第237話 告白ー1

教室に戻ると、俺の机の上には花瓶と花が置いてあり

いつ用意したのか、俺の写真が入った写真立てに黒い帯が掛けてある


ここまで完璧に用意されたら、寧ろ尊敬できるよ


さて、一先ず花瓶は窓際に移動して……写真はどうするかなぁ

とりあえず、カバンにしまって持ち主が名乗り出れば返そうかな


さて、次の授業は何だったかな……






3時間目の授業と4時間目の授業は、何事もなく終わった

宿題を提出して、夏休み前の復習を少しして新しいところを習う


そして、昼休み……

南城さんと堀北さんと一緒に弁当を食べる


何とかして、二人から隠れて……隠れる必要ってあるのか?

なんか、ラブレターを貰うのも差出人に会うのも否定的じゃないよね?

軽い感じで言ってみようかな


俺「あのさ、実はもう1通貰ってたんだよね~」


南城&堀北「え⁉」

あれ?


俺「その手紙にさ、昼休みに来てほしいって書いてたから……今から行ってくるね」

じゃ、行ってきまーす


南城「え?え?え?」

堀北「そ、そう……」

二人とも、少しだけ驚いてるなぁ

帰ってきたら、ちゃんと説明しないとな




教室に南城さんと堀北さんを残して、俺は旧校舎へ向かった



手紙を読み直して場所を確認する


旧校舎の2階と3階の間の踊り場で待ってます。


ふむ、また珍しい場所を指定してきたなぁ


階段を上り、目的地が見えると……女子がいた!?

嘘!?マジで!?

半分以上、イタズラだと思ってた……


俺「えっと……」

どうしよ!

こういう時って何て声かけたらいいの!?


「あ、来てくれたんだ。よかった」

うん、今の言葉で確実になった

この人があの怖いラブレターの差出人だ


えっと……たしか……

「Hさん?」


H「うん。私の事知ってたんだ?」

そりゃ、クラスメイトだし


俺「まぁ、一応は」

辛うじてだけど、知ってはいたよ


H「ふ~ん。よかった。自己紹介からしなきゃダメかなって少し不安だったんだよね」

他のクラスの人は知らないから、そうしてもらうしかないけど……


俺「それで」

あのお手紙ラブレターについて何だけど


H「えっと、手紙読んでくれたんだよね?」


俺「うん」

読んだよ、怖かったけどね!


H「私の気持ちは書いた通りだよ。君が好き」

それ、演技じゃないよね?


俺「なんで、俺を?」


H「う~ん……、何か気付いたら好きになってたんだよね。ハッキリ意識したのは夏休み入ってから、かな」

夏休みに入ってから!?

俺と接点も何もないのに!?

どういう事!?


H「夏休みに入ってから、気がつくとA君の事考えちゃう事が増えてね……なんとな~く会いたいなぁって、自然に思ったんだよ。それでB君にA君について聞いたんだけど、詳しくは知らないって言われちゃって」

そんな事があったのか


H「A君の事をもっと知りたいって、強く思うようになってね。それがどんどん強くなって……ああ、私A君に恋してるんだって分かったんだよ」

そ、そっか


俺「あのさ……失礼なのは百も承知で聞きたいんだけど」


H「何?」


俺「俺が南城さんや堀北さんにしてる事については、どう思ってるの?」

優柔不断、名前持ちを侍らせてる

そんな風に見られてると思ってたんだけど


H「どうって、別に何とも……ううん、嘘はダメだよね。ハッキリ言ってあまり良くは思ってないよ。だって、南城さん達があんなに想ってくれてるのに応えてあげないんだもんね」

そ、そう思うよね……

じゃあ、なんでそんな俺に告白なんてしたんだ?


H「あの南城さん達すら落とせない男子が、私なんかを見てくれるわけないって……そう思っちゃうもんね」

そういう方向!?


俺「あ、いや、えっと」

南城さん達と距離があったのは確かだけど

寧ろ、それは相手が名前持ちだからだったんだけど


H「A君の好みが実は男子だった!?とか、噂もあるくらいだし」

ホモ疑惑!?


俺「違うよ!?」


H「知ってるよ。そんな噂信じてたら、告白なんてしないよ」

それもそうか


H「それじゃ、次は私からも1つ良いかな?」

なんだろ?


俺「うん?」


H「私は、A君の彼女になれるかな?」

なれる、かな……?

してほしい、じゃなくて?


俺「それって、どういう」


H「そのままの意味だよ。この先、私は努力次第で彼女になれるのかってこと」

そんな、未来の事は分からない


俺「…………」

だけど


H「やっぱり、ね……」


俺「ごめん……」

もう、俺の心には空いてるスペースはないんだ

南城さん、堀北さん、仁科さん……

この3人の誰かを選ぶ、そう決めたから

これが傲慢だと言われても……俺がそう決めたから


H「出遅れたのが一番の敗因かなぁ……そっかぁ、やっぱダメかぁ……うん、分かってた……分かってたけど、やっぱつらいな……A君、こんなとこ、呼び出して、ごめんね……もう教室戻っていいよ……私は、少し気持ちを落ち着けてから戻る、から」

背中を見せて、会話を終わらせたHさん


俺には、何も声をかける資格はない

震えるHさんを一人残して、俺は教室へ走った




まさか、俺が告白を断る日がくるとはなぁ……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る