第212話 特製ミニパフェ

東雲「こんな所にいたのね。さ、あの子達の所に案内して」

まさか、まだ泳げるようになろう!なんて無謀な事考えてるわけじゃないよな?


東雲「どうしたの?」

案内したくないなぁ


俺「まさか、まだやるの?」


東雲「練習のことなら、江藤が復活したからもう大丈夫よ。あの子達にお礼をと思ったのよ」

そっか

元々はメイドさんが教えることだもんな


俺「そういう事なら」

いいよね?と仁科さんの顔を見る


仁科「うん。それじゃついて来て」


東雲「ありがとう」



東雲さんとメイドの江藤さんを連れて南城さん達の元へ向かう



フードコートですぐに南城さんを見つけて、無事合流する


俺「お待たせ」


南城「あ、やっと戻って……何でその子がいるの!?」


東雲「さっきぶりね」


堀北「練習したいなら後にしてちょうだい。私達これから休憩なのよ」


東雲「違うわ。もう練習はいいの、江藤とするから」

江藤さんが頭を下げる


東雲「さっきのお礼をしに来たの。私にできる事なら何でもいいわ」

おいおい、そんな事言っていいのかよ!?

江藤さんは、何も反応してない……?


南城「う~ん、そう言われても」

堀北「お礼されるほどのことなんてしてないから」

妹「とりあえず、おにぃに近寄らなでくれるなら」

俺「特にないよなぁ」


江藤「お嬢様、どうされますか?」


東雲「う~ん……」

いらないって言ってんだから、いいじゃん


東雲「でも……」

別にそれを咎めるような人、ここにはいないんだけどな

なんかしないと気が済まないって感じなかな


仁科「じゃあ、私から一ついいかな?」


東雲「ええ!もちろんよ」

仁科さん、何をしてもらうつもりなんだ?


仁科「私達、これからお菓子食べるんだけど」


東雲「分かったわ!飲み物ね!すぐに買ってくるわ!」

パシリ!?


仁科「違う違う!一緒に食べましょう」

は?


東雲「え……?どういう事?」


仁科「どういう事も何も、そのままだよ。もちろん断らないよね?」


東雲「でも、それじゃ」

気が済まない、治まらないよなぁ


仁科「何でも言う事聞くって言ったよね?」


東雲「言ったけど……」


仁科「あっ……、いいよね?勝手に決めちゃったけど」


今更になってみんなに確認を取る仁科さんに

南城「うん、いいよ」

堀北「反対なんて誰も言わないわよ」

妹「それじゃ決まりですね。早くお菓子出してください」


と、誰も反対せずお礼の内容が決定した


東雲「一緒に食べればいいの?」


仁科「そうだよ。あ、何かアレルギーとかある?」


江藤「いえ、お嬢様は食べ物のアレルギーは持っていません」


仁科「そっか、よかったぁ。もし食べて体調悪くなったら大変だからね」


南城「ほら。そんなトコ立ってないでイス持ってきて座りなよ」

丸いテーブルを二つくっつけて、そこを囲むように

俺、妹、南城さん、堀北さん、仁科さん、東雲さんと座る

江藤さんは、何故か東雲さんの後ろで立ったままだった


俺「あの、座らないんですか?」

近くに立たれると、凄い気になるんだけど……


江藤「はい。私はメイドですので」


俺「そ、そうですか」

これ、絶対に座らないだろうな……


仁科「それじゃ、お披露目するよー!私の新作スイーツ!」

保冷バッグから取り出されてたのは、カップに入ったカラフルなお菓子だった


仁科「カラフルムースと季節のフルーツのミニパフェだよ」


テーブルに並べられる小さなプリンのカップに入った色とりどりのパフェ

どうやってそんなにカラフルなムース作ったんだろ……


南城「美味しそう!!」

妹「ムース!」

堀北「キレイね」


東雲「これ、手作り……なの?」

江藤「かなりの技量の持ち主ですね……まさか職人プロ?」


仁科「見た目も味もしっかりと!がコンセプトだよ。ご賞味あれ!」

スパッ!!と凄い速さでパフェを取る妹……

その手には、チョコレートムースの入ったパフェが握られていた

確かに、他にはチョコのやつは無さそうだけど……ちょっと意地汚いんじゃないか?


……ん?

ちょっと待って、アレもアレも、アレも……全部違う!?

フルーツとムースの組み合わせが、全部違うのか⁉


どんだけ手間かけてんだよ!?


仁科「ふふ、君は気付いたみたいね」


俺「うん……凄いよ、仁科さん」

素直に尊敬する


仁科「えへへ、褒められちゃった」

俺じゃ、こんな面倒な真似できないよ


俺「コレ、また発表会とかに出すの?」


仁科「え?出さないよ。コレは完全に趣味のものだからね!」

マジかぁ……売り物レベルのコレが趣味かよ


東雲「コレが、趣味……?江藤、作れる?」

信じられないのも無理はないよ、うん


江藤「申し訳ございません。わたくしには出来かねます」

まぁ、出来ないよなぁ……


東雲「そう、江藤でも作れないのね……。仁科さんと言ったかしら」


仁科「うん?あ、もしかして口に合わなかった?」


東雲「いいえ、とっっっても美味しいわ。是非ウチで雇いたいくらいよ」


仁科「ごめんね。私まだそういうの興味ないんだよね。でも、気に入ってくれてありがとね」

勿体ない気も、少しだけするな……これだけの才能があって

このお嬢様に雇われたら、好きなだけお菓子作り放題な気もするんだけど


東雲「そう。残念ね」

あれ?

案外あっさり引き下がるんだ


仁科「ほら、もっと食べて食べて!残ったら捨てる事になっちゃうからね!」

そう言って、俺と東雲さんの前にカップが置かれる


東雲さんの前には真っ赤なムースのカップが

俺の前には淡いピンク色のムースのカップが置かれた


捨てるのは勿体ないし、食べるか!


スプーンでムースを掬い、口に運ぶ


甘い香りと、少しの酸味……これイチゴだな


ほんと……美味いなぁ……

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