第173話 南城さんとお祭り

南城さんに連れられて縁日の間を歩いて行く


南城さんが向かう先の人込みは、何もせず割れていく

さながら、モーセの十戒だな

その事に何も疑問に思ってないから、きっと普段からこうなんだろうな

楽でいいなぁ……


南城「ねぇ!何食べる!?」


俺「何か食べるの?」

いきなり?


南城「え?だってお祭りだよ?お祭りって言ったら屋台でしょ⁉」

いや、そう……なのか?


俺「えっと、南城さんは何食べるの?」


南城「えっと……焼きそばとお好み焼きと、たこ焼きでしょ。あとかき氷と人形焼!」

多っ!!!


俺「そんなに食べるの?」

明らかに食い過ぎだと思うけど……


南城「うん!お祭りって楽しいよね!」

楽しいのは同意だけど……


俺「俺は、とりあえず焼きそばだけでいいかな」


南城「そっか。じゃ焼きそば買いに行こ!」

自然と俺の手を取り引っ張っていく南城さん

そんなナチュラルに手を握られると、ドキドキするんだけど……!!

直ぐ近くに焼きそばの屋台があるのに、どんどん奥へ向かっていく


俺「ねぇ!?どこ行くの?」

通り過ぎちゃったよ!?


南城「毎年アッチの方に他より安い値段のトコあるんだよ!人気だから、少し並ばないといけないから早く行こ!」

毎年食べに来てるのか……






南城さんに連れられて少し奥まったトコにある焼きそばの屋台に到着する

並んでる人数はざっと10人くらいか?

南城さんと一緒に並び数分待って順番が回ってくる


おっさん「へい、らっしゃい。おお!嬢ちゃん!今年も来てくれたのか!」

顔なじみ!?


南城「はい!焼きそば2パックください!」


おっさん「はいよ。ちょっと待ってな」

屋台の店主が透明のパックに焼きそばを盛る


おっさん「サービスで多めによそっておいたからな!」

パックに輪ゴムをかけて、割りばしを差し込む


南城「ありがとうございます!」

このおっさん、見た目は怖いけど……気さくな良い人なのかも


おっさん「それで、そっちのあんちゃんは彼氏さんか?」


南城「えへへ、そう見えます?」

俺「違います!」


おっさん「嬢ちゃん?」


南城「今は違うけど、未来の彼氏……の予定です!」

そんな予定はない!!


おっさん「は~ん。なるほどなるほど……。おい、あんちゃん」


俺「は、はい?」

一瞬で眼が鋭くなった!?


おっさん「嬢ちゃん泣かせたら、ただじゃ済まさねぇからな」

恐っ!!

いきなりドスの効いた声で脅さないでください!!

通報しますよ!?


南城「彼に何かしたらダメですからね!私の大事な人なんですからね!」


おっさん「でもなぁ」


南城「そんな事言うと来年は来ませんよ!」


おっさん「ハッハッハッ!そりゃ困るな!嬢ちゃんが来てくれてから、売り上げが爆上がりなんだぜ」

流石南城さん……

意図せず名前無しのおっさんに影響を及ぼしてる


お祭りだし、まぁ、いろんな人がいるとは思ってたけど……

まさか、お好み焼きの屋台でもたこ焼きの屋台でも同じ様なやり取りするとは思ってなかったよ


南城さん、顔なじみの人多すぎじゃない!?


南城「それじゃ、食べに行こ!」

両手に食べ物を持ってどっかに向かって歩き出す南城さん

その後ろをついて行く俺


南城さんの向かう先は段々と人の密度が下がっていく

つまり人気のない所へ向かっている


大丈夫かなぁ……










南城さんが案内した先は一応祭りの主催の神社の裏側だった


南城「ここね、食べるのに穴場なんだよ。誰も来ないし、座る場所広いし」

なるほど

社の裏側の廊下みたいな所に座るのか

これ、無許可だけど大丈夫かな?

見つかって怒られないかな……


南城「残り時間も少ないし、食べよ!」

あ、そうだよ!

説明してもらわないと!


俺「あのさ、今日のこと何も聞いてなかったんだけど」


南城「それなら春香か妹ちゃんに聞いて!それより今は食べよ!」

そんなに急いで食べる必要あるのか?

でも、教えてくれなそうだし……


とりあえず、俺も焼きそば食べよう

縁日で買った焼きそばは、思いの外美味しかった


俺が焼きそばを食べ終えた時、南城さんは焼きそばとお好み焼きを食べ終えていた

食べるの早いな


たこ焼きを食べている姿を何となく眺める

ハフハフしながらたこ焼きを頬張る南城さん

ヤケドしなきゃいいけど……


南城「あ、そうだ!はい、あ~ん」

なぜか、最後の一個を割りばしで掴んで俺に差し出す


俺「いや、いらないよ?」

別に食べたくて見てたわけじゃないからね⁉

食べたくなったら自分で買って食べるからね⁉


南城「あ~ん……」

諦めてよ!

いらないって言ったでしょ⁉


俺「いらな、ぐぅっ!?」

口を開けた瞬間捻じ込まれた熱々たこ焼き

あっつ!予想してたよりも熱い!!


南城「美味しいでしょ!」

口の中ヤケドしたんだけど⁉


俺「んぐーーーー……!!」

熱い!熱い!!熱い!!!

何とかたこ焼きを飲み込んで口を開けて冷やす


南城「もう一つ買ってこよっか?」

ブンブンと首を横に振る


俺「いや、もういい!いらないから!あっつー……いきなり口に突っ込むのはダメだよ!」


南城「ふふ、ごめんね。私ばっか食べてるみたいで恥ずかしかったから……つい」

恥ずかしがるなら食べなきゃいいでしょ⁉

それと“つい”でヤケドさせるのもヤメテほしいんだけど!!

抗議しようとしたその時、南城さんのスマホに電話がかかってきた


南城「あ、もう時間みたい……」

電話に出ると、一言二言話してすぐに切る


南城「春香が待ってるから戻ろ」

次は堀北さんか……

てか、何で俺がこんな目にあってるのか堀北さんは説明してくれんのかな


いや、堀北さんなら説明してくれると信じよう……

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