第245話 種目決め

6時間目、LHRの時間だ


体育祭の出場種目を決める


種目はリレーや短距離走、玉入れ等ありきたりなモノばかり

それぞれ自分の出たい競技の時に手を上げて、定員オーバーにならなければ決定

オーバーしたなら話し合いかジャンケンでメンバーを決める

特に時間もかからず終わる……はずだった


担任「あ、言い忘れていたが……今年から全員何かしらの種目に必ず出る決まりになったからな。ちゃんと手上げろよ」

……は?

え、嘘でしょ!?

体育祭って、名前持ちが複数の競技に出て注目を浴びるだけのイベントじゃないの!?

名前無しは外側から応援してるだけでいいじゃん!?

その方が盛り上がると思うんだけど!?


担任「それじゃまずは短距離100mからな」





こうして、体育祭に興味のない連中(俺含む)を混乱に陥れたまま種目決めが進んでいく


俺でも出れそうな競技あったかなぁ……いや、ない!


どうするかなぁ……あ、パン食い競争!これだ!


パン食い競争に立候補すると、同じことを考えていた奴が他にも数人いた……!?

定員1人オーバー……話し合いの余地一切なし……


よし、脱落者を1人決めようじゃないか!!!


立候補者たち「ジャン、ケン・ポン!!!」



ねぇ……そ、そんなことある?

全員がパーを出すなか、俺だけが……グーだった

まさかの1人負け……あいこも無し……

勝ったやつらが担任に報告し、俺はトボトボと席に戻る


さて、こうなったら他の競技に出るしかないわけだけど……


残る競技の内、俺でも出れそうなのは

借り物競争、かな?

もうそれ以外は、俺には荷が重すぎる……

よし、最後の種目……借り物競争に出るぞ!


そして、他の競技の選手が順調に決まり

借り物競争の立候補者が出揃った

俺を含む7人か……多いな……


担任「まだ競技決まってないやついるか?」

俺「はい」

よし、これで優先して枠に入れる!!


他「はい」×5

えぇ!?お、俺だけじゃなかったの!?


担任「よし、それじゃ6人でジャンケンしろー」

既に他の競技に出るのが決まってる奴が1人減って、残るは6人

そして、出場枠は5人……

流石に二度も同じことは起きないだろ


俺「ジャンケン!!!」

一同「ポン!!!」


今度は俺はチョキを出した

さっきはグーを出して1人負けだったからな!


同じ過ちは繰り返さない……はずだったのに……

なんで全員グー出すんだよ⁉⁉

チョキを出したまま固まる俺とグーで勝って喜ぶクラスメイト達

また俺……1人負けか……

ついてねぇ……


担任「よし、決まったな。それじゃAは、応援団な」

……応、援、団?


俺「応援団なんてありましたっけ?」

去年はなかったような……


担任「ん?ああ、新しく追加されたんだよ。どの競技にも出れない生徒が出るためにな」

まんま俺のことか!?


俺「俺1人ですか?」

まさか1人で団を名乗らないよね?


担任「このクラスからはお前だけだな。他のクラスからも何人か出るから、そのメンバーで色々決めることになる」

あ~、なるほど~……


俺「応援団って何するんですか?」


担任「応援だろ?まぁ、詳しくは来週の応援団会議に出てくれ」

はぁ……まじかぁ

よりにもよって応援団かよ……

声張り上げて、フレーフレーってか?

そういうの柄じゃないんだよなぁ……


思いの外、あっという間に種目決めは終わり

チャイムが鳴り、ちょうど6時間目が終わった


そのまま下校となり、机から筆記用具とかをカバンにしまう


D「応援団頑張れよ!」

半笑いで応援に来たD


俺「殴られたいのか?」

今はかなりヤサグレてるからな?

手加減はできないぞ?


D「おお、怖っ……ははっ、じゃまた明日な~」

自分はパン食い競争に出れるからって……Dのやつめ……



B「なぁ」

お前も笑いに来たのか⁉


俺「なんだよ」

笑いたければ笑えよ!


B「昼休みの件なんだけどさ」

ん?昼休み?


俺「なんだ?」

そういえばBから話しかけられてたような……


Y「A君、お待たせ」

Bと話していると、唐突にYさんが背後に現れた!?


俺「Yさん!?」

B「Yさん……?」


Y「君は……A君のお友達?」


B「あ、うん。君は」


Y「A君の恋人」

はぁ!?


B「は、はぁ!?」


Y「候補のYって言います。よろしくね!」

変な所で区切るなよ!!


B「候補って」


Y「A君に告白して、返事待ちなの。だから、まだ彼女ではないの」


B「A、お前……」

いや、確かに言ってることは正しいんだけど!

何か悪意を感じるのは気のせいかな?ねぇ!?


Y「A君、帰ろっ」

俺の腕をひっぱるYさん


俺「う、うん。そうだな……。それじゃ、Bまた明日な」

早口で分かれの挨拶を済ませて立ち上がる


B「あ、ああ。また明日……」


さて……

取り敢えず、教室から逃げ延びないと!!

Yさんの恋人候補バクダン発言のせいで、教室内の全員から冷たい視線が飛んできた


ほんと、女子って何考えてるのか分かんねぇーーーー!!!!





教室から逃げ出すようにして、Yさんと一緒に下校する


そして、やっぱり


ゲーセンとかに寄り道もせず、まっすぐ家に帰る


恋人候補とか言いつつ、遊んだりしないんだな……



なんか、もっとぐいぐい来る感じなのかと思ったけど

全然そんなことなかったな……


Y「A君、また明日ね」


俺「あ、うん。また明日」

Yさんと分かれ、家に帰る


また、明日も同じ感じなのか?


だとしたら……

もしかしたら、これこそが俺が望んでいた“普通”に近いのかもしれない?

なんの危険もなくて、安全で、平凡な学生生活


まぁ、多少のハプニングもあったけど……何もないと面白みも無いしな



南城さん達と一緒に行動するようになって、感覚が麻痺してたのかもな

本来の名前無しmobが送るべき日常が、コレなんじゃないか?


なら俺は、やっと平凡な日常を手に入れたってことかな


期間限定だけど……



























それから一週間ほど、同じような感じで至って平和に過ごすことができた

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