第259話 Yさんの衣装……!

俺が恥ずかしさに震えていると、団長が俺を手招きする

団長「前出てきて!」

だが、断る!!

首を横に振って拒否を示す


団長「なんで?皆に衣装見せてちょうだい」

それなら衣装だけ見れば良かったんじゃない!?

なんで着替えた俺を晒し者にしたがるの!?


団長の提案に抵抗していると、やっとYさん達が教室に戻ってきた


Y「着替えてきました……」

自分の身体を抱きしめ隠すようにしているYさんが登場する


なぜ、そんな事をしてるのか……もちろん恥ずかしいからだ

Yさんの衣装は、なんと言うか……布地が少ない

お腹とか腕とかが露出されてて、肌の見える範囲が広い


スカートは俺の履いてるのと同じような感じの前が短くて後ろが長い変な形だ

丈の短いシャツは袖のないノースリーブ

ジャケット……ではなくマント?みたいなものを纏っている

俺の語彙力が足りなくて“凄い”しか言葉が出てこない……


Yさんが視線を彷徨わせてあっちこっち顔が動く

そして俺の方を見て停止する

できれば何も言わないでほしいんだけどなぁ……


Y「Aくん!?」

そうですが、なにか?

笑いたければ笑えよ!!


Y「凄い!似合ってる!!」

それはそれで辛い……!!


団長「ほら、二人並んで!」

ここぞとばかりに団長が俺を手招きする

なぜかYさんまで便乗して俺を呼ぶ

多分、死なばもろともって考えだな……


これ以上抵抗しても、時間の無駄か……

仕方なく俺はYさんと団長のいる教室前方へ向かう


俺とYさんが並んだ所を見て、衣装の製作者が勝手に解説を始めやがった


俺は、そんな解説聞きたくない!!


心を無にして、ただ時間が過ぎ去るのを待つ


ああ、今日もいい天気だなぁ……


「以上で、このペアの衣装の解説は終わりです!何か質問とか改善案があればお願いします!」


俺「なぁ、俺の衣装なんだけど」


「なんですか?」


俺「男用のやつに変えて」


「はい!では何も無いようですので、衣装はコレで決定します!」

テメェ……


団長「ありがとね。凄くいい衣装よ。さて、それじゃ改めて今日のミーティング再開するわよ!まず、元バックダンサー組には参考動画を見て真似できるか確認してもらうわ!それ以外のメンバーはいくつかのグループに分かれて掛け声とか議論してちょうだい」


「掛け声ってなんですか?」


団長「ライブで観客がアイドルに送る声援、かしら」


「あ~、なるほど」


団長「それじゃ、グループ分けは各自の判断に任せるわ。元バックダンサー組は廊下に集合してー!」

団長が元バックダンサー組を集めて廊下へ移動し

教室には複数のグループと、目立つ衣装を着た俺とYさん

そして、この可愛い衣装を作りやがった男子がポツンと残る


Y「ねぇ、A君」


俺「な、何?」

今度はなんだ?


Y「どう、かな?」

どうって……


俺「とても似合ってるよ……」

もうソロでやればいいと思うな

そうだよ!

俺いらないよね!?ね!?


Y「ありがと!でも、やっぱ恥ずかしいね……」


俺「いや、俺の方が恥ずかしいんだけど……?」

こう見えて、男子なんだからね!?


Y「そうだよね。でも、似合ってるから自信持っていいよ!」

そんな自信は持ちたくない!!

はぁ……ほんと、当日こんな恰好で人前に出るの?

笑い者になってステージどころじゃなくなる気がするんだけど……


「う~ん……何か、足りない?」

おい、余計なこと考えるな

足りないのはお前の常識だ、バカ野郎


Y「確かに、何か足りないような……あ、」

あ、って何!?

俺に男らしさが足りないのは知ってる!

だから敢えて口にする必要はないんだよ!?


Yさんがおもむろに俺の胸を触る

いやん


俺「ちょっと、Yさん何してんの?」

恥ずかしさでおかしくなっちゃった?


Y「無いもんね」

そりゃあね!?


俺「男だからね!?」

忘れちゃったのかな?


「なるほど!そうか!!ありがとうございます!足りないのはソレです!」

が何を指してるのか見当は付くけど、絶対に認められないからな!?


Y「え?」


「それじゃ、改良の為に帰ります!」

衣装担当の非常識男子は荷物を抱えて帰って行った

明日……学校来たくなくなったんだけど!!

ねぇ!?


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