第275話 目覚めと回復

ゆさゆさと揺らされる


目を開けると、ぼんやりした視界に一人の女子が映り込む


Y「A君、起きて」


俺「Yさん……」

そっか

もうステージの時間か……


俺「おはよ~……」

あ~、熟睡したなぁ


Y「体調はどう?」


俺「ばっちり回復したよ。起こしてくれてありがと」

さて、それじゃ行きますか!


先生「待ちなさい!」

あ、先生いたのか


俺「あ~、ベッドありがとうございました!それじゃ行ってきます!」


先生「待ちなさいと言ったのが、聞こえなかったのか!?」


俺「なんですか?」

まさか、金取るとか!?


先生「ちゃんと元気になったか確認するから、そこに座りなさい」


俺「大丈夫です!元気になりました!」


先生「そう言って眩暈で倒れそうになったのは、どこのどいつだ?」

あ……俺です


俺「誰デスカネー」


先生「とりあえず顔色は……良くなったみたいだな。後は自分で体温計で熱が無いか確認しろ。平熱だったら行っていいぞ。微熱でもあるなら早退させるからな」

そんな、過保護な……


手渡された体温計を脇に挟んで、しばらくするとピーと音が鳴り

確認すると、ばっちり平熱ど真ん中の数値が表示されていた


俺「平熱です」

よかったぁ

もし熱でも出てたらどうしようかと思ったよ……


Y「よかったね!」

俺「うん」


先生「そうか。なら行っていいぞ。絶対に戻ってくるなよ?」

そんな言い方しなくてもいいのに……

まぁ、戻ってくるような事が無いに越したことはないんだけど


俺「ありがとうございました」

Y「ありがとうございました」


先生「ケガするなよー」


保健室を出て、Yさんと一緒に応援団控室の教室へ向かう



俺「Yさん、ありがとね」


Y「え?」


俺「保健室連れてってくれて……テキトーに教室とかで寝てたら、体調マズかったかもしれないし」

ほんと、ちゃんと眠れる場所へ連れてってくれて助かったな


Y「ううん。そんなの当たり前だよ。お礼を言われるような事じゃないよ」


俺「いや、助かったからさ。本当にありがとね」


Y「……うん」






Yさんと一緒に教室に入ると、何やら暗い雰囲気が立ち込めていた


俺「ど、どうしたんだ?」


団長「あ、YさんとA君。戻ったのね」


俺「あ、はい。心配おかけしました。でも、もう元気なんで大丈夫です」


団長「そう、それは何よりね……」

なんか、団長も元気ないな……?

どうしたんだろう


俺「Yさん、コレどういう状況?」


Y「えっとね……白組の応援団にね、名前持ちがいたの」

はぁ!?

名前持ちが?応援団に?


俺「なんで!?」

普通は人気種目のリレーとかに出るのに、なんでよりにもよって応援団なんかに出てるんだよ!?


Y「何か、その名前持ちの人は裏方が好きな変人らしくて……応援団の裏方をやってみたいって参加したみたい」

名前持ちって変人しかいないのかよ!?


俺「マジかぁ……」

でも、その人裏方なんだよな……?


俺「メインでステージに立つのは、名前無しだけなんだよね?その変人名前持ちは出てこないんだよね?」

ならまだチャンスは残ってるんじゃないかな


団長「そうよ……でも、それが何だって言うの?あっちは名前持ちの力でとんでもないステージになるに決まってるわ!それに引き換え私達は名前無ししかいないのよ!勝てるわけないじゃない……」

どうして、そう言い切れるんだ?


俺「やってみないと分からないですよ!ステージで勝負するのは名前無し同士なんですから!」

向こうのメンバーが本番で失敗したら

どんなに有能な名前持ちがバックアップしてても、勝機はある!

はず……


団長「向こうが失敗すればチャンスはある、とか考えてる?」

そう!

団長ならそういう可能性だって捨てない人でしょ!?


団長「無いわよ……名前持ちがプロデュースしたのよ?初ステージで大失敗なんてあるわけないわ……」

うぐ……

確かに、そういう事もあるか

南城さんとか堀北さんと接していて、名前持ちも失敗するって俺は思ってたけど

普通はそんな事思わないよな

俺だって、前までは名前持ちは完璧なんだって思ってたし


俺「何か……打開策がないと……」




このままじゃ、みんなの士気が低すぎて勝負にすらならない


あんなに頑張って練習してきたのに、始まる前から終わってた……なんて


そんな結末は、最悪だぞ……

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