第175話 妹と祭り

堀北さんと向かったのは、神社の鳥居のある場所だった

待っていたのは妹と南城さんの二人だ


妹「あ、おにぃー!」

俺を見つけてぶんぶん手を振る

浴衣なんだから、そんな暴れるなよ


俺「じゃ、帰るか」


妹「なんでっ!?」


俺「冗談だよ」


妹「もう!」


俺「それで、次はお前の番でいいのか?」


妹「そうだよ!先輩達に変なことされなかった?」

変な事……?


堀北「妹ちゃん⁉」

南城「してないよ!?」


俺「大丈夫だよ」


妹「そっか。なら良かった!」


堀北「妹ちゃんの中で、私たちってどう思われてるのかしらね……」

南城「変なことなんて、何もしてないのに……」

二人とも、妹がすまんな

でも、今までの行いを思い出してから言ってほしいな


俺「それで、お前はドコ行きたいんだ?」

宿題を終わらせる協力してくれたから、そのお礼も兼ねて少しくらいの我が儘なら許してやろう


妹「えっと、……りんご飴食べたい!」


俺「それじゃ買いに行くか」


妹「うん!それじゃ先輩たち、また後で!」

後で!?

もう終わりじゃないのか⁉


妹が跳ねるように歩くのを止めつつ、一緒に祭りの賑わいの中へ戻る






目当てのリンゴ飴の屋台につくと、妹が店主とジャンケンをし始めた

へぇ、ジャンケンに勝つともう一個くれるのか

あいこと負けは一個なんだな

じゃんけん弱いと出来ないな……


弱くない店主のおばさんとの勝負に買って両手にりんご飴を持ってくる


妹「おにぃ、あげる」

いや、いらな……


俺「ありがとな」

一緒に食べたいってことなんだろ

とりあえず今日くらいは、言う事聞いてやるか


兄妹そろってりんご飴を齧りながら縁日を見てまわる


妹「おにぃ、怒ってない?」


俺「別に怒ってないぞ?」


妹「そっか。よかった……」


俺「でも、何でお前があの二人を誘ったのか分からないな」

多分、二人を追い返して俺と二人で祭りに来ることも出来たはずだ


妹「取引だよ……ほんとはおにぃを独り占めするつもだったんだけど……」

やっぱりか


妹「遊びにきた先輩達に帰ってもらいつつ、おにぃには宿題に専念してもらう必要があったんだよ」

そうだろうな、妹としては


妹「でもね、追い返すのは出来ても……どうすれば宿題に専念してもらえるかは分かんなかったの」

ふーん

でも、随分と手厚いサポートだったよな


妹「だから、先輩達と取引したの。どういう手助けなら、邪魔にならないかとか、ありがたいかとか……教えてもらう代わりに、今日のおにぃをシェアする事になったんだよ」

そうか……

あの手厚いサポートの裏にはそんな取引があったのか


俺「そうか」


妹「ごめんなさい」


俺「何で謝るんだ?」

宿題が無事終わったのはお前の手助けあってのことだろ


妹「勝手に先輩達のこと誘ったし、計画のこと黙ってたし」

まぁ、聞いてたら来なかっただろうしな


俺「悪いと思ってたのか」


妹「そりゃそうだよ!でも、どうしても来たかったの」

そんなに祭りって楽しいか?


妹「多分、もう一緒に来れないから」

なんだそれ?

来たきゃ来年も来ればいいだろ?


妹「来年受験して、合格したら寮暮らしになるし……多分帰ってくるはお正月くらいだから」

は?


俺「その学校、夏休み無いのか?」

変な学校だな


妹「あるよ!でもね、入学したら今まで以上に勉強しなきゃだし……その久しぶりに会うと、暴走しちゃうかもだし……そんな事になったらおにぃに嫌われちゃうもん!!だから、入学したら卒業まであんまり帰らないと思う……」

そっか……寂しくなるな


俺「そうか」


妹「だから、今日が最期のチャンスだったんだよ。おにぃを私に振り向かせるには、今日しかないの」

そんな思い詰めなくても……兄妹ってのは切っても切れない関係なんだぞ


妹「でも、やっぱダメそうだね。ははっ……無駄になっちゃったかな。この浴衣と帯ね、自分で選んだだよ。下駄は売り場のお姉さんが選んでくれて、髪飾りはお母さんが選んでくれたんだ。頑張ったんだよ……とっても頑張ったの……なのに……やっぱ……」

涙は見せず、でも鼻声でそう呟く妹に

俺はなんて声をかけてやればいいのか、見当もつかなかった


俺「その浴衣、似合ってるぞ」

その程度の言葉を送るのが、精一杯だった


妹「ありがと……ねぇ、おにぃ……はどうしても恋愛対象にはならない?」

それは……


俺「…………」

なんて言えばいい

十年以上一緒に過ごした家族を、恋愛対象としてみれるわけないじゃないか

妹は大事だ

でも……それは家族として、だ


妹「そっか……おにぃ、一つ約束して」


俺「なんだ?」


妹「絶対に幸せになってね。私の気持ちに応えなかったんだから、それくらいはギムだよ?」

義務、か……

幸せになれって言われてもな……


妹「あ~あ、やっぱダメだったかぁ。あ、おにぃ?ちゃんとお義姉ちゃんになる人は紹介してよね?」

そんな先のこと言われてもな


俺「そんな人がいれば、いいけどな」


妹「あ~!そんな事言うんだ!もう!!……もし見つからなかったら、おにぃの事襲っちゃうからね!」

妹に襲われるのは困るな


俺「それじゃ、頑張って見つけないとな」


妹「そうだよ!」

もう鼻声ではなくなったけど、きっと無理してるんだよな

元気なふりして、俺を気遣ってくれて……よくできただよ









そんな話しをした後は、縁日をあっちこっち冷やかして見て回ったんだが


リンゴ飴を半分ほど食べたところで問題が発生した!!!

妹が人の波に攫われて、行方不明になった……!?


さっきまで俺の隣を歩いていたのに……!!

妹はどこに!?
























俺「とりあえず、電話するか」

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