第218話 妹の特技?

会場の空気が落ち着いている今がチャンスとばかりに張り切って仕切り直す司会者さんが、次の参加者の妹に話しかける


「では、お次の方ですね!えー、お兄さんを守る健気な妹さんの登場です!どんな特技を披露してくれるのでしょう!?」

会場の空気、主導権を取り戻すために必死だな


妹「えっと……」

にしても、妹はどうするつもりなんだろうな

南城さんはダンス、堀北さんはアカペラ、仁科さんは歌と踊り

それに対抗できるような特技なんて、ないだろ?

他の参加者だって、3人の特技披露で負け確定みたいな雰囲気だし


妹「歌い、ます……」

この流れで一番キツイ選択だな


「歌、ですね!?わかりました!音源を用意しますか?」


妹「はい。えっと、曲は……」

司会者へ妹が提示した曲は、この場にいる人の大半は知らないだろう……アニソンだ

アイドル感も何もないガッツリ系の主題歌だ


「本当にその曲でいいんですか?」

そりゃ勝負を捨てるようなもんだと思うよな

一般的な知名度なんて全くない曲だ


妹「はい。できますか?」


「えーっと、はい。音源の用意は問題ありませんが……」

そりゃ、会場がぽかーんとなるからな……司会者的にはイヤだよな

自分も知らない選曲なんてされるのは


妹「それじゃ、お願いします」

でも、妹は変えるつもりはないみたいだ


「わかりました!では曲の準備をします」

少しすると司会者が準備ができたと妹に告げる


イントロが流れだすが、一様に首を傾げる観客たち

そりゃ、聞いたことないよな


でも、名曲なんだぞ?

作品の世界観にピッタリで、OP映像も合わせて視聴者からは高評価なんだ

まぁ、知らない人からしたら関係無いけどさ


妹が歌いだすけど、ほぼ全ての人が一切興味が無いといった感じで聞いている


何の異変もなく、平和に特技披露が終わる

一応まばらな拍手があったが、明らかに前3人の時より盛り下がっている


「はい!ありがとうございました!!えぇ、では次の準備に入りますので10分ほど休憩となります!ごゆっくりお寛ぎください!」

ペコリとお辞儀をしてステージから消える司会者

参加者たちは裏側に専用スペースがあるらしく、そっちへ集まっている


休憩時間に入り、飲み物や食べ物を買いに行く人や、トイレに向かう人が席を離れていく


俺「さて、俺もトイレ行ってくるか」

次のステージの途中で行きたくなったら困るからな……


席を離れてトイレに行って、その帰りに売店で飲み物を買う


そして戻ってくると、見覚えのある後ろ姿が見えた……


何でここにいるんだよ!!


俺「東雲さん?」


東雲「あら?奇遇ね」

ホントにね!?

いくら同じ施設内にいるからって、そう何度も何度も会うか!?


俺「こんな所で何してるの?」

泳ぎの練習はどうしたんだ?


東雲「プールの監視員から入るなって怒られたの。酷いと思わない?」

そりゃ、また何やらかしたんだ?


俺「何があったの?」

普通そんな事言わないだろ……


東雲「溺れすぎだって……しょうがないじゃない!泳げないんだから!」

う~ん……目の前で何度も何度も溺れる人がいたら、心配になるな


俺「そっか、それは災難だったね」

監視員さんが


東雲「そんな事より、アンタ一人で何してるの?」


俺「あ~……みんなは今違う所にいるんだよ」


東雲「まさか……アンタ、振られたの?」

それをどんなに願ったことか……


俺「残念ながら違うよ」

説明するしかないか……


東雲「そう……な~んだ、振られたなら私が拾ってあげようと思ったのに」

それは絶対に嫌だな


俺「みんな、イベントに参加してるんだよ」

ステージの方を指さす


東雲「イベント……?」


江藤「お嬢様、所謂ミスコンだと思われます」

そうそう


東雲「へぇ、面白そうね」

え?


俺「もう参加者、閉め切られてるよ」

多分だけど


東雲「しないわよ!現役アイドルが素人のコンテストに参加なんて、できるわけないでしょ!?」

あ、そっか

アイドルなんだっけか


俺「そっかそっか」

忘れてたわ


江藤「お嬢様。監視員の隙を突くために、一度ここで様子を見るのはどうでしょう?」


東雲「そうね。そうしましょう」





俺の隣に東雲さんが来て、次のステージが始まった

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