第261話 久しぶりの保健室

Yさんに連れられて保健室に行く途中

普段なら絶対にもう帰ってるはずの奴等と遭遇した


B「でさぁ、Aの奴が……」

D「あ~、あいつそういうトコある!」


おい、お前ら何の話ししてやがる!?


Y「あれって……」

俺「BとDだよ。一応友達だよ」

最近なんか冷たいんだけどさ……


Y「そっか」

さて、この場は一時撤退して後で問いただしてやるか……


Y「ねぇ、ちょっといい?」

何で話しかけてるの!?


B「はぁ!?な、なんだその恰好!?」

D「え?え?え?」

デスヨネー


Y「私、Y。君たちA君の友達だよね?」

止めなきゃ……でも声出したら絶対にバレる……!?


B「あ、ああ。うん」

D「Yさんって、最近Aと一緒にいる?」

Y「そうそう!それ私!」

いや、普通に会話してるけど!

衣装着てる事にツッコミは!?


B「じゃあ南城さん達が言ってた……」

D「おい、それは」

B「あ、そっか」

もう手遅れだよ……!


Y「が何言ってるか知らないけど、私は気にしないから」

堂々と気にしないと言い切れるなんて、凄いな……

ってそうじゃない!


B「えっと、Yさん。俺達に何か用?Aの奴なら」

コイツらに用なんて無いでしょ!?


Y「応援団、でしょ?私も応援団だから知ってるよ」

B「そうなんだ。じゃあ、何の用?」

だから、用はないって!!


Y「う~ん。A君の秘密とか、知ってたら教えてほしいなって」

ちょっと!?

袖をくいくいと掴んでYさんにヤメテ!と意思を伝えるも

全然反応してくれない!?

なんで!?


B「あいつの秘密……?」

言うなよ!?

あっても言うなよ!?

てか、無いよね!?


Y「そう、何か知らない?」

二人とも何も言うなよ!?


D「俺が知ってるのは……好きなアニメの話だとかなり饒舌になるってことかな」

おいぃぃーーー!

それ秘密でも何でもないよ!?

ただのオタクのサガだよ!?

お前だってそうだろ!!


B「あ~、そういうのなら……いや、コレは言わない方がいいか」

何だよ!?

お前、俺の“何”を知ってるんだよ!?


Y「え~、教えてよ。A君のこともっと知りたいんだけど……A君ってあんまり自分の事話してくれないから」

そうか!?

聞かれないだけだと思うけど!?


B「あー、確かになぁ」

D「あるある」

そうなのか!?

俺ってそんなイメージ!?


Y「だから、教えて!」


B「お、おう。アイツ、結構なシスコンなんだよ」

はぁぁぁぁあぁぁぁ!?

俺がシスコン!?

絶対に違うからな!?

何処をどうすればそう思うんだよ!?


あ~~~~~!言い返したい!!

でも、声出したらこんな恰好してるのバレる……!


Y「へぇ、シスコンなんだ」

小さく首を振って否定する


B「そう!絶対に認めないけどな……」

認めないも何も事実じゃないからな!?


Y「へぇ、今度聞いてみよっと。教えてくれて、ありがとね。じゃバイバイ!」


まさかBとDに合うとは……

不運にも程があるだろ!?


俺「Yさん、違うからね」

シスコンじゃないからね!?


Y「ふふ、何がのかなぁ。そんな事より、そろそ保健室着くよ。頭は大丈夫?」

頭、大丈夫か聞かれるのはあんまりないけど

正常に機能してるはずだよ!


俺「ちょっとコブ出来た程度で何の問題もないって」

だから保健室には行かなくても平気だよ!?


Y「そう?」

そうだよ!

何度も言ってるでしょ!




コンコンと保健室のドアをノックするYさん

な・ん・で!?


「どーぞー」


Y「失礼しまーす」

俺「…………」

ダメだったか……


そういえば、保健室に入るのも久しぶりだなぁ


先生「どうしたんだい?」


Y「この子が転んで頭を打っちゃって」

この子!?


先生「それは大変だ。どこを打ったんだい?」

立ち上がって俺の頭を触る先生

触診のつもりか?

なんか慣れ慣れしいな……

触り方も、なんか優しすぎる気がするし


Y「後ろの方です」


先生「この辺りかな」

俺「痛っ」

コブできてるんだから触るなよ!


先生「うん。頭にコブが出来てるね。これは急いで冷やした方が良さそうだ」

ぞわぞわしたっ……!!キモイ!!


