第278話 オン・ステージ

歌い、少しだけステップを踏んで

マイクをお互いの口元へ持っていき、歌わせ合う


パフォーマンスはありきたりなモノばかりだけど

衣装の効果で様になって見える


そして、掛け声のメンバーが良い感じに声を出してる


そんな掛け声の中に、かすかに聞こえる可愛い声

南城さんが団員の真似をして声援をかけてくれていた


頑張ってくれてる南城さんへ手を振って合図を送る


そして、歌はサビに入って盛り上がりを増す

掛け声グループも熱が入る


一番が歌い終わり、間奏に入ると

掛け声班の男衆がお互いに合図を送り合い


「L!O!V!E!ラブリーやーちゃん!!」

な、何それ!?

俺、聞いてないんだけど!?

知らない掛け声がかけられてビックリして一瞬固まる俺


Y「気合一杯の応援ありがとー!!あ~ちゃんには声援無いの~?」

知ってたのか、Yさんはその掛け声に平然を応えた

その“あ~ちゃん”って……もしかして


「ありまーす!!」

今度は女子メンバーが声を上げる


「あ~ちゃーーーん!!か~~~わ~~~~い~~~~いーーーーーーー!!」

何だソレーーーーーー!!!

可愛いなんて言われても、俺は嬉しくないからな!?


俺「別に、可愛いなんて言われても嬉しくないよ!!」

素の声が出そうになったけど、何とか裏声で応える事ができた……

あ、危なかったぁ……


「きゃーーーーーー!!」

何がきゃーなの!?


間奏が終わり、2番が始まる

男衆のヲタ芸も磨きがかかっている

ハイ!ハイ!ハイハイハイ!

Fu~~~ハイ!



最初は俺もYさんも、掛け声班も全員が緊張していたけど

1番の終わりには、練習した時みたいに緊張も解れて

リラックスしつつ高揚感と一体感に包まれた状態になっていた


しかし、練習では味わえなかった他の生徒からの声援が応援団全員の士気を更に上げていく


ライブとかって、こんなにも一体感のある事だったんだな……

どうしよ……スゲー楽しい!!


汗を飛ばし、この後しばらく声が枯れてもいいって思えるくらい精一杯歌う


俺のテンションが上がり、Yさんも釣られて勢いを増す

そんな俺達二人に合わせて、他の全生徒が盛り上がっていく


最後のサビの時、校庭と言う名の会場は完全に一つになった


盛り上がりだけなら、白組に引けを取らない!

そう確信できるレベルの熱気が立ち込めていた


全く知らないであろう曲で、ココまで盛り上がってくれた事に俺はアニソンの偉大さを再確認した


歌いきり、俺もYさんも他の団員全員も肩で息をするくらい消耗していた

歌っている最中は、一切分からなかったけど

思っていたより、体力を使っていたみたいだ


俺とYさんが頭を下げると、ステージは終わりだ

大きな拍手の音に送られ、後は退場して控室に帰るだけ

のはずだった


「アンコール!アンコール!」

と誰かが声を上げた

それは団員でも南城さん達でもない、全く俺の知らない生徒だった


その一人の生徒が唱えたアンコールに、便乗してアンコールをする生徒が数人現れた


こんなの予定に無いぞ!?


アンコールの掛け声は瞬く間に広がり、ほぼ全生徒がアンコールと声を揃えて唱え始めた


これに慌てたのは実行委員会の面々と教師たちだ


予定に無いアンコールなど許可できない

何より白組の時はアンコールなんてしてない

それでは不公平になってしまう


何より、午後のプログラム競技はまだまだ残っている

それらの時間が遅れるのは、大問題だ


マイクを手に説得する教師を無視する形で、アンコールは鳴りやまない

コレ以上はマズイな……

折角勝つために応援したのに、このままじゃ無効にされそうだ



俺は切ったマイクのスイッチをもう一度入れ直し


俺「次のステージは、文化祭です!それじゃ、皆ありがとね!バイバーイ!」

とアンコールを遮り、さっさと退場する


足も腕もパンパンで、もう限界……

体力もギリギリ持ったけど、もう1回なんて絶対にムリだ


疲れ果てた俺は、一目散に控室の教室まで帰ることにしたのだった

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