第228話 お友達

まさか、正真正銘の本当にお嬢様だったなんてな……


東雲さんのおかげでモデルの件が一件落着し、安心して皆の元へ戻る途中


東雲「ふふ……ね?私だってやればできるのよ?」

そう話しかけてきた東雲さんは、目を細め口角がクイっと上がっていた

悪魔めいたていた……初めて見るタイプの笑顔だった


俺「あ…うん。ありがと。助かったよ」

一瞬見せた悪魔めいた笑顔はすぐに消えて、営業スマイル仮面が張り付いていた


東雲「やっと恩返しができたわ」

俺に、恩返し?

え?何かしたっけ?


俺「いや、寧ろ恩返ししないといけないのは俺の方だよ。何か俺にできる範囲で恩返しさせてほしいな」

この貸し借りは危険だと、そんな気がした

できるならこの場で借りは返しておきたい……


東雲「ほんと、優しいのね……もっと早く君と知り合いたかったわ」

な、何言ってんだ?


東雲「一つ、お願い聞いてくれるかしら?」

無理のない範囲って条件だったら、なんでもいいんだけど……


俺「何かな?」

怖いなぁ……何言われるんだろ……


東雲「そんなに身構えなくても大丈夫よ。無理なら普通に断ってくれていいの」

そ、それ本当?

本当に断ってもいいの?


東雲「私と……お友達になってほしいのよ」

お…と…も…だ…ち?

mobが?東雲さんアイドルの?友達?


俺「なんで?」


東雲「お友達になるのに理由って必要かしら?」

あ~……理由はいらないかもしれないけど

でも、不思議ではあるよね!?


俺「いや、え、でも……」

怖いんだけど!?


江藤「お嬢様、やはり一般の方とは価値観が合わないのでは?」

メイドさん!?


東雲「でも、彼ならなれると思うのよ。……私のお友達に」

どういう事!?


江藤「しかし」

う~ん……

江藤さんは俺と東雲さんが友達になるのは反対なのかな


東雲「それを決めるのは、私たちじゃないくて彼よ」

マジで?


俺「……えっと、普通の友達でいいんだよね?」

お嬢様だと友達の定義って変わったりするのかな


東雲「そう!寧ろそれが良いのよ!のお友達がほしいの!」

そ、そうなのか


俺「じゃ、じゃあ……これから、よろしく」

握手でもしとけばいいのかな?


東雲「うん!」

ぎゅっと俺の手を握り返してくる

それを見て江藤さんは、複雑そうな顔をする

何か懸念するような事でもあるのかな……

あ、俺が男だから?

でも、南城さん達の事知ってるんだし……変な心配はいらないと思うんだけどな


俺「…………そろそろ、離してくれない?」

いつまで握ってるつもりなの?


東雲「あ、ごめんね。つい嬉しくて……」

そんなに嬉しいことか?

お嬢様って、よくわからないな


俺「それじゃ、みんなのトコ戻ろうか」

早く戻って安心させてあげないと


妹「おにぃ、私がいるの忘れてない?」

何言ってんだ?


俺「忘れるわけないだろ。それより、お前も東雲さんにちゃんとお礼言っとけ」

東雲さんのお蔭でモデルにならずにすんだんだからな

やっぱ、俺は……所詮名前無しmobだよな

大切な妹一人満足に守れない

なんて無力なんだろうな


妹「むぅ……東雲さん、ありがとうございました」

ペコリと頭を下げる


東雲「いいのよ、お友達の為だもの。これくらい朝飯前よ」

よしよしと妹の頭を撫でる東雲さん

微笑ましいなぁ





こうして俺は、東雲さんと友達になったのでした。

みんな……怒ったりしない、よね?

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