第244話 お昼と噂

とうとう昼休みになった


俺「昼休み……か」

Yさんは何考えてるんだろうな……


B「なぁ、久しぶりに一緒に」

食べようぜ、そう言おうとした瞬間


「A~!」

クラスメイトの誰かが俺を呼ぶ


俺「来たか……はーい」

Bには悪いが、先約があるんだ


B「え、おい」

俺は席を立ち、教室の入り口へ行く

そこにはもちろんYさんの姿があった


Y「ふふ、約束通り来たよ」


俺「うん。……本当にココで食べるの?」

食堂とか、他にもいくらでも場所はあるでしょ?


Y「うん。もちろん」

そこまで言うなら、しかたないか


俺「それじゃ、俺んとこで」

自分の席の所へ案内する

空気を読んでBは離れてくれている


俺「ここが俺の席。前の席の人は食堂行ってるから、そこ座って大丈夫だよ」

Yさんに席に座るように言い、自分も着席する


Y「うん。それじゃ食べよっか」

小さなお弁当を取り出すYさん

俺もカバンから弁当を取り出す

そのまま食事を始めようとした時、違和感に気付いた

教室が異様に静かすぎる……

恐る恐る見回してみると、こっちを見てコソコソと話すクラスメイトが沢山いた


俺「いただきます……」

なんか久しぶりで、かえって新鮮な気持ちだな

この針のむしろ感!

Yさんは感じないのかなぁ……平然と食べてるし


気まずい空気を感じつつ俺も弁当に手をつける

うん、弁当はいつも通り美味しいなぁ……母さん、ありがと


Y「ねぇ」

さっきまで全然喋る気配のなかったYさんが声をかけてきた


俺「ん?」

もぐもぐ


Y「南城さんと堀北さんは?来た時居なかったけど」

え?


俺「多分食堂じゃないかな?」

元々俺が教室で弁当食べてたから、二人も一緒に教室で食べてただけだし


Y「ふ~ん、いないんだ」

なんか、残念そう……?

二人がいない方が良いんじゃないのか?


俺「二人に何か用だった?」

来た目的は俺じゃなくて南城さん達だった、とか?


Y「ううん。ただちょっと気になっただけ」

そ、そうなのか……?


俺「えっと、俺に何か聞きたい事あるんだっけ?」

朝、そんなこと言ってたよな


Y「うん。えっと、前に聞いた噂の真偽とか聞きたいんだけど良いかな?」

噂の真偽、か……どんな噂だ?


俺「うん。なんでも聞いて」

よくある噂だと

俺が南城さん達の弱みを握ってるとか

そういうった根も葉もない噂なんだけど


Y「A君て、男の子が好きなの?」

……それ、本当に噂になってるの!?


俺「そんな事はないよ。俺は女の子が好きだよ」

男の娘は、まぁアリだと思うけど


Y「そうなんだ。それじゃ次ね。A君の作るクッキーが絶品って聞いたんだけど、本当?」

絶品かどうかは分からないけど……


俺「それなりに美味しく作れる……かな。絶品とまでは言えないと思うよ」

絶品って言うのは仁科さんの作るお菓子だよ


Y「へぇ、そっか。今度食べてみたいなぁ」

御所望とあらば


俺「それじゃ、近いうちに作ってくるよ」

作り慣れたやつなら、そんなに時間もかからないし


Y「え、いいの?やった!」

そんなに喜ぶことか?


Y「それじゃ、次ね。四季島君と犬猿の仲って本当?」

犬猿の仲?


俺「そんな事はないよ」

普通だよ、普通

向こうはどう思ってるか、知らないけどさ


Y「へぇ、そうなんだ。それじゃあ次ね。今年入院したって本当?」

あ~、うん……


俺「それは、本当だよ。でも、今は元気だから」

心配いらないよ


Y「そうなんだ。えっと、あとは……」

え、まだあるの?

どんだけ噂あるんだよ……


Y「あ、そうそう!A君てさ、名前持ちネームドの事嫌いなの?」

え?

なんで、そんな噂が?


俺「いや、嫌いじゃないよ」

今はね



なんで……俺が名前持ちが嫌いだなんて噂が流れてたんだ?

確かに前までは、好きじゃなかった……

でも、それを他人に言ったことはなかったはずだし

なんか、おかしくないか……?

周りからは、そう見えてた……とか?

だとしたら、真逆のハーレムだとかの噂が目立つのはなんでだ?


Y「そっか。色々答えてくれてありがとね!殆どの噂は、嘘ってことなんだね~」


俺「あ、うん」

Yさん、噂を集めるのが上手いのか?


Y「あ、そうそう。体育祭、楽しみだね」


俺「そ、そうだね……」

噂の真偽、という質問攻めが終わると特に取り留めもない世間話に終始した

そして、Yさんは会話しながらもちゃんとお弁当を食べていて昼休みが終わる前に教室から出て行った


俺は残った数口の弁当を食べながら、Yさんの聞きたかった事を考えた

一体、Yさんは何が聞きたかったんだ?

噂の真偽なんて、大して重要じゃなさそうだし


やっぱり、本当は南城さん達に何か話しがあったんじゃないかな?

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