第288話 怨みの真相とは

俺が、Yさんの想い人を殺した……?


一体、この人は何を言ってるんだ?


俺がいつ、誰を殺したっていうんだ?


Y「……違うの……君が殺したんじゃないの」

どっちなの!?

いや、殺してないから合ってるんだけど!!

言い分として、どっちなの!?


女子1「はぁ?コイツのせいで死んだだから、コイツが殺したのと一緒でしょ!?」

女子2「元々、アンタが言い出した事でしょ?」

女子3「今更、何良い子ぶってんの?」

え……?

Yさんが、言い出した?


女子1「復讐する為にわざわざまでして来たアンタが、今更怖気づいたとか言わないわよね?」

転…校?


Y「だから、それは間違いだったの!彼は…A君はそんな事する人じゃない!!」

もちろんしないよ!


女子2「だ~か~ら~、もうそんな事どうでもいいのよ」

ん?


Y「え……?」


女子3「コイツのせいじゃないってのは、私ら最初から知ってたし」

おい!どういう事だよ!?


Y「どういう、こと?アナタ達だってA君がヤッたって」


女子1「それはアンタが勝手に思い込んでただけ。私らとしては……ソイツが一人になるチャンスを待ってただけだし」

俺を一人に?

何でだ?


女子2「いっつもいっつも、あの目障りなのが傍にいちゃ殺せないからね」

女子3「は、よくやってくれたよね。あの忌々しい名前持ちを排除してくれたんだもん」

いつも傍にいる目障りな存在?

忌々しい名前持ちを排除した?


もしかして

俺「南城さん達か……?」

 

女子1「大正解だいせ~かい!あの名前持ちがいたら、アンタに近付くことなんて出来はしないからね~。私達って警戒されちゃってるからさー」

女子2「そうそう。邪魔者がいないと、こんなに簡単なんだもん」

女子3「ほんとサマサマだよね~」

南城さん達が警戒してる相手……!?


Y「私、そんなつもりじゃ……」


女子1「もう遅いわよ。手遅れなの」

女子2「ほら、ヤる気無いなら邪魔だからどっか行ってくれるかな?」

女子3「それとも、ソイツと心中でもしちゃう?」


まるで躊躇いのない、心を傷付ける言葉がYさんを襲う

そんな状況で、俺は未だに理解が追い付いていなかった


なんでYさんが俺の命を狙っていたのか……

結果的にこの3人に利用されてたにしても、最初に話しを持ちかけたのはYさんだと云う事実……


Yさんの本当の想い人とは、誰なのか……


色々分からない事ばっかだけど……確実に分かるのは、この3人は俺に敵意を持ってるって事

そして、Yさんは俺を守ろうとしてくれてるって事!!


俺「とりあえず、何があったか聞かせてくれないか?理由わけも分からず殺されるのなんて、ゴメンだよ」

Yさんを押しのけて横に並ぶ


俺「それに、本当に俺のせいだって言うなら……その罪は償うしかないだろ」

誰かが俺のせいで死んだ……本当なら、確かに恨まれるのに十分な理由だ


女子1「本当に身に覚えがないって言うの?」

苛立ちに満ちた言葉に怯みそうになる


俺「ない!」


女子1「そう……なら、死ぬ前に覚えておきなさい。私達の大切だった人達の事を……アンタのせいで存在を消された男子の事を!」

存在を、消された……!?

最近はそんな事無かった……と思うけど


どういう事だ?


女子1「4月よ……事件があったのは」

4月……?

俺が南城さん達に告白された直後……?

そんな時にあった、事件?

心当たりは……一つだけある

でも、は……俺が被害者だぞ?


女子2「あの日、いつも通り一緒に授業を受けて一緒に帰るはずだったのに」

女子3「先輩から頼まれごとをしたからって、先に帰ってくれって言って」

本当にあの不良達の事だとしたら、逆恨みだろ!?


女子1「二度と会う事はなかったわ……あの名前持ちが抹消したって、そう知ったのはそこの裏切者が転校してきてからだったわ」


存在の抹消……関係ない人は1週間もすれば忘れてしまう

関係してた人だって、常に思い出そうとしなければ1年以内に自然と忘れていく

こうして、覚えてくれてる人がいたって……もう本人は5月には消えていただろうな

持っても6月には、完全に消滅してしまう


きっと、Yさんが転校してきたのは4月……そこから独自に調査して

事の真相を知って、話しを持ちかけた時には……不良達は全員消えていた


もし、もしも

この仮定が正しかったなら……この3人もYさんも被害者だ……

例え自業自得だとしても、消されていい存在なんていないから


俺「あの不良達か……」


女子1「やっと思い出してくれたのね……そうよ!屋上で喧嘩と言う名の蹂躙にあった男子よ!」

蹂躙って……

俺は一方的にボコボコにされてただけなんだけど!?


