第213話 パフェの味

仁科さん特製のミニパフェを食べ終えると

仁科「どうだった?」


南城「美味しかったよ!」

堀北「ご馳走様」

妹「もっと食べたい!」


うん、確かに美味かった!

でも、仁科さんが今聞いてるのは……

俺「イチゴのムース美味かったよ。でも、俺としてはチョコシロップよりも別のサッパリ系の方が好きかな」


仁科「へへ……、うん。参考にするね」

チョコよりもサッパリになるとしたら、何が良いかな

同じベリー系でブルーベリーか、それともオレンジとかの柑橘系か


東雲「なるほど、そういう事ね。私も感想言っていいかな?」

ほう

東雲さんは、仁科さんがどういう感想を聞きたいか理解したみたいだな


仁科「うん。聞かせて!」

わくわくしてるなぁ


東雲「私が食べたのは、ブドウを使ったムースだったのだけど」

あの、紫色のやつか


仁科「うん。ブドウの果汁を使って味付けして、色は皮から抽出したよ」

そんな事までしてるのか……

スゲーな


東雲「あれは、そんなに美味しくなかったわ」

んな!?

どういう事だよ⁉


仁科「そっか……」

落ち込んでるな……

滅多にと言うか、今まで言われたこと無いだろうな


東雲「もし、あのムースを今後も使うなら着色は別の品種を使った方がいいわ。皮から微かに雑味が出てるの、それが邪魔してムースの味をランクダウンさせてる。それと」

まだあるのかよ!?


東雲「他の物はどれも一級品レベルの味だったわ」

なんだよ……最後は褒めるのかよ!


仁科「まさか、私のお菓子初めて食べてそんな感想言うなんて……東雲さんって案外良い人なんだね」


東雲「ふん、私は東雲アゲハよ。当然でしょ?」

江藤「お嬢様」


東雲「何?しっかりと感想言っただけよ?」

そんな動揺しなくてもいいんじゃ……


江藤「言葉選びにもっと気を使いなさいと、何度も言ってるじゃないですか」

怒られてる……


東雲「うっ……だって、正直に言っただけなのに」


江藤「確かに正直な事は美徳ですが、相手を思いやり言葉を選べないと傷つけるだけです。今回は良かったものの、別の機会、別の人に同じ様に振る舞えば相手を傷付けうる言葉だと言っているのです」


東雲「はい……ごめんなさい。仁科さんもごめんね」


仁科「私、正直に言ってくれて嬉しいよ」

東雲さんは良い人だけど、仁科さんって普通に良い人だよな


東雲「うん。どれも美味しかったのは本当だからね!いつも食べてる物よりずっと優しい味だったから……」

優しい味……?

いつもは濃い目の味付けが多いのか?


仁科「ふふ、ありがとね。優しい味なのは、私がとっておきの隠し味入れてるからだよ」

隠し味か……秘伝の調味料とか、稀少な材料とかかな


東雲「隠し味?」

舌の肥えてそうな東雲さんも気付かないのか

一体なんだ?


仁科「そう。愛情って言う最高の隠し味だよ」

あ、愛情が隠し味か……

仁科さん、本気で言ってそう?


東雲「愛情って……誰に?」

もちろん……仁科さんが指さすのは俺


仁科「彼だよ」


東雲「え?えっ?南城さんあっちの子の彼氏じゃないの?」

違いまーす……


仁科「誰がそんな事言ったの!?」

えーっと……?


東雲「誰って、南城さんあの子と合った時否定しなかったわよ?」

そうえいば……

ごたごたしててちゃんと違うって言ってなかったか……?


仁科「もう、千秋ちゃんは……」


東雲「え?つまりどういう事?」

なんか、混乱してるな……


仁科「私達は全員恋敵ライバルなんだよ。彼を狙ってるの」

全員に妹が混じってるのは……何かの間違いだよな?


東雲「はぁ!?な、なんでじゃあ仲良く遊んでんの!?」


仁科「そんなの、皆友達だし一緒に遊ぶよ。抜け駆け禁止の約束もあるし」

もう、友達のままでいてくれないかなぁ


東雲「そんなの……アリなの?ねぇ、江藤!私上手く理解できないんだけど⁉」


江藤「お嬢様……誠に残念でございますが、私も同意見でございます」


東雲「そう、江藤も分からないのね……って、残念ってどういう意味!?」


江藤「そのままの意味でございます。お嬢様と同レベルでは……教育係失格ですから」

何か、不自然な間があったな……


東雲「そ、そういう意味ね」

間に気付いてないのか……もしかして、鈍いんじゃないか?


江藤「はい」


東雲「アナタ達の現状が私達には理解不能だというのは、この際いいわ……でも一つだけ確認させて」

どうしたんだ?


仁科「なに?」


東雲「その名前無しmob男子の何処にそれだけの魅力があるの?」

あ~……また面倒なことを……


仁科「魅力?そんなの優しいところだよ!」

南城「カッコいいよね!」

堀北「器の大きさが素敵よね」

妹「私の事大事に思ってくれてるとこかな」


東雲「え?え?え?」

ほらぁ!!

全員話しに加わってきた!!

もう収拾つかないよ!?


江藤「お嬢様、落ち着いてください」




もう俺、知らないからね!?

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