第294話 またまた病院へ

ヘリで四季島の病院の屋上ヘリポートに着くと、Dさんは大急ぎで中に運び込まれて行った



俺は腕を庇いながら、ヘリから自力で降りる


付き添いで来た南城さんと一緒に中に向かうと、屋上の出入り口に四季島のお父さんが立っていた


健太郎「やぁ、久しぶりだね。私のこと覚えてるかな?」


俺「えっと……」

名前、なんだったっけ?


南城「健太郎さん。お久しぶりです」

あ、そうだ!

四季島 健太郎さんだ!


健太郎「ああ、また災難な事に巻き込まれたみたいだね。どれ、怪我の具合を診せてみなさい」

腕の傷を診てもらうと


健太郎「うん、傷は浅いみたいだ。これなら痕は目立たないよ」

そっか

大した事なくてよかった……

半袖着れなくなったらどうしようかって少し心配だったんだよね


南城「良かったぁ……」


健太郎「すぐに手当をするから、付いて来なさい」


白衣を翻して屋上の階段を下りて行く健太郎さんを追いかける

1階下りて、その後はエレベーターで2階まで下りる


そして、近くの診察室へ入る


健太郎「準備をするから、イスに座って待ってなさい」

丸い座面の回転するイスに座り、南城さんは俺の後ろに立つ


俺「南城さん、ありがとうね」


南城「え?ううん、付いて来たのは私が心配だったからだし」


俺「それもだけど……先生呼んで来てくれたし助けに来てくれたから、ありがと」


南城「……うん。屋上で、何があったのかずっと気になってたんだけど……、教えてくれる?」

それは、どうしようかなぁ

もし、ありのまま話せば……きっと南城さんは


俺「えっと……何をどう話そうかな……」

できるだけ、南城さんが責任を感じないようにしたい

あの時も、今回も……南城さんと堀北さんは悪くなかったんだ

俺の、命の恩人なんだから


南城「それじゃ、私から質問していい?」

言い淀む俺を気遣って、南城さんが提案してくれる


俺「あ、うん」

上手い事誤魔化せれば、何とかできるかな


南城「Yさんは……君にとってどんな子になった?」

俺にとって、どんな子……か


俺「命の恩人、かな」

身を挺して俺を助けてくれたからなぁ


南城「ふ~ん、そっか。命の恩人って事は、って事かな」

一般的には、感謝するべき人だよね


俺「でも、友達にはなれないかな」

罪悪感で、対等な関係には絶対になれないと思うし


南城「え?なんで?」


俺「えっと…こんな事があったから、顔合わせ辛いし。きっとYさんも、俺と関わるのは止めたいんじゃないかな」

きっと、抹消された想い人を思い出しちゃうし……俺と一緒にいて、次第に大切なヒトが記憶から薄れて行く感覚は辛いだろうし


南城「そっか」


俺「他に何かある?」


南城「えっと、Yさんあの子と付き合ったりは」

付き合う!?

今の話聞いてた?


俺「ないよ。絶対にね」


南城「それじゃ、明日からは」

一緒に居られる?


俺「うん。また、よろしくね」


南城「うん!」


健太郎「何の話しをしてるのかな?」

奥から薬やら包帯やらを持ってきた健太郎さんが、ニヤケ顔で聞いてくる


俺「あ、いえ、大した事じゃないです」

南城「えへへ……」


健太郎「そうかい。それじゃ手当するよ」

まずは、血で汚れた腕をキレイにする

そして、消毒液をつけ……る!!


いぃ~~~~~てぇーーーーーーーー!!!!


俺「し、滲みる……!痛い!痛いです!」


健太郎「そりゃ、怪我したんだから痛いに決まってるだろう?」

痛みに悶える俺に一切の容赦なく、傷口を消毒する


健太郎「あとは、この薬を塗って……ガーゼで押さえて包帯で巻けばいいだろう。次はソッチを手当するからね」

うっ……


俺「は、はい……」



そして、腕と同じ様な痛みにうめき声を漏らしつつなんとか手当を乗り越えた



健太郎「それじゃ、後は問診だな」

え?今更?

もう手当は終わったのに?


俺「問診?」


健太郎「そうだよ。目に見える傷はすぐに見つけられるし、手当もできる。でも心にできたキズは、目に見えないし物理的な手当もできない。だから、問診をするんだよ。言いたくない事は言わなくていい、でも嘘は吐かないでね」

それって……


南城「カウンセリング?」


健太郎「そうとも言うね」

いや、そうとしか言わないんじゃない!?


健太郎「という訳だから、南城千秋さん」


南城「はい!」


健太郎「外で待っててね。こういう事は基本的に1対1でするから」


南城「え……う~ん……わかりました」

俺の傍を離れるのがイヤなのか、悩んで

しかし、言われた通りに診察室から退室した


南城さんが退室したのを確認し、健太郎さんのカウンセリングが始まった

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