第281話 借り物競争

校庭の見える位置まで来て、ふと視線を感じた


キョロキョロと視線の主を探すが、どういう訳か見つからない?

まぁ、いっか

何か俺に用事があれば話しかけてくるだろ


俺「そう言えば、借り物競争って誰が出るんだ?」

うちのクラスの誰だろ?


B「は?何言ってんだよ!?」

どうした?

情緒不安定か?


D「うちのクラスからは南城さんが出るんだぞ!?」

え?

南城さんが?

てっきり400mとかに出るのかと思ってたけど……


俺「なんで、南城さんが?」

面白そうとか、そんな理由だったりして……


B「さぁな。でもまぁ、お前が関係してるのは言うまでもないな」

なんでだよ!?


D「だな」

二人して、何を勘違いしてるんだよ!

俺、南城さんに何も言ってないぞ!?


俺「意味分からん!」


B「まぁ、見てれば分かるだろ。俺たちだって、どうして借り物競争なのかは知らないし」

根拠もなく、俺が関係してるって言ってたのかよ!?



BとDの戯言を否定する為にも、南城さんには俺とは関係ない走りを見せてほしいものだな!


さて、そろそろ競技が始まるな

南城さんは……3番目か


第一走者が走っていき、途中に置いてあるテーブルから紙を1枚取る


そして、紙に書かれたモノを探しに散り散りに走って行く

第一走者で最初に戻ってきた人は、なんと先生を連れていた!?


紙に何て書いてあったんだ?



『ゴール!第一走者、一番で戻って来たのは白組でした!さて、紙にはなんと書いてありましたか?』

マイクを向けられた白組の生徒は……


『はい!コレです!』

紙を広げて、宣言したのは


『嫌いな人!でした!』

おいぃぃぃ⁉⁉


連れて来たの先生だよな!?


盛り上がっていた会場全体が瞬く間に凍り付いた


そして連れて来られた先生がマイクを奪う


『えー、どうも。生徒指導を担当しております。盛り下げてしまい申し訳ない』

頭を下げて謝罪する先生……


『この生徒は事あるごとに問題行動をする大の付く問題児でして。よく注意をしてるせいで、嫌われてしまったようですね。しかし、何時か私の言ってる事を理解してくれると信じております。これからは“より一層”厳しく指導していく所存です』

先生の心の籠ったスピーチで会場に笑いが巻き起こった

連れてきた生徒の方が膝を折って項垂れる


そして、やっと2着目の生徒が戻ってきた

他の生徒は随分の難航してるみたいだな

確か5人くらい居たはずなんだけど……


2人目の生徒が持ってきたのは、小さくて遠目には何を持ってるのか見えなかった


俺「あれ、何持ってきたんだ?」

B「見えねぇ」

D「なんだろ……まさか虫とか?」

いや、さすがに虫採ってこいなんて……ないよな?

虫苦手な人が引いたら可哀そうだろ


『惜しくも2着でしたねー!紅組の方、持ってきたモノはなんですか?』

マイクを向けられた生徒は……


『えっと、コレです』

手に包んだソレは……


『む、虫ぃ!?ちょっと実行委員!何で虫なんてお題入れてるの!?』

しかし、実行委員の方でも虫なんて入れてないと首を振られる


『あ、お題は虫じゃないですよ?』

ち、違うならダメじゃん!?

なんで虫採ってきたの!?


『お題は“掌に収まる好きなもの”でした!』

な、なるほど?

虫が好きなのか……

これは、実行委員会も予想外だったろうな


『ちなみに!今連れてきたコイツは、ナナフシの雄です!僕初めて見ました!』

そ、そっかー……

ヨカッタネー


続々と3着4着5着と続けざまにゴールする

借り物の確認で、実行員会の面々が出てくる


そして、問題なくゴールの扱いになった

ちゃんと借りられてこれたって事か……

1、2着が少しおかしかっただけ……だったみたいだな


さて、第二走者の番が始まり


今度は、あっさりと全員がゴールする

選んだ紙に書かれたお題によって、かなり時間にムラがあるんだな


次はいよいよ、南城さんの出てくる番だ

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