冷凍庫から保冷剤を取り出し、タオルに包んで後頭部に当てる

随分丁寧だし……この先生、男女で扱い変えてるな?

女子には優しく、男子にはぞんざいに?

ふざけるなよ!


俺「……ありがとうございます」

できるだけ低い声でお礼を言ってみるか


先生「……え゛?」

驚いてる驚いてる


俺「どうも、お久しぶりです」

ほんと、いつぶりだろうなぁ~


先生「……まさか、君は」

気付いたみたいだな


俺「ええ、堀北さんや南城さんの友達のAです」

忘れてはないよな?


先生「……はぁ!?」

めっちゃ驚いてるな!

俺が声を出すまで気付かないとは……そんなにこの恰好似合ってるのか?

不本意なんだが!?


俺「いやぁ、こんなに親切な先生だとは知りませんでしたよ。今度堀北さん達に伝えておきますね!」

嫌味としてな!


先生「いや、そんな事は伝えないでいい!患者に優しくするのは当然じゃないか」

当然、ねぇ


俺「噂で聞いたんですけど、先生って男子には冷たいって……あれは嘘だったんですよね?」

そんな噂は一回も聞いたことないけどね


先生「そ、そうだとも!男子だからと冷たい対応をするわけないじゃないか!」

噂自体は否定しない、と


俺「よかったです。では、皆にも伝えておきますね。先生は男女分け隔てなく優しく診察してくれるって」

面倒だから実際は言わないけど


先生「…………ああ。もちろんだとも」

うん、心折れたな

声のトーンが2段ほど下がった

この人、面白いなぁ


Y「A君って保健室来たことあるの?」


俺「ん?まぁ、ね」

南城さんに担ぎ込まれた事があるんだけど、言わない方がいいよね


Y「そうなんだ。ケガでもしたの?それとも病気?」

なんで、そんなに詳しく聞こうとするんだ?

俺のことが知りたい、なんてことじゃないよな?


先生「ああ、大怪我を負った…らしくてね」

言うなよ!

守秘義務とかあるだろ!?


Y「え!?大ケガ!?」

ほら、変に心配かけちゃったじゃん!


先生「まぁ、でもここに来た時は殆ど怪我なんてしてなくてね。気絶してるA君を南城千秋さんが運んできたってだけなんだ。大怪我って言うのも彼女がそう言っただけだし」


Y「へぇ、南城さんが……」

その時の事は、詳しく聞かれたくはないんだけどなぁ


俺「それじゃ、大丈夫みたいなんで帰ります」

保冷剤とタオルを返して立ち上がる

逃げなきゃ……


先生「ああ、お大事に」


俺&Y「失礼しました」

そそくさと保健室を出る


Y「ねぇ、A君。大けがって何があったの?」

やっぱり気になるよね……


俺「あ~、あれは……あんまり話したくない事だからさ」

できれば忘れてほしいなぁって


Y「そっか……教えたくないんだね」

いや、“Yさんには”じゃなくて他の誰にも知られたくないんだけど……

南城さん達が絡むと、Yさんってちょっと反応が変化するよね


俺「いや、そういう訳じゃなくて」

黒歴史的は側面があってね……


Y「もっともーっとA君と仲良くなれば、教えてくれるかな?」

可愛い……ズルい!

そういう言い方、俺好きかも……


俺「う、うん。そーだね……」

いつか、話そう……“いつか”が来ればだけど


Y「あ、A君も私に聞きたい事あれば何でも聞いていいからね?」

聞きたいこと?


俺「うん。聞きたい事ができたら、聞くね」

今は特にないけど


Y「うん!3サイズでもブラのカップでも何でも聞いていいからね?」

はぁ!?

そんな事は聞かないよ!?


俺「そ、そういうのは聞かないから安心して!何があっても聞かないから!」

どうして俺のこと変態にしようとするんだよ!?

もしかして、俺ってみんなに変態だと思われてるんじゃ……


Y「ふふ、照れてる。可愛いな~」

はぁ……揶揄われてただけかよ


俺「あんまり揶揄わないでよ……」

年頃の男子を何だと思ってるんだよ、もう!


Y「それじゃ、戻ろか。みんな待ってるだろうし!」


俺「うん。あんまり待たせたら心配かけちゃうからね!」

走ったら目立つから、早歩きでね!

一目散に!真っ直ぐにね!


それに急いで戻らないと、また誰かに合ったりしたら最悪だしな……

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