第292話 堀北さんの怒り

堀北「だ、大丈夫!?」


俺「あ、うん……安心したら力抜けちゃってさ。それにしても、ヤマトさん何処から現れたんですか?」

姿どころか、気配すら分からなかったんだけど……

ヤマトさんって暗殺者か何か?


ヤマト「企業秘密です。常に太一様を陰ながら守れる様に身に着けた私の特技の一つですので。本日は社長から『太一様の活躍をビデオに収めよ』と命を受けてこちらにお邪魔しておりましたが、まさか、この様なことになろうとは……思いもしませんでした」


俺「ご迷惑をお掛けしました……」


ヤマト「いえ、太一様のサポートをするのも私の業務ですので。問題ございません」

なんか、すげーな……


四季島「……さて、人質も解放された事だし後は君だけだね」


女子1「くっ……まだよ……まだぁっ!!」

落ちていたカッターナイフを拾い上げて、こっちに向かって構える


ヤマト「無力化します」

戦闘態勢をとるヤマトさん


四季島「待ってくれ……少し話しがしたい」

しかし、四季島はそんなヤマトさんを制止する


四季島「なぁ、君はどうしてこんな事をしようと思ったんだ?」

優しく語りかける四季島


女子1「四季島君には関係ない!悪いのは全部南城と堀北よ!」


四季島「何があったか、ちゃんと話してくれないか?君の事をもっと知りたいんだ」

こんな事言われたのが四季島の取り巻きだったら、失神しそうだな


女子1「……4月に私の幼馴染が急に退学したのよ。そして、もうこの世にいないの……抹消されたのよ!」

堀北さんは、表情を変えず黙って聞いている


四季島「そうだったのか。なら、君が本来復讐するべきは……だ」


女子1「な、何で……何で堀北ソイツを庇うの!?」


四季島「庇った訳じゃないよ。あの件は、俺が悪かったんだ……君の幼馴染が抹消されたのは、俺のせいなんだよ」


女子1「どういう、こと?」


四季島「君の幼馴染を、Aにけしかけたのは俺なんだ」


女子1「え……?」


四季島「学校から消えても大丈夫そうな生徒……不良グループに依頼したんだよ。Aをボコボコにしろって」


女子1「じゃ、じゃあ……」


四季島「ああ、事の発端は俺なんだ。俺が依頼したせいで、君の幼馴染が消える事になったんだ」


女子1「う、嘘よ!四季島君が、そんな事するわけない!」


四季島「嘘じゃない……これが真実なんだ。すまない」

頭を下げて謝る四季島に、動揺を隠せない女子1


女子1「そんな訳ない……だって、悪いのは全部あいつ等で……私は」


堀北「はぁ……復讐、するんじゃなかったのかしら?」


女子1「煩い!全部アンタが、アンタ達が!!」


堀北「そうよ。私が、貴方の幼馴染を消したのは事実よ!」


女子1「だから!」


堀北「でもね、あの時はそうするしかなかったのよ!!私は私にとって大切な存在を守っただけよ!あの時、貴方の幼馴染たちに彼は痛めつけられて……瀕死だったのよ!助けるために手段なんて選んでいられなかったのよ!!大好きな人が目の前で殺されそうになって、許せる訳ないじゃない!!」

普段は物静かな堀北さんの激昂


女子1「そんなの」


堀北「理由にならない?ふざけないで!!アナタ達名前無しmobにとって、私達ってなんなの!?何でもできる万能の天才?まるで神のような存在?違う!全然違うわよ!!私たちだって人間よ!!悲しみも憎しみもある、人間なのよ!!」


女子1「……っ」


堀北「いい?私達は……特別な喜びを得られる、可能性があるだけなのよ。それと同じくらい、特別な悲しみを背負う可能性もあるの!自分より大切な存在が、ことだってゼロじゃないの!!アナタにそれが分かる?大切だと思えば思うほど……世界が、運命が、大切な人に牙を剥くのよ!」

涙を流し、訴える姿は……

いつも優雅にしてる堀北さんとは思えないくらい必死だった

胸に秘めた思いを吐き出す……苦しみに満ちた表情だった


四季島「堀北さん……」


堀北「はぁはぁ……。貴方は、その幼馴染を大切に想ってた。でもね、それ以上に私は彼を想ってるの!!もしこれ以上、彼に危害を加えるって言うなら……。貴方を……抹消すわ」

!?


四季島「堀北さん、それはっ」

流石に言い過ぎだと諫めようとするも……


堀北「四季島くん。黙ってて」

たった一言で、四季島を黙らせてしまった


四季島「……っ」


あの四季島が、気圧された!?


堀北「どうなの?私達名前持ちネームドに復讐するってことは、その覚悟があるの?もし、そんな覚悟もないなら……復讐なんて止めなさい。その程度の気持ちじゃ、一生掛かっても届かないわよ」


女子1「そんな……そんなの……ズルいわよ!」


堀北「ズルくて結構よ。分かったらもう諦めなさい」


女子1「……うあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ」

その場に蹲り、泣き叫ぶ



女子1の心は、完全に折れた


もう、俺に何かしてくる事はないだろうな





そして、堀北さんの手は小さく震えていた……

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