第251話 Yさんの提案
翌日の放課後
応援団ミーティングにて
俺はとんでもない危機に瀕していた……!
Y「団長さん!提案があります!!」
曲の変更とかかな?
団長「何かしら?」
Y「A君に、女装させましょう!!」
は……?
団長「ごめんなさい。ちょっと何言ってるか分からないわ」
俺も分からないんだが!?
Y「ですから!A君に女装させましょう!」
……なんで?
団長「アナタ達、喧嘩でもした?」
してないけど、事と次第によってはこれからします!!
俺「Yさん、説明してほしいんだけど!?」
なんで俺が女装しなきゃダメなの!?
Y「昨日、A君とカラオケ行ってきたんです!」
そうだけど、そんな大声で言わないでいいんじゃない!?
団長「そ、そうなの。よかったわね……?」
Y「そしたらA君、女の子の声出せるんです!」
出せませんよ!?
あれはただの裏声だからね!?
団長「そ、そうなの?」
俺は首を横に振る、全力で!
俺「ムリです!」
Y「ううん。あの声ならイケます!とりあえず聞いてください!」
え?俺今から歌うの!?裏声で!?
みんな見てるのに!?
絶対に嫌だよ⁉⁉
Yさんはスマホ……ではなく、細長い機械をカバンから取り出した
ソレはどっからどう見ても……ボイスレコーダーだよね?
なんでそんなもん持ってるの!?
周りが「え?」という反応してるのに気づいてる?
てか、気付いて!早く!
俺の心の声は届くことなく、Yさんは黙々と操作しボイスレコーダーから音が流れ始める
昨日散々練習した『獅子』だ
イントロが終わり、歌い出しに入る
もちろん入ってる音声は、Yさんと俺の声(裏声)だった
恥ずかしくて死にそう……寧ろ、殺してくれ……
穴があったら入りたいとか、そういうレベル超えてるから!
耳を塞いで、目を閉じて、外界との接触を断つ
頼む……早く終わってくれ……そして、Yさん正気に戻って!!!
数分後、誰かが俺の肩をちょんちょんと突っつく
恐る恐る目を開けて突っついた人物を確認すると、Yさんではなく団長さんだった……
団長「これから、衣装の打ち合わせと採寸するからね」
どことなく優しさを感じる声で話しかけられた……憐れまれてる?
団長「大丈夫よ!バッチリ似合う衣装選んであげるからね!」
なんか、不安しかないんだけど!?
勿論男用ですよね!?
団長「さぁ、他のメンバーは各自持ち場について!バックダンサーチームは渡したノート見て練習!裏方要員のメンバーは男女に分かれて採寸!!女子は別室でYさんの採寸ね!A君の方は申し訳ないけどココでお願いね!行動開始!」
なーんか、イヤな予感しかしないなぁ……
Yさんと女子数人が教室を出て行く
俺の元へ来たのは、昨日発言した細長い男子くんだった
「あの、よろしくお願いします」
俺「こちらこそ、よろしく」
とりあえず握手をと、手を伸ばすと
「はい、そのままジッとしててください」
ポケットからメジャーを出して腕の長さを測り出した!?
俺「えっと、君は」
誰なの?何者なの?
「動かないでください!」
えぇ……
俺「ごめん」
ジッとしてると、今度は背後に回って肩幅を測る
団長「やってるわね!」
おお、団長さん!
助けて!
「団長さん。衣装の件なんですけど」
身体のあっちこっち測りながら、今度は何を言い出す気だ!?
団長「何かしら?」
「僕に任せてくれませんか?」
……は?
団長「勿論よ。丁度それをお願いしに来たのよ。引き受けてくれるかしら?」
どういう事!?
「はい!完璧に仕上げてみせますよ」
やる気出してるトコ申し訳ないんだけど!!
俺「説明してくれないでしょうか!?」
これ、どういう状況なの!?
団長「A君の衣装製作をT君にお願いしたのよ?」
Tっていうのか……ってそうじゃなくて!
俺「T君って何者なんですか!?衣装を作るって、そんなの間に合うんですか!?」
T「採寸さえしてしまえば……ふぅ、3日以内に出来ますよ」
やっと俺の採寸が終わったのか、シュルシュルシュル!とメジャーを巻き取る
団長「流石、家庭科部被服科唯一の男子生徒ね!」
何その肩書き!?
T「もう1人の方ですが、採寸データさえもらえれば姉さんに頼んでおきましょうか?」
お姉さん……?
団長「お姉さんも得意なの?」
T「得意と言うか、専門学校行ってますし。最近無性に何か作りたいって言ってましたから」
なんだそれ!?
団長「それは助かるわ!」
助かるんだろうけど、いいのか!?
ある意味部外者じゃん!
T「それでは姉さんに頼んでおきますね」
え、いいの?本当に?
俺「それで、衣装ってどんな感じのが」
T「それは出来てからのお楽しみですよ」
団長「それじゃT君頼んだわよ!」
それだけ言って、団長は教室を出て行った
多分、Yさんの方に向かったんだろうな
T「えーっと、布は家にあるやつを使えばいいだろ……そういえばアレどうしようなか……後で団長さんにツテが無いか聞いておかないと……」
T君は自分の世界に入ってしまい、声をかけられる雰囲気じゃなくなってしまった……
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