俺「それは、不幸……いや、不運だったな」

名前持ちと喧嘩するなんて、走ってくるトラックを体当たりで止めるようなもんだ

俺たち名前無しmobには絶対に不可能だ

事故に遭うのと、そう違いはない


女子1「不運?いいえ、コレは運なんて関係ないわ。故意に存在を消した、殺人よ!」

そうか……そう、だよな

そう思うのも、理解できないわけじゃない

俺だって、きっと同じ立場だったらって思う


俺「話しは理解したよ……Yさんも同じ気持ち、なのかな?」

大切なヒトを殺された怨みは、もちろんあるよね


Y「そう……でも、この怨みは……あの名前持ちにぶつけるつもりだったの」

南城さん達に?

なんて無謀なことしようとしてるんだよ……


俺「ぶつける前で良かった……」

間に合って何よりだ


Y「え?」


俺「もしその思いをぶつけたら、Yさんはもっと傷付いちゃうから」

あの二人に、そんな逆恨みをぶつけたって

正論で返されて、相手にすらされなくて

怒って喧嘩になったら……手遅れになるかもしれない


名前持ちを守る、世界の摂理ルールによって抹消される可能性があったから


俺「なぁ、一つ言わせてもらっていいか?」


女子1「何?命乞いなら無駄よ?」

無駄って、そりゃ殺意高すぎないかな?


俺「命乞いじゃないよ。ただ、一つ忠告しておこうと思ってさ」

忠告は聞いておいた方がいいよ


女子2「アンタ、何様のつもりよ?」

何様って、俺様だよ


俺「この場で俺を殺したら、すぐに逃げた方がいいよ。絶対に誰にも見つからない場所にね。そうしないと、君たち全員抹消されちゃうから」

南城さんも堀北さんも……もしかしたら四季島も

本気でキレるだろうからさ


女子3「ご忠告どうも。でも、良いのよ……消されたって」

消されても、良い!?


女子2「アンタさえ殺せれば、もう未練なんてないわ」

潔すぎだろ!?

もっとやるべき事とかあるだろ!!


女子1「そういうわけだから、そろそろ死んでちょうだい」

3人がそれぞれカッターや小刀、ペティナイフ小さな包丁を手に俺ににじり寄る


Y「待って!止めて!」

俺を庇おうと前に出てくるYさん


女子1「邪魔よ!そこを退きなさい!さもないとホントにアンタも」

Y「彼は殺させない!」

俺に抱き着いて守ってくれるYさん


女子2「なら、死にな!!」

振り下ろされた小刀がYさんの背中に刺さる!


Y「あぐっ……!!」

ほ、ほんとにやりやがった!?


俺「Yさん!?」


女子2「アンタが退かないからいけないのよ!」

みるみるうちに体操着に広がる血

そして、Yさんは立っていられなくなり倒れる


倒れる間際も俺を見て、手を伸ばしていた

ドサッと床に倒れたYさんからとめどなく血が零れる


女子2は刺した時手を離してしまい、武器を失った

これは、きっと大きなチャンスだ

何とかこの場を脱して、助けを呼んでYさんを助けなきゃ

このままじゃYさんが死んじゃう……



早く、早くこの場を脱しないと……

焦り、困惑、恐怖が思考を鈍らせていく


こんな時……俺に力があれば……

Yさんを助けるための力が欲しい……


女子1「偽名使ってまで転校してきたってのに、最後はあっけないわね」


俺「偽名……?」


女子1「そうよ?そこの裏切り者は本当はDって言うのよ。でも、Dって名乗れば名前持ちに不信感を持たれる……きっと元から名前持ちが関係してるって知って転校してきたのね。凄い準備周到よね、転校書類すら偽造してYとして転校してきたんだもの。それもこれも、アンタを殺す…ただそれだけの為にね」

そこまで準備して……

何がそこまでさせたんだ?


女子1「ご苦労サマ。あの世で会ったら、また友達になりましょ?」


なんとか、Yさんを助けるためにこの3人から逃げないといけないのに……

ダメだ、強行突破するか?

ちょっと斬られるかもしれないけど、保健室まで行ければ……うん

何とかなるかもしれない

屋上の出入り口のドアに視線を向けると


女子1「逃がさないわよ?女子2アンタはドアのトコ行ってな、絶対に逃がすんじゃないわよ?」

女子2「わかったわ」

くそっ

バレたか……

女子2がドアの前に陣取って逃げ道を潰す


屋上から飛び降りたら、さすがに只じゃ済まないし……

でも、早くしないとYさんが……



あ~もう!どうしろってんだよ!!

このまま、Y…Dさんも俺も殺さて終わりか!?

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