第271話 中途半端でも良くない?

Yさんの登場で、俺は助かったと……そう思った


しかし、俺は忘れていた

最初にアレを言い出したのがYさんだという事を……!


Y「あ、それA君付けるの!?早く付けて見せてよ!!」

嘘だッ!!!


俺「Yさん!?」

どうしちゃったの!?

久しぶりに会ったのに!!!


Y「ん?何かな?」

何かな?じゃないよ!!!


俺「何で当たり前の様に、俺がソレ付ける事になってんの!?」

おかしいよね!?


Y「え?私、付けても意味ないでしょ?元々あるし」

そういう事言ってんじゃないよ!!

そこっ、胸を寄せない!!

別に寄せなくても見れば分かるから!!

ちょっとエロいよ!?もう!!


俺「何で俺が付けなきゃならないんだって話しだよ!!」

別になくてもいいじゃん!!


Y「だって、中途半端はよくないでしょ?」

中途半端って……

完全に女装させるの楽しんでるな!?


団長「3対1で、着用に可決されました!!はい!みんなが来る前に付けちゃって!」

この、クソ団長がっ!


「付け方は教えるから、ほら!」

そんなもんお前にだけは、教わりたくない!!!


俺「断る!!」


Y「あ、じゃあ私がやる!」

だ、か、らっ!!


俺「はぁ……」

何でいつもいつもいつも……俺の意見は聞いてもらえないんだぁーーー!!

このまま、ごねてもきっと覆らないだろうなぁ

そしたら、Yさんと話す時間取れなくなるし……

諦めるしか、ないのか……


降参のつもりで両手を上げると、Yさんが俺の後ろに周りこみ、驚く速さで偽乳を装着する


自分の身体を見下ろすと、視界にはクッション的なモノが詰まったブラがある

……何か、違和感しかないなぁ


見ていても気分が落ち込むだけだし、さっさとブラウス着ちゃおう


衣装を着て、カツラを被せられる


最後にカチューシャを被って完成


鏡が無いから、自分ではどうなってるのかよく分からない

ただ、Yさんと団長さんは楽しそうだし

コレを作った奴は、ガッツポーズのまま動かなくなった


着せといて、何で何も言わないんだよ!!


団長「あ、そうそう!Yさんメイク道具は持ってきてくれた?」


Y「はい!バッチリです!」

ほ~、Yさんはメイクもするのか


団長「それじゃ、A君」

また後で!


団長「そこに座って!これからメイクをするわよ!」




…………は?





俺「今なんて?」


団長「メイクするからそこの椅子に座ってって言ったのよ?もしかして寝ぼけてる?」

寝ぼけた事ぬかしてんのはお前らだろうが!!!


俺「そこまでしなくてもいいと思いますけど!?」


Y「折角だし、何事も経験だよ!ほら、大丈夫!私が責任持って可愛くしてあげるから!」

Yさんが壊れた⁉


俺「可愛くなんてしてほしくないんだけど!?」


Y「え~、じゃあクールな感じにしとく?」

そういう問題じゃないって!!

方向性以前の問題だよ!?


俺「メイクなんてされたくないって言っての!?」

どうして伝わらないの!?


Y「中途半端は良くないよ!こんな機会、きっともう無いよ!!」

そんな機会、1度たりとも無くて良かった事だよ!?


俺「メイクは断固拒否するからね!?」


Y「でも、そのままだとすぐにA君だってバレちゃうんじゃない?」

バレるって……


Y「ほら、B君とD君だっけ?あの二人に」

アイツらか

…………今後ずっと揶揄われるな

アイツらなら俺の事をA子とか呼びそうだし

終わった後も地獄とか、黒歴史以上だろ……


俺「メイクしたらバレない?」

ほんとに?


団長「ええ、メイクって凄いのよ」

Y「大丈夫よ。絶対にバレない様に完璧な変装メイクをしてみせるから」

……何もしなければ、絶対にバレる

メイクをすれば、バレない可能性も出てくる


究極の2択かよ!



団長「わざわざYさんが家からメイク道具持ってきてくれたんだし、やってみよ?ね?」

楽しんでるだけなのは、間違いないけど

確かにYさんの苦労を無駄にするのも、気が引ける

そして何よりアイツらにバレるのは、絶対に避けたい!!


俺「分かったよ……やりたきゃメイクでもなんでもやってくれ」

その後、しっかりとYさんと話し合おう




椅子にドカっと座り、目を閉じる





体育祭って、なんだっけなぁ……


始まる前から、既に疲れが限界突破しそうな俺は


本番のステージ『新・応援合戦』が不安になった

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