第176話 妹はすぐに見つかったよ

まずは、妹に電話だな


呼び出し音が鳴る……しかし、電話に出ない

ったく、スマホ持ってる意味ないじゃん


俺「しょうがない、南城さん達にメッセージ送っておくか。きっと見つけてくれるだろ」

えーっと……


妹が迷子になった

見かけたら保護よろしく


っと、これでオッケーかな


さて、そんな遠くへ行ってはないだろうし

この辺を重点的に探してみるか


まずはその場で周囲を見渡してみる、しかし妹は見つからない


どっちに探しに行くかな……右か、左か


う~~~ん……右!

ある程度探して見つからなければ戻ってきて左を探そう


周りを見渡しながら進んで行くと

「……てっ……」

と妹の声が聞こえてきた

珍しく正解だった!

声の聞こえた方に小走りで向かう




はっきりと聞こえてきた妹の声は

「止めて!もう!ヤダ!離して!!」

だった……

これ、トラブル発生してるよなぁ

兎に角助けに行かなくちゃな


俺「おーい」

大きめの声で妹に声をかける


妹「あ、おにぃ!!」

俺が声をかけて出来た隙を突いて、逃げ出してくる妹

妹に絡んでいたのは、大学生風の男3人だった


俺「妹がお世話になりました。ではこれで」

年上だし複数人だし

こんなのさっさと逃げるに限る!


男1「待てよ。お前その子の何?カレシ?」

兄だよ!

“妹が”って言っただろ⁉


俺「兄ですが、何か?」


男2「マジウケる!え?何?兄妹で祭り来てんの?恥ずかしくないの?」

何がウケルんだ⁉


俺「別に恥ずかしくないですよ」

話しは終わった!

さぁ退散だ!


男3「まぁ待てって。なぁお兄ちゃんさ。妹なんかより、そこらの女ナンパした方が絶対楽しいって。妹ちゃんは俺たちに任せて、遊んできなよ」

あ~……この人達ダメな人だ

ホント、何でこんなのに絡まれるかなぁ


俺「ナンパとか興味ないんで、もういいですか?」

これ以上話しかけてきたらキレそう


男1「おめぇ、邪魔だって言ってんの。分かんねぇの?」

むしろお前らが邪魔なんだよ!!


俺「……いい加減にしてください。警察呼びますよ?」


男2「ケーサツ?俺達なんか罪犯したか?あ?」

うっっっっっっっっっっっっっっざーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!


俺「はぁ……」

会話が成立しない人って、いるもんだなぁ


今までのやり取りを震えながら俺にしがみ付いて見守る妹

それを守らずに兄なんて名乗れないだろ


俺「それじゃ、警察呼びますね」

ポケットからスマホを取り出して110番にかける

顔の横にスマホを持ってきた瞬間、男の一人が突き出した拳でスマホが遥か後方へ吹っ飛んでいった

あれ……買い直したばっかりなのに……!

なんて事してくれてんだよぉーーーーーー!!


男3「あんま舐めた事してると、次は顔面いくぞ」

えぇ~……


男1「分かったらその子置いて、どっか行けよ」

いやいやいや

それで「はい、そうですね」とはならんだろ……

この人達って、もしかして


俺「馬鹿なんじゃね……?」


男2「あぁ?てめぇ、なんつった?」

あ、やべ……声に出てた?


男1「こいつ、シメよーぜ。大人の怖さっての教えてやんねーとなぁ!」

あ、いえ、結構でーす

って言っても無駄だよなぁ

もういっその事大声で助け呼ぶか……

でも、逃げられて後で襲われても困るしな……


「お前達、何をしている!!」

と声がした

しかし、その声の主は見当たらない!?

何処に!?


「とうっ!」

ズダンと俺たちの近くに着地する見知らぬ人

って、上から降ってきた!?

上を見ると太い枝が伸びていた……

あれから降りてきたのか⁉

何で祭りの日に木の上にいたの!?

おかしな人が増えた……?


男1「何だ、てめぇ」

まったくね!


「わた、僕の名前はジークフリート!じーくんと呼んでくれたまえ!」

やっぱ可笑しな奴だったーーーー!!

全身真っ黒な服着て、顔はマスクとズキンとお面で全く見えない

手には指先が出る手袋を付けてるし……

どっからどうみても中二病だろ!!


