第144話 ヘリ酔い

耳を押さえていると、No.35さんからヘルメットを渡される

騒音に耐えつつ被ると、幾分かマシになる

俺「ありがとうございます」


35「どういたしまして」

ん!?

き、聞こえる!!

つい驚きの表情をしてしまう

そんな俺を見てコンコンとヘルメットの耳の辺りを指さす


35「スピーカーだ。マイクはコッチにある。機内で話すなら着けておけ」

ほんと……なんでこんな親切なの?

もしかして、色々教えてくれるんじゃね?


俺「これ乗ってどれくらいかかるんだ?」

あんまり長く乗ってると、酔いそうなんだけど……


35「順調に行けば30分ほどで、乗り換えだ。」

おお!教えてくれた!!

次は何聞こうかなぁ

アジトの場所とか、聞いてみよっかな


操縦士「ボスッ!?」

なにやら焦った声で操縦士がリーダーを呼ぶ


リーダー「その呼び方は止めろと言っただろ!」


操縦士「今はそんな場合ではありません!!前方に……!」

前方?


リーダー「なんだ?」


操縦士「ヘリです!!数3!」


リーダー「くそっ、もう来たのか!?なんかとして振り切れ!!」


操縦士「不可能です!前方のヘリ、こちらより性能が上です!」


リーダー「くそっ……どこか、最寄りの隠れ家に着陸しろ!そこで迎撃する」


操縦士「ラジャー!」

ぐわんとヘリが急旋回する

気持ち悪い…………!!


機体は前が下がり斜めに傾く

え?

まさか、このまま行くの?

うぇっぷ…………

は、吐かないように無心になるんだ!

じゃないと、この狭いヘリの中が大変な事になるっ…………


俺「35さん……」


35「どうした?ん?顔色が優れないようだが」


俺「酔いました…………吐きそう」


35「はぁ!?ちょっ、ホントに?この程度で?」

この程度って…………初めて乗ったんたぞ!?


俺「うぅっ…………」


35「もう少しだ!もう少しだけ我慢しろ!そしたら俺達の隠れ家に着くからな!機長!出来るだけ急いでくれ!!そう長くはもたなそうだ!!」


操縦士「んな事言われてもよ、これでも機体に無理させてんだ!これ以上したらぶっ壊れて墜落しちまうよ!」

そんな事はどーでもいい……

もう、そろそろ……限界……


35「降ろして!!早く着陸してぇぇーー!!」


No.35さんの叫び声がスピーカーから響くが

いくら大声出した所で吐き気が無くなるわけでも、瞬時に着陸できるわけでもない


その後、機内に異臭が充満したのは言うまでもない














一度吐いて気分が少しだけ回復した


俺「ごめん……」


リーダー「気にするな」


俺「だいぶ飛んでるみたいだけど、アジトはまだなのか?」


操縦士「相手が進路を塞いできやがったんだ。避けながら飛んだせいで、最寄りの隠れ家まで行く燃料がない。適当な所に着陸して、後は陸路で行くことになる」

ホッ……

やっとこの揺れるヘリから降りられるのか


俺「何処に降りるんだ?」


リーダー「そうだな……を回収しに行くか」


35「リーダー!?現状の戦力では」


リーダー「戦力などもう不要だ、こっちには彼が居るじゃないか。予定変更だ、これより四季島カンパニーに向かう」

彼って……俺、だよね?

てか、四季島カンパニーに行くのか

もしかして、チャンス来たんじゃないか!?


操縦士「ラジャー!進路変更、目的地…四季島カンパニー第一ビル」

上手くこいつらを出し抜けば、逃げ出せるかもしれない!!


外の景色を見ても、上空からじゃ自分が今どの辺に居るのか見当も付かない

景色を見続けてると、目的地に近付いたのか高度を落としていく

進行方向に背の高いビルが、幾つか見えてくる

ヘリはその中で一番高いビルの屋上ヘリポートへ向かう

まだ気付かれていないのか、誰も出てくる様子はない


無事に着陸し、ヘリから出る


俺を真ん中にして、前にNo.35さん右にリーダー、左後ろに操縦士の人と並んで移動をするみたいだ

俺以外は全員がライフルで武装している


慎重にドアを開けて、ビルの内部へ侵入する



こんだけ少人数なんだ、隙を突いて逃げ出す機会は絶対あるはずだ

それまでは、このまま大人しくこいつらの言いなりになっておこう

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