第159話 油断は禁物

部屋着に着替えて、机の上に積まれたノートと教科書を見る

一番上には宿題のリストが書かれた紙が置いてある……

どう、してだ……?

なぜ、こんなに多いんだ?

名前無し用の量じゃないだろ⁉

……まさか、名前持ちと同じ量か?


一時的とは言え、俺は名前持ち化していた

その影響で、宿題が増量した……?


ふ、ふざけんなよ⁉⁉


なんでだよぉーーーーーー⁉⁉


こ、こんな量……9月までに終わるわけねーだろ⁉


どうすんだよ……

遊びに行くとか、そういう次元じゃねーぞ……


はぁ……


でも、なんとかして終わらせないと……


これ以上、不真面目な生徒だと思われたら……留年しかねない……


それは、マズイ!


とりあえず、内容の確認をして……計画を立てて……順番に終わらせるしかないな


えーっと、現国、数学、理科、社会があって……自由研究とかは無いな

よし、変に時間のかかりそうな物は少ないな


数学は問題集だから、計画が立てやすくて良かったけど

現国は、読書感想文か……

まずは、読まないといけないな……あまり早く読めないから頑張らないと……

理科と社会は、プリントか……これ何枚あるんだよ……どっちも30枚以上あるだろ


でも、一日に3枚もやれば……ギリ間に合うかなぁ


よし、一番の課題は現国の読書感想文

次は大量のプリント

数学の問題集は、急がなくても何とかなりそうだな


とりあえず、今日はプリント少しやるか


机に向かい、プリントを広げる

えーっと……教科書見ながらやらないと分かんないな


集中して宿題を進めていく


なんとか社会のプリント1枚を終わらせた所で

コンコンとノックの音聞こえる


俺「はーい?」

母さんか?

もう昼飯できたのかな

ドアを開けたのは、母さんではなく妹だった


妹「おにぃ、今ヒマ?」

ドアから顔を覗かせた妹は、そんな事を聞いてくる


俺「ヒマじゃない。めっちゃ忙しい。分かったら、部屋から出てってくれ」

まだ、プリントが全然終わってないんだ


妹「ひ、ひどい……おにぃ、冷たい」

酷くないし、冷たくもない


俺「宿題が鬼のようにあるから、お前に構ってる暇なんてないんだよ……」

はぁ……腹減った

昼飯食べたら、図書館行って本借りてきて

プリント終わらせて、本読んで、数学の問題集解いて

やる事多いなぁ


妹「もう!少しくらい構ってよー!一緒に勉強するって約束したじゃん!!」

あ~、そんな約束したっけかなぁ


俺「また今度な~」

今はそれどころじゃないっての


妹「もう!おにぃ!そんなに冷たくすると、お母さんに言いつけちゃうからね!」

何を言いつけるんだよ……

こっちは時間が足りないんだよ!


妹「おにぃが私を襲ったって」

はぁ⁉


俺「そんな嘘に」

騙されるわけ……


妹「きっとお夕飯は赤飯だね!」

そうだ……母さんは妹の味方だった……


俺「ヤメロ……洒落にならないだろ」

冤罪だけど、きっと釈明はさせてもらえないよな……


妹「止めてほしい?なら、私を構って!ほら早く!ね!ね⁉」

クソうぜぇ……

いつから妹はこんなになっちゃったんだ?

兄さんは悲しいぞ


俺「はぁ……構えって、何しろって言うんだよ」

テキトーにあしらって宿題の続きをしよう


妹「それはおにぃが考えて!」

……もうキレていい?

ウザくてしょうがないんだが?


俺「俺が考えるのか?」


妹「そうだよ!散々妹に心配かけたお詫び!」

そうかそうか

そこまで言うなら仕方ないなぁ


俺「分かったよ。それじゃドア閉めてその前に立ってくれ」


妹「え?何で?」


俺「いいから、早くしろ。早くしないと止めるぞ」


妹「わ!それはダメ!はい!ここに立てばいいんでしょ!ほら立ったよ?」

よし


俺「次は目を瞑れ」


妹「……う、うん」

ギュッと固く目を瞑る

棒立ちのまま放置したら、どんな反応するかなぁ


妹「つ、次は?」

まぁ、早いとこ部屋から追い出したいし

ソワソワする妹に壁ドン、いやドアドンする


俺「そのままじっとしてろよ?」

妹の正面まで行き耳元で声をかける


妹「ち、近いよっ……」


俺「じっとしてろ。動くなよ?」

硬直する妹……


妹「な、何するの?もしかして、おにぃ……」

若干顔を上に向ける妹

きっと勘違いしてるよなぁ


俺「3……2……1……」

ドアノブに手をかける


俺「ゼロ」

ビクッとした妹のおでこを小突くと同時にドアを開ける


妹「へ⁉え⁉」

驚いて目を開けるが、時既に遅し!

後ろにドアがあるからと安心して倒れたが

しかーし!

ドアは今開け放たれた!

そのまま廊下で尻もちついてろ!バーカ!


俺「じゃあ、な⁉」

よし、後は妹が入ってこないように鍵かけておけば完璧だな

そう思ったのだが……

油断していた


妹は倒れる前の咄嗟に俺の服を掴みやがった⁉


俺「ちょ、おまぇっ」

引っ張られて俺諸共廊下に倒れる

何とか手をついて、妹を下敷きにせずに済んだけど……

床に両手を着いて、妹に覆いかぶさるような体勢になる


妹「お、おにぃ……キスしていい?」

何言ってんだよ⁉


俺「ダメに決まってるだろ⁉」

膨れっ面で俺の首の後ろへ手を回すな!

くそ……手首が痛い!


妹「キスして、いいよね?」


俺「ダメだ!やめろーー!」


母「あらあら、お取込み中だったのね。大きな音がしたから様子を見に来たけど、お邪魔だったかしらね」


俺「か、母さん!助けて!妹に襲われる!」


母「寧ろアンタが襲ってるように見えるんだけど……?」

た、確かに⁉

覆いかぶさってるの俺じゃん!


俺「ってそうじゃない!!いいから助けてくれ!!」

これ以上は洒落にならないって!

それにそろそろ手首の痛みが限界だ……


母「もう、仕方ないわねぇ。ほら、お母さんと約束したでしょ?ちゃんと同意を得てからね?じゃないとダメよ?」


妹「むぅ~~~~~」

やっと手を離してくれた妹

サンキュー母さん!


でも……どんな約束したんだよ


母「それと、お昼出来たわよ。下りてきなさい」


妹「はーい」

はぁ……

これから毎日こんな感じで相手しないといけないのか……?

夏休み中ぐらい、のんびりさせてくれよ!

ただでさえ宿題が大量にあんのによ!!

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