第257話 雨降って地固まる?

応援団ミーティングで全員が集まったタイミングで、団長さんが頭を下げた


団長「みんな、ごめんなさい」

そんな団長の奇行に顔を見合わせる団員一同


団長「私、一人で勝手に盛り上がっちゃって……みんなが一緒にやる仲間って意識が抜けてたわ」

暴走してたのは見ればわかってたけど、まさか頭を下げて謝るとは思わなかったな


団長「みんな、どうかもう一回チャンスをちょうだい!」

ここにいる全員がどうしようって思っている中、発言する勇気は俺にはない

なので、とりあえず


パチパチパチパチ

と拍手を送る

そんな俺を見てYさんも同じように拍手する


俺達の拍手が三人、四人と拡散していき

全員が団長に拍手を送る


よ、よかったぁ……

俺以外誰も拍手しなかったらどうしようかと思ったよ


団長「みんな……ありがと……」

雨降って地固まるってやつかな


「その、なんだ……弱音吐いて悪かったな」

「もうっちとばかし頑張ってみっからよ」

「踊り、教えてくれよ」

バックダンサー組がバツが悪そうに口にした言葉は、紛れもなく本心だろうな


団長「あ、うん。でも、ダンスはもういいの」

バッサリ!?

いや、確かにダンスは必要なくなったけど!

そういうとこだぞ、団長さん!!


「いや、心入れ替えて頑張っかるからよ」

「そう言わずに教えてくれよ」

熱い!熱血スポコン感がスゴイ!!

昨日とは打って変わって、やる気に満ち溢れてる!!


団長「だから、もうダンサーはいらないのよ」

だ・か・ら~

言い方!!!

もっと言葉選んで話してよ!?

もしかしてワザと!?

それともバカなの!?


「そ、そうか……」

「俺たちお払い箱か……」

あ~、もう!!

勘違いが進んでく!!


俺「えっと、バックダンサー組には別件でやってもらう事があるそうです!」

なんで俺がフォローしないといけないんだよ!?

なんか隣でYさんがクスクス笑ってるし!


「そ、そうなのか!?」

「俺達、破門じゃないのか!?」

「まだやれるのか!?」

破門ってなんだよ!?

応援団は道場じゃないぞ!?


団長「そう!だから、後で全員集合してね!」

ほっと一安心するバックダンサー組の男衆


団長「後は……雑用、じゃなくてサポート係の人達にも一緒に考えてほしい事があるの。集まってくれる?」


「はーい」

「なんだ、やる事あんじゃん」

「それならそー言ってよねー」

おお、昨日真っ先に帰った人達がやる気になってる!?


団長「それじゃ、まずは」

ガラガラ、と教室のドアが勢いよく開く


「お、遅れ、ました……!」

あ~、全員いると思ってたけど一人いなかったのか

衣装担当の男子だ

そうか、こいついなかったのか

気づかなかった


団長「え⁉君、今日はお休みしてたんじゃなかったの?」

お休み……?


「ええ、まぁ、授業は全部休みましたよ……その甲斐あって、完成しました」

大荷物を掲げ、団長の元まで行く

大きなカバンから、ヒラヒラした洋服が出て来た!?

おお!!

Yさん用の衣装か!良いじゃん!可愛いじゃん!


確かお姉さんに頼むとか言ってたから、引き受けてもらえたんだな

それにしても、たった一日で凄い完成度のものが出来たな……

お姉さん、何者なんだよ


「どうですか、団長さん」

衣装を広げてみせる姿は、小さな少年が捕まえた虫を自慢する姿に似ている

何か微笑ましいなぁ


団長「凄いわ……これ、お姉さんが?」


「ええ、手伝ってもらいました!いやぁ、姉さんには敵わないっす……」




ん……?

今なんて……?

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