第286話 屋上で聞く歓声
俺は今、Yさんを待って屋上で空を眺めている
そんな俺を……何故か監視する女子が数人現れた
視線を感じ顔を向けると、目を逸らされる
あんまりじろじろ見てると、怒られそうだから
また空へ視線を投げる
早く、来ないかなぁ……Yさん
そしてあの女子たちは何しに来たんだか……
俺が邪魔なのかもしれないけど、後から来ておいて追い出そうなんて
図々しいにも程があるよな?
俺はYさんと大事な話しがあるんだから、寧ろYさんが来たら少しの間いなくなってほしいくらいだ
ぼーっと空を眺め、校庭から響くキャーキャーという声を聞く
きっと四季島がちょうど走ってるんだろうなぁ
アイツ、勉強も運動もできるし
まぁ、人気があるのは分かる……分かるけど
いつもあんなにキャーキャー言われて、疲れないのか少しだけ心配だな
でもアイツなら
「慣れてるからな」って言うんだろうな……
俺なんかは、絶対に慣れないだろうなぁ
つくづく実感する……アイツは、特別凄い奴だな
もし……俺が名前持ち化した時
そんな風に頑張れるだろうか……
家で勉強を頑張り、テストで結果を出し続けて
近寄ってくる人に、分け隔てなく優しくして
常に、周りが羨むような完璧さを見せ続ける
名前持ちは、自然と注目が集まる
そして、注目を集めるという事は失敗した時の反動も大きいという事だ
名前持ちが、そんな失敗をするわけない!
誰かが邪魔をしたに違いない
そんな風に周りに思われてしまえば、自分一人のミスで周りにいる人が非難されかねない
そんなミスできないプレッシャーを、一切感じさせないアイツは……
やっぱすごい奴だよな
目標にするには、あまりにも高すぎる
孤高にして孤独
周りに人はいるが、いつも一人で戦う
例え傷付いても、自分を曲げられない
絶対に耐えられないな……
パン!パン!パン!と破裂音が3回鳴った
四季島が1位でゴールしたんだろうな
一層大きな歓声が響く校庭で、アイツはどんな思いだろうな
安堵か……喜びか……
純粋に喜べてると、いいなぁ……
司会の声で全種目の終了が宣言され、得点の集計の結果
紅組が勝ったと発表された
良かった……勝てた……
俺も捨て身で頑張った甲斐があったな
どの程度貢献できたかは分からないけど……
MVPの発表とか聞こえたけど、どうせ名前持ちが表彰されるだけだし
俺には関係ないな
ぼーっと空を眺めるのも、そろそろ終わりだな
きっとYさんがもう少ししたら来る
そしたら、理由を聞こう
そんで、力になれる事なら力になろう
コレは、俺の仕返しだ
Yさんを助けたいのは勿論だけど
Yさんに、好きでもない男と付き合わせた誰かに
仕返しをしてやる
やっていい事と悪い事の区別もつかない奴に説教してやるんだ
その後は……四季島にでも頼んでYさんを守ってもらうか
俺じゃ誰一人守れないからな……
アイツのは借りを作ってばっかだな
いつか、返さないとな
返せる自信はないけど……
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