第266話 情緒不安定
昼休みの屋上
生徒は疎らにしかいない、学校内で人口密度の低いランキングトップ3に入る場所だ
今日も強い日差しが照り付ける屋上に、生徒の姿は見当たらない
俺「まだ暑いなぁ」
9月の中旬だから、当然と言えば当然なんだけどな……
さて、ベンチに座って待つとするか
ベンチに腰かけて、そんな時間も経たない内にYさんが姿を現した
俺「Yさん!こっちこっち!」
声をかけると、小さく手を上げてこっちに歩いてくる
Y「今日も暑いね……」
暑さのせいかな、少し元気ない気がするな
俺「うん。体育祭は少し涼しくなるといいんだけど」
じゃないと熱中症になる生徒が続出しちゃうよね
Y「そうだね。どうする?やっぱ中で食べる?」
少しだけ躊躇いつつも、そんな提案をしてくれる
俺「俺はどっちでもいいよ。ここは人が少ないから好きだし」
ぶっちゃけた話、混んでる校舎内は息苦しいんだよね
Y「それじゃ、ここで食べよっか」
俺「うん」
ほっとした様子のYさんが隣に座って、お弁当の蓋を開ける
お弁当の中身は、煮物と野菜と揚げ物が少し
それに白いご飯だった
バランスもいいし、彩りもキレイだなぁ
一方俺の方は肉がメインのガッツリ系だ
全体的に茶色で、今日に限ってご飯の上におかかがふりかけてあった
見事に茶色だな
少しだけ入ったレタスの緑が映える、そんな弁当だ
前に野菜ばっかりの弁当が続いたから、母さんに文句言ってから茶色のおかずが増えたんだよな……
今日は一段と肉系が多いなぁ
今思うと、母さんは俺の健康に気を使ってくれてたんだよな
でも、食べ盛りの男の子が野菜ばっかりの弁当だと食べ足りないんだよ
てのが正直な感想なんだけど
母さんには少し悪いことしたかな
いつものように二人揃ってお弁当をモグモグと食べ進める
こうして食べてる時はあまり喋らないんだよな……
もっと楽しく会話しながら食べられるといいんだけどなぁ
そんな事を少し考えながら、おかかご飯を口に入れた時
Y「あのね」
珍しくYさんがご飯の途中に話しかけてきた
俺「ん~?」
口にご飯を入れたばっかりで喋れない俺は、適当に返事をする
Y「A君にね……謝らなきゃいけない事があるの」
謝る?
あ~、俺が女装するはめになった事か
Y「私ね、実は……A君の事好きじゃなかったの!!」
……は?
あれ?女装の事じゃないの?
俺「ん、と……どういう事?」
意味が分からないんだけど……?
Y「その……私ね……」
理由を聞いたが、Yさんの口からその次の言葉が出てこない
Yさんは、どういう訳か嗚咽を漏らして泣き始めてしまった
俺「えっと……」
どうすれば、いい?
泣き止む様に声をかける?
それとも思いっ切り泣いていいよって言えばいい?
寧ろ、泣きたいのは俺の方なんだけど……
告白してきたYさんは、実は俺の事なんて好きじゃなかったって
今までの事、なんだったの?
うわ言の様にごめんねごめんねと繰り返すYさん
そんなYさんに、なんて声をかければいいか分からない俺は
Yさんの頭を撫でてあげる事しかできなかった
暫くそのまま泣き続けて、落ち着いたのは昼休みが終わる少し前だった
Y「ごめんね……私が悪いのに……」
その涙は罪悪感で流れたのかな
俺「今は、とりあえず何も聞かないから。少し保健室で休んできなよ」
もう少し、落ち着いた方がいいと思う
情緒不安定な状態で、他の人に接するのはお互いの為にならないからね
Y「うん……」
俺「それじゃ、保健室行こう」
力無くふらつくYさんを支えて、保健室へ連れて行き
俺は自分の教室に戻った
放課後……じゃ、まだ聞けそうにないよなぁ
Yさんがちゃんと話せるようになるまでは、待つしかないのかなぁ
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