男2「ガキはすっこんでろ!邪魔だ、アッチ行け」


じーくん「貴様ら……さては悪人だな!」

変人なうえにバカだ……


男3「ボコられたくなければさっさと帰んな、邪魔なんだよ」


じーくん「あくまで、正義に歯向かうつもりか!ならば!!」

懐から小さな笛を出し勢いよく吹く

しかし、音は鳴らない……

ホント、お前何しに出て来たんだよ!?


男2「で?それが何だって言うんだy……ぐげぇっ」

変人じーくんに近付いた男が、突如人込みから飛び出した人物に飛び蹴りで吹っ飛ばされる

また変人増えた!?

男を蹴り飛ばしたのは、一言で表すなら……忍者だ

外国人の好きそうな、観光地でたまに見る姿


なんでココに忍者がいるのか

なんで忍者が男を蹴り飛ばしたのか


この場にいるほぼ全員が理解できていないだろう

理解しているとしたら、蹴り飛ばした張本人だけだ


男1「どっから湧いて出た!?」


忍者「拙者、仲間の危機に助けに参った次第でござる」

何言ってんのかよくわかんないけど、じーくんの仲間らしい


男3「お前ら、全員グルか」

俺達は違います!!

こんな変人の仲間にしないでください!!


忍者「ミス・ジーク。こやつ等は敵でござるか?」

ミス……って、じーくん女の子なの⁉


じーくん「ジークじゃなくてじーくんって呼んでよ、佐助くん!」

忍者の名前サスケっていうのか


佐助「お主こそ、本名呼ぶなと何度言ったら理解できる!?今の拙者は、半蔵でござる!」

サスケって本名なんだ⁉

でもってあだ名はハンゾウ……もうどっちでもいいじゃん!!


男2「ってーな!おい!もうマジで許さねぇからな!」

起き上がった男はキレて忍者、ハンゾウ君に襲い掛かる

ハンゾウ君は突っ込んでくる男をひらりと躱す

そこに男1が加勢してハンゾウ君の腕を掴む

捕まったハンゾウ君を殴ろうとする男2と男3


しかし、彼らは失念していた

この場にはもう一人変人がいた事を……


じーくん「隙ありです!」

どっから取り出したのか、水鉄砲を男2に向かって噴射する

ぱっと見普通の水鉄砲だったから油断した男2はもろに顔に液体がかかる


男2「うぐがぁあーーーーーーーーーーー目がぁ!目ぇ!」

真っ赤に染まった液体が目に入り悶え苦しむ男2

その様子を見て男3はじーくんを警戒する


男3「何しやがった!?」


じーくん「赤き月より抽出した霊薬“KPSIS・N”カプシス。エヌをお見舞いしてやったのさ!」

あの赤さ……

多分……唐辛子エキスか何かだよね

失明してなきゃいいけど……


男3「……っち、何言ってるか分かんねぇ……」

でしょうね!


男3「そこの黒いの、テメェだよ!」

黒いの呼ばわりされても反応しないじーくんに、男3もそろそろキレそうになってきている

完全に変人サイドのペースだ


男3「もし、これ以上妙な真似したら相棒を病院送りにしてやるからな」


じーくん「あい、ぼう……?」

首を傾げて

はて、何の事?

とジェスチャーする


……え?

仲間とか言ってたのに実は仲間じゃないの!?


じーくん「貴様ら程度の輩に……奴を、我が盟友をヤれるかな?」

おお、めちゃくちゃ煽ってる!?

ってことは勝算があるのか!


半蔵「いや、ちょっ!待て!早まるな!いくら忍者と言えど、殴られれば痛いし!不死身じゃないからな!」

え……っと

勝算、無いの?

実は簡単に抜け出せますとかそういうトリックは?


必死にジタバタ暴れてるハンゾウ君

秘策とか、無いっぽいね


うん……そうだ。この隙に俺達だけで逃げよう!


俺「動けるか?」

妹「うん」

俺「逃げるぞ」

妹「あの人たちは?」

俺「きっと大丈夫だ。俺達は俺達で出来ることをするんだ」

妹「出来ること?」

俺「そう。このまま此処にいても足手まといになるだけだ。だから安全なトコまで避難するんだ」

妹「うん。わかった」


そーっとそーっと、音を立てないように一歩づつ離れる


見つからなければ、大丈夫だ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る