第229話 友達とは

みんなの所へ到着するちょっと手前で、江藤さんが俺に声をかけてきた


江藤「少々、お時間よろしいでしょうか?」


俺「俺ですか?」

なんだ?


江藤「はい。貴方には伺っておきたい事がございます」

なんだろ……変なことじゃなきゃいいけど

この人、発想あたまちょっとおかしいからなぁ


東雲「江藤、どうかした?」


江藤「お嬢様、申し訳ないのですが先に戻っていてもらえますか?」

東雲さんには聞かれたくない事かぁ

ますますイヤな予感がする……


東雲「どうしたの?」

そりゃ不思議だよなぁ

俺も不思議だよ


江藤「この方と少々お話しをしたいのです」

俺はあんまり話したくないんだけど……


東雲「それは、何故?」

なんだろ……?

江藤さんの行動を警戒してるような?


江藤「それは……」

言えないことなの!?


東雲「はぁ~、分かったわ。早く済ませなさいよ?」

ねぇ!?

済ませるって何を!?


江藤「はい」

いやいやいや!!


東雲「妹ちゃん、少しだけお兄さんを借りるわね」

借り物競争かよ!?


江藤「申し訳ございません」


妹「おにぃ……」

あ~、はいはい

これも断れないパターンね

名前持ちと関わるとよくある回避不可のイベントだ


俺「大丈夫だから。東雲さんと皆のトコ戻っててくれるか」

頭を撫でながら言い含める


妹「でも……」

不安がるなとは言えないけど、今回は危険なことは殆どないはずだ


俺「大丈夫だよ。ちょっと話しするだけ、なんだよな?」


江藤「はい。一切危害を加えることはありません。もし危険があれば必ず私がお守りします」

そこまで言ってくれるなら、まぁ安心かな


俺「だから、安心して先に戻っててくれ。早く戻らないと皆が心配するからさ」

南城さん辺りが騒ぐ前に戻っててくれ


妹「うん、分かった。早く戻ってきてね?」

よしよし、納得してくれたな


俺「もちろんだよ。早く皆と遊びたいからな」

もうかなり時間取られちゃったからな

多分、そろそろ帰るくらいだろうし

その前にもう一遊びしないと!


妹「じゃ、待ってるね!」

ああ、そんなに待たせるつもりはないけどな


東雲「行きましょ」



東雲さんと妹が皆の待ってる所へ歩いていく

それを見送って、江藤さんに向き直る


俺「で、話しってのはなんですか?」

どうせ、名前無しは東雲さんの友達に相応しくないとか

そんな話だろ


江藤「貴方は、お嬢様の友達になってどうするつもりですか?」

どうするって……何?


俺「それは、どういう意味ですか?」

質問の意図が分からないんだけど……


江藤「正直にお答えください。お嬢様の何を狙っているのですか?」

狙ってる……?

え?マジで意味わかんないんだけど?


江藤「お金ですか?コネですか?……それとも体ですか?」

はぁ!?

何言ってんの!?


俺「いやいやいや!!そんなの興味ないですよ!?」

何でそんな事聞くんだ⁉


江藤「正直にお答えくださいと、申し上げたはずです!貴方が望む物は私が用意します!遠慮せず言ってください!!そしてお嬢様を傷付ける前に……消えてください」

もしかして……こんな事、毎回聞いてんのか?

そんな事してたら……


俺「それは、東雲さんの意思ですか?」

もしかすると、東雲さんが江藤さんに言わせてる可能性もあるよな

お嬢様でアイドルだと、用心のし過ぎって事はないからな……


江藤「違います。コレは、私の意思で聞いております。お嬢様を守る為には、あらゆる手段を講じる必要があるのです」

そっか

江藤さんの独断って事か


俺「今までもこんな質問してたんですか?」


江藤「はい。お嬢様に寂しい思いをさせてしまっているのは理解してます。ですが、私はお嬢様を守らないといけませんので」

それで、友達になってほしいなんて子供じみたお願い言ってきたんだな


俺「残念ですけど、俺は東雲さんの友達を辞めるつもりはないですよ」

ぼっちの辛さは、俺だって知ってるからな……


江藤「何故です!?」

何故かって……当たり前だろ


俺「俺は友達に金もコネも、ましてや体を要求するような事はありえない。そんなものは友達とは言わない」

俺は……

お嬢様にお金をたかるほど、金欠でも散財癖もない

地位も名誉も興味ないから、コネも全く魅力はない

そして

体が目当てだと思われたなら、心外だって説教してやる!


江藤「では……何の見返りも求めたい、と?」

それは……違うな


俺「見返りとしてほしいのは、お互いが楽しいと思える時間です。俺にとって友達ってのは、そういう存在です」

それ以外の何を望むって言うんだよ


江藤「楽しいと思える、時間……本当にそれだけ、ですか?」

当たり前だろ


俺「むしろそれ以外はいらないですよ。今までの人がどんな人だったのかは知りませんけど、少なくとも俺の考えはそういう感じです」

だから、友達を辞めるとした


俺「東雲さんが俺を嫌いにでもならない限り、ずっと友達でいますよ」

残念でした!!


江藤「それが本心かどうか……私のは判別できません」

そりゃ、そうだろうよ


江藤「ですので、保留とします。貴方が自身で言った通りかどうか、しっかりと見極めさせてもらいます」

好きにすればいいよ


俺「それで話しは終わりですか?」

くだらない話だったな


江藤「はい」


俺「それじゃ、戻りましょう。皆が待ってますから」



まさかの内容だったけど、大して難しい話じゃなくて良かったな

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