第170話 誰の趣味?

母「あら、帰ってきたの?」

あれ?

ちょっと機嫌悪そう?


父「あ、はい。帰ってきました」

父さんも感じ取ったみたいだな


母「そう。帰ってくるなら、連絡してって何度も言ってあるでしょ?」

あ、コレ……怒ってる……


父「え、あ、はい。すいません」

母さん……そんな怒らなくても……


母「はぁ~、食材足りるかしら……」

めっちゃ怒ってるなぁ


父「ほんと、すいません。以後気を付けます、はい……」

そしてどんどん父さんが小さくなってくな


母「あ、そうだわ。今日は外食にしましょう!」


妹「やった!」

外食かぁ……

どっちかというと家でゆっくり食べる方が好きなんだよなぁ


母「何食べたい?」


妹「ん~~、お寿司!!」

寿司か……

肉食べてぇなぁ


母「じゃ、お寿司屋さんに行きましょ。いいわよね?」


父「もちろん良いとも」

妹の御機嫌取りか……


俺「じゃ、着替えてくるか……」


妹「おっ寿司~♪おっ寿司~♪」


俺と妹は階段を上がってそれぞれの部屋へ入る

さて、適当に着る服選んでっと

あ~、そういえば……最近外出てないな……?

久々に部屋着と寝間着以外を着るんだな


着替えを済ませてリビングへ下りる

母さんは買ってきた食材を冷蔵庫にしまっていて、父さんは椅子に座ってじっとしている

父さんに倣って俺の椅子に座る


父「それで、お前の恋人候補は見つかったのか?」

は!?


俺「いや、見つかってないけど」


父「そうか。あんまり時間はないぞ?」


俺「やっぱり、そうなんだ……」


父「ああ。前より寧ろ悪化したと言っていい。次名前持ちに変化したら、戻れる保証はないんだぞ」


俺「そっか……でも、妹とは付き合えないからなぁ」


父「当たり前だろ!!」

そんな怒鳴るなよ……


母「あら、何が当たり前なのかしら?」

冷蔵庫に食材を仕舞い終わった母さんが父さんの声を聞きつけて、話しに加わってきた


父「あ、いや、なんでもないぞ?」

うわ~……嘘下手だなぁ


母「どーせ、『娘はやらん!!』とか言ってたんでしょ?」

流石母さん、父さんの事よく理解してるな

でも、少し違うよ……

俺は妹と付き合いたいとも、ましてや結婚したいとも思ってないから!!


俺「母さん。何度も言うけど、俺は妹とどうこうなるつもりはないから」

そこんとこ勘違いしないで欲しいな!


母「またアンタはそんな事言ってー、お互いの事を理解しあえてるんだから何の問題があるって言うの?」

相手、妹!!!


俺「理解しあえてるなら、付き合いたいとは思わないんじゃないかな……」

こっちの気持ちを理解できてるならね!


母「はぁ、アンタって子は……理解はしても、従順になるわけじゃないの!そんじょ其処らのペットじゃないのよ?」

いや、ペットの方がマシだろう

躾け次第で言う事聞くんだから……


妹「おにぃ……」

母さんと話していて気付かなかったが、いつの間にか妹が着替えて下りてきていた


俺「なんだ?」

そんなリビングの入り口で突っ立って


妹「ゴメンね。その趣味に付き合うのはちょっと……私、ペットじゃなくて恋人になりたいから」

どんな勘違い!?


俺「俺にそんな趣味はない!!」

断じてない!!


妹「あ、でも、それで付き合ってくれるなら……ちょっとだけ、頑張ってみよっかな……」

俺の話を聞けぇーーーーーー!!!


俺「なんでだよ!?俺にそんな趣味はないって言ったの聞こえなかった!?俺の声届いてる!?」


妹「大丈夫だよ。分かってる。おにぃだって恥ずかしいもんね。この事は皆には秘密にするからね!」

秘密にするのは賛成だけど!だけど!!


俺「聞こえてないね⁉それとも無視してる!?俺の扱い酷すぎない!?」


妹「おにぃ、この服どうかな?」

うん、多分似合ってるぞ

でもな……!


俺「わざとらしく話題を変えるなよ!訂正させてよ!俺を変態にしないでほしいんだけどな!!」

そっちの方が重要なんだよ!


妹「え?大丈夫だよ!おにぃは前からちょっと変態だと思ってたし、何も変わらないよ!」

酷い!!

俺、妹から変態だと思われてたの!?


妹「でも、そんなおにぃの事も、大好きだよ!!あ、でもでも、その……痛いのは怖いけど……あ、でもおにぃだったら……」

だから、勝手に俺を変態に仕立てるな!!

それと変な妄想するな!!

怖ぇよ!


俺「違うからな!?てか何で俺の事変態だと思ってたの!?なんでこのタイミングでカミングアウトしたの!?」

家族揃ってる所で変態宣言されるって、どういう神経してんの!?


妹「え、だっておにぃのエッチな本に色々あったし……」

無い!!至ってノーマルなモノしかないからな!!

俺のコレクションにペットモノも変態系もないから!!


俺「それ、絶対俺のじゃないから!」

多少変化球的なモノは少しだけコスプレ系があるけど、それは変態と罵られるほどじゃないだろ⁉


妹「え?じゃあ誰のなの?」

誰のって……BかDが置いてったモノか……それとも


俺「父さん……?」

を生贄にしよう


父「わ、私ではないはずだ!娘の目の届く範囲にそんなモノを置いておく訳ないじゃないか!」

そんなジャンルの本を持ってはいるのか……


母「あら、私にも秘密にしてたなんて……水臭いじゃないですか、ア・ナ・タ?」

あ~、どんどん飛び火していくな……


父「あ、いや、そのだな……アレだ。そうアレなんだ」


母「アレ、とは何かしら?」


父「アレはアレだとも……!」

言い逃れられてないな


父「そんな事より、だ!夕食を食べに行こうじゃないか!お寿司なら、いい店を知っているんだ。回らない寿司だぞ?早く食べたいだろ?な?」


妹「ま、回らないお寿司屋さん!?」

あんまり高いトコだと、緊張して味なんて分かんなくなるんだけどな……


母「あら、それは楽しみね」


父「だろう!さぁ、行くぞ!好きなだけ食べていいからな!ハハハ!」

上手い事話しは逸らせたな


母「それはそうと……帰ってきたら、しっかり聞かせてもらいますからね?」

あ、ダメだった……


父「うっ……その子供達には絶対に聞かせたくないんだが」


母「大丈夫よ。秘密にするわ」


父「出来れば母さんにも話したくないんだが……」


母「それはダメ」


父「はぁ……ダメかぁ」

もう負け確定だけど……ガンバレ父さん!

半分は俺のせいだけど、まぁ、気にしないでいいよな



家族揃って外食なんて、ホント久しぶりだな~

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