第276話 紅組の奥の手

意気消沈の紅組応援団


そんな中、意外にも俺は冷静に何か手は無いか思案していた



ふと、一つの思い付きが頭をよぎる


しかし、それはあまりにも他力本願すぎる事だ

妙案とは決して言えない、けど……他に何か良い手があるわけでもない


とりあえず、実行に移す前に団長には相談してみるか


俺「団長、ちょっと相談いいですか?」


団長「何かしら?」


俺「ここではちょっと話し辛いんで、廊下でもいいですか?」


団長「別にいいけど」

とりあえず、団長と二人で話してみないとな


Y「私も聞いていい?」

それは、ダメかな


俺「いや、Yさんはココで待っててくれる?」

あんまりYさんには知られたくないから……


Y「うん…それじゃ待ってる」


俺「ありがと」



Yさんを教室に残し、団長と二人で廊下へ出る


団長「それで?Yさんに聞かれたくない相談って何かしら?」

そりゃ、バレてるか


俺「えっとですね……白組が名前持ちの力を借りてるなら、俺達も名前持ちに協力してもらえば何とかなりませんか?」


団長「そんな都合よく協力してくれる名前持ちなんて何処にいるのよ?」


俺「二年の南城千秋さんと堀北春香さんです。あの二人ならきっと何かしら協力してくれます」

流石にクラスの違う仁科さんには頼めないよな……


団長「その根拠は?」


俺「俺、二人と仲いいんですよ。頼めばいい返事を貰えると思います」


団長「あの美少女二人と、ねぇ」

あれ?

信じてもらえてない?

結構噂になってたと思うんだけど……


俺「ただ、二人は応援団ではないので……直接手を貸してもらうのはフェアじゃないと思うんです」

体育祭はスポーツマンシップに則り行う行事だと思う


団長「そうね。それじゃ、どうやってしてもらうつもりなのかしら?」

そこが問題なんだよな……


俺「えっと、掛け声を一緒にかけてもらう…とか?」


団長「それだけで、私達の完勝に繋がると思う?」

結構効果的だと思うんだけど……一押し足んないんだよなぁ


俺「……思いません。でも、何もしないよりはいいと思います」

上手くすれば接戦になるかもしれないし


団長「今の話、聞いた限りだとYさんに聞かれたくない内容だとは思わなかったのだけど?」


俺「えっと、南城さん達と俺は仲がいいので……Yさんにとってはそれが面白くないみたいで……」


団長「なるほど、嫉妬ジェラシーね……。A君、今の話はYさんとも相談すべきだと私は思うわ」


俺「でも……」


団長「それが君なりの優しさなのは、私にも分かるわ。でもね、Yさんはきっと秘密にされるのは嬉しくないはずよ?」

そう……なのかな……?


俺「わかりました……」


団長「それじゃYさんも交えて、話し合いましょ。もう時間もないわ。決めるなら早くしないと」



団長が教室からYさんを呼び出して、今度は3人で俺の思い付きについて話す


ざっと話し終えると、Yさんは


Y「それ、いいと思う!」

俺が思っていた反応とは大分違った……!


俺「え?いいの?」


Y「寧ろ何でダメなの!?使える手段は何でも使わないと!やらないで後悔なんてしたくないでしょ!?」


俺「あ、うん。そうだね」


団長「その名前持ちの二人がどう影響するか、ハッキリ言って分からないわ。でも、Yさんがそこまで言うならやってみるのもアリなのかしら」


Y「後は……餌ですね」

エサ?

ご飯とか?

お菓子なら少し作れるけど……


団長「何か良い案がありそうね?」


Y「そんなの決まってるじゃないですか。A君ですよ」

俺?


団長「どういう事?」


Y「あの二人はA君に好意を持ってるんです」


団長「え!?名前持ちの美少女が!?」

やっぱり知らなかったんだ……

てことは、学校中の噂になってる訳じゃないのか!?


Y「そうです。なので、A君の今の姿を写真で撮って送る事で絶対に協力してくれます!100%間違いなく!」

え!?

今の姿って、コレ!?

いやいやいや!!!!

それは嫌だよ!?

他に何かあるでしょ!?


団長「そうなのね!」


Y「こんな事もあろうかと、既にA君の写真はココにあります!」

スマホを取り出して俺の画像の写真が表示される

いつの間に撮ったの!?


団長「さすがYさんね!」


Y「任せてください!」

何も任せちゃいけないってのは理解したよ!

遅かったみたいだけどな!


手早く文面を打ち、送信するYさん

報酬の画像を送ると……

着信音が鳴り出した!?


Y「はい、もしもし?」

Y「そうですよ~。他にも何枚かあるんですけど……ええ、そうです。さすが堀北さんですね、察しがいいですね」

Y「はい。A君も練習を頑張ったんですよ。なのに、全てが無駄になりそうになってるんです」

Y「紅組応援団わたしたちが表に出たら、目一杯盛り上げてほしいんです。簡単な事です。恥も外聞も捨ててはっちゃけてくれればいいんです。A君の為なら、できますよね?」

Y「もちろん、頑張って盛り上げてくれたら他の画像も送りますよ」

Y「後はそうですねー……白組に勝てたらA君がきっとご褒美くれますよ。それじゃ本番はよろしく~」


Y「ふぅ、ばっちり協力してもらえそうよ!」

最後に不穏な事言ってたんけど!?

その事について後でじっくり話し聞かせてもらうからね!?


団長「この事を皆に知らせて、もう一度気合入れ直しましょう!」


メンバー全員に南城さん達が協力してくれる事を告げると

一気に活気が戻ってきた



こんだけ気合が入ってれば、もしかしたら…もしかするかもしれないな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る