第143話 もう……いいや

もう腹括るしかないか……


俺「分かった。もういい……疲れた……」


南城「え?」


俺「えっとNo.35さんだっけ?」


35「なんだ?」


俺「もう散々だ。俺はお前らの仲間として同行する」


35「それを信じろと?」


俺「ああ。折角使えると思って連れてきた名前持ちが、ぜんぜん役に立たない上に寧ろ迷惑をかけられるなんてな」


南城「え……」

堀北「……」


35「ふん、思惑が外れたな」


俺「ああ、ハズレもハズレ大ハズレだ。ハッキリ言ってガッカリだ」

暗く不機嫌な顔で南城さんを睨む


南城「っ……⁉」


俺「はぁ~……あ、そうだ。頼みがあるんだけどさ」


35「頼み?」


俺「ああ、最低限の自由を保障してくれ。監視を付けてもいいし、軟禁されても文句は言わない」

もうそれは慣れた


35「ほう」


俺「だが、縛るのはヤメテくれ。最近動けないように拘束され過ぎてウンザリなんだよ」

そろそろ手首が大変なことになる


35「ははは!不運だなぁ」

笑い事じゃねーんだよ……


俺「全くな。それで、俺の自由は保障してくれるのか?」

大事な事だ


35「そうだな、可能な限り自由は保障されるだろう。丁重に持て成すと聞いている」

それは良かった


俺「それを聞いて安心した。それじゃ、行こうぜ」

長居は無用だ


35「ちょっと待て、リーダーに伝達する」


俺「はいはい。早くしてくれ」

四季島が来たら面倒だろ


35「こちら35応答願います……はい。標的がこちらに来る事を了承しました……はい、最低限の自由を欲しいと……はい、はい……了解です。では」


俺「どうだ?」


35「屋上でリーダーと合流する」

屋上、ね


俺「了~解。あ、縛る物あるか?」


35「あるが、何に使うんだ?」


俺「そこの役立たずを縛って動けないようにするんだよ。万が一追ってきたら面倒だろ?」


35「そんなの始末すればいいだろ?」

分かってないなぁ


俺「はぁ~…残念ながら、そこの二人は特級の名前持ちだ。簡単に始末できるとは限らないし、ヘタ打てばコッチが危なくなるぞ?」


35「そうか」


俺「始末に時間がかかれば、もっとヤバイ奴が来るぞ。そいつの名前は四季島太一、この学校で一番厄介な名前持ちだ」


35「そんなに厄介なのか?」


俺「ああ、銃で撃たれたのに平然としてやがった。あれはハッキリ言って異常だ」


35「銃が効かない、だと?これだから名前持ちはっ……分かった。おい、その名前持ち二人を縛り上げろ。すぐに移動開始するぞ」

ふぅ~……よし……


俺「そうだ。最後にお別れの言葉でも言っておこうかな」


35「時間がないんだろ?手短にしろよ」


俺「ういーす」

まずは南城さんだな

縛られて床に転がされた南城さんに近付き小声で話しかける


俺「南城さん、ごめんね。やっぱり俺は名前無しだから、さ。バイバイ」


南城「行かないで!バイバイなんて……ヤだよ……」

残念ながら、もう引き返せないんだ


次は堀北さんだ


俺「堀北さん、無駄な抵抗はしないで。安全が確保できたら、南城さんを支えてあげてね。バイバイ」


堀北「もう、会えないの?」

頷くだけで返事をする


さて、別れはすませた


行こう……

もう二度とここに戻ってくることなんてできないだろうな


許可がでたら、家族に連絡させてもらえないか聞いてみよう


No.35と他2名の武装した男に連れられて屋上へ上がる


リーダー「よう、元気そうでなによりだ」


俺「おかげさまでな。もう、抵抗も何もするつもりはない……どうせ何をしても結果は変わらないからな」


リーダー「物分かりがよくて助かるよ。どうせなら最初から一緒に来てくれれば楽だったんだがな?」

嫌味かよ……


俺「悪かったよ。ちょっとした若気の至りってやつだから、大目に見てくれないか?」


リーダー「別に怒ってはいないさ。君が協力的になってくれるなら、ちょっとした手違いなんて気にしないとも」

嘘くせぇ


俺「ああ、是非協力させてくれ。もう名前持ちに期待するのも、関わるのもウンザリなんだ」


リーダー「そうか!なら、早急に君には働いてもらうとしよう!」

働く、ねぇ……一体何させる気なんだか


俺「何をすればいいんだ?」


リーダー「ふっふっふっ、先ずは四季島グループを潰す手伝いをしてもらおうかね」

四季島グループを……潰す?

そんなことできるのか⁉


俺「面白そうじゃん」


リーダー「そうだろう!君ならきっと賛同してくれると思っていたよ!」

そうかよ


俺「で?そこのヘリに乗ればいいのか?」

屋上には1台のヘリが着陸している

きっとコレに乗って逃げるんだろ?


リーダー「ああ、君と私と……そうだなNo.35が乗るとしよう」


35「はっ!」

えっ……?

そんなノリなの?


俺「他のメンバーはどうするんだ?」


リーダー「次のヘリが近くで待機してるから問題ない」

そうか

他にもあるのか


俺「なら、問題ないな」


リーダー「他の隊員も気に掛けるとは、君は優しい男なんだな」

他の連中がみんなに危害を加えたりするとイヤなんだよ


俺「そんなんじゃねーよ。それより、脱出手段があるなら早く行こうぜ」


リーダー「いいとも!さぁ、乗り込んでくれ。ちゃんとシートベルトを着用したら離陸だ」

シートベルトあるのか

てか、ヘリなんて初めて乗ったな


俺「よいしょっと」

えーっと……?

これ、どうなってんだ?

どれが一人分なんだ?


35「これは、こことソコを繋いで。それで、これで締め具合を調節するんだ」

ほうほう、なるほど?

全然分かんないや


俺「35さん、ありがと」


35「いえ、ちゃんと着用しないと危険なので」

めっちゃ親切だな


俺がシートベルトを締めたあと、外からドアを閉められてロックされる


リーダー「離陸するよ」

機長?さんが色々操作すると、プロペラの回る音が鳴り出し

段々と大きく高音になっていき、突如ふわりと浮遊感を得る

プロペラというかエンジン?の音が大きくて、他には何も聞こえなくなる

これ……絶対耳悪くなるやつだ!

くそぉ、耳栓くらいくれよ!!


それと、想定外の事態として

ヘリコプターって……意外と揺れるんだな⁉

なんか、ちょっと怖いんだけど……⁉

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