北さんがそう言ってました」


健太郎「彼女達が?」


俺「はい。俺の危機に駆けつけてくれて、不良達を撃退してくれたんです」


健太郎「そんな事があったんだね」


俺「はい。その不良達は……その……南城さん達が」


健太郎「抹消してしまった。という事かな」


俺「はい……」


健太郎「それで、その不良達はもういないんだろう?」

解決した過去の出来事と、今回の事の接点

それは……


俺「今回俺を襲ってきたのは、その不良達を大切に想っていた女子だったんです」


健太郎「……復讐、かな」


俺「そう言ってました。南城さん達にも大切なヒトを失う悲しみをって」


健太郎「そうか。それで君が狙われたのか」


俺「はい」


健太郎「う~ん……君を襲撃するには、彼女達を遠ざける必要があるよね?」

やっぱり、そう思うんだな


俺「俺と一緒に運び込まれた名前無しの女子が、計画を立てたそうです」


健太郎「ん?あの子が?仲間割れでもしたのかな?」


俺「えっと……俺を南城さん達から引き離したのも、屋上に呼び出したのもあの子……Dさんなんです」


健太郎「まるで主犯のような感じがするね」

まるでも何も、主犯……だったはずなんだけど


俺「でも、Dさんは俺を庇って刺されて」


健太郎「うん」


俺「俺を恨んでるはずなのに……」

どうして、あんな事したんだよ


健太郎「Dさんとは、どこで知り合ったんだい?」


俺「えっと、今月の始めに……ラブレターをくれて」

あれも、罠……だったのかよ


健太郎「それを千秋ちゃん達は知らなかったのかな?」


俺「いえ、それが……南城さん達に正面切って宣戦布告して、1ヶ月って期間を区切って俺を恋人にしてみせるって」


健太郎「なるほど……それなら千秋ちゃん達が手を出さないのも、説明がつくね。よく考えられた作戦だ」

そうか……?


俺「まんまと作戦に引っかかって、俺と南城さん達は引き離されました。それから今日まで、Dさんと一緒にいる時間ができました」

でも、それも2週間程度だ


健太郎「そうか……どうしてDさんが君を庇ったのか、少しだけ分かったよ」


俺「え?」


健太郎「Dさんは、きっと君の事を知り過ぎたんだね。君が善良な人物だって、知ってしまった。そして、これは推測でしかないけど……君の事を好きになってしまった」

俺が善良……?

俺は普通の名前無しmob、のつもりだ

特別善人として振る舞った覚えはない


それに、Dさんが俺を好きに?

それこそあり得ないだろ……


俺「復讐する相手を、好きになるわけないじゃないですか」


健太郎「そうかな?」

そうだろ……


話しの区切りがちょうど付いた時、奥から看護師の人が健太郎さんを呼びに来た


健太郎「ちょっと席を外すよ」

そう言って、奥の方へ行ってしまう


残された俺は、健太郎さんの言った事を考えてみた


Dさんが、俺を本当に好きになっていた……か

罠に嵌めて、俺を殺す計画を立てたのに……?

いざ殺すとなったら、自分を犠牲にして俺を助けた……?

ほんと、何がしたかったんだよ……

俺を好きになったから?

好きになったから、復讐を止めて助ける?

どんな恋愛脳だよ……


健太郎「ごめんね。お待たせ」


俺「あ、いえ」

戻ってきた健太郎さんの表情が少し暗くなってる気がした


健太郎「今日はもう疲れただろう?細かい事は、また次の機会にしよう。何かあればいつでも来ていいからね」

少し早口だし、何かあったのかな……?


俺「あ、はい。ありがとうございました」

まぁ、俺には関係ないか


健太郎「それじゃ、車を用意するから千秋ちゃんと一緒に帰っていいよ」


俺「はい。あ、あの……」


健太郎「何だい?」


俺「Dさんは?」


健太郎「まだ施術中だよ、状態があまり良くなくてね。お見舞いは当面出来ないだろうから、そのつもりでね。それじゃ」




診察室から出ると、南城さんがそわそわして待っていた

なんか、散歩をしたい犬みたいで可愛いな……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る