第141話 奪還・南城さん堀北さん

ひっそりと廊下を進むが……誰もいない

これ、普通に歩いて行っても問題無かったっぽい?

とりあえず、自分のクラスには着いたけど

これから、どうすっかなぁ

来たはいいけど、中には武装した奴がいるし……


ガタン!!

廊下で思案してると、中からイスが倒れる音が聞こえてきた⁉


中を覗くと……堀北さんが胸ぐらを掴まれて立たされていた!!

ヤバイんじゃないか⁉

もう作戦とか考えてる猶予はない!!

勢い良くドアを開ける!!


俺「そこまでだ!!」


堀北「えっ⁉」


武装「何者だ!」


俺「お前らが探してる標的だよ!」

助けなきゃ、その一心で飛び出してみたけど……

この後、どうしよーーーーーーー⁉⁉


武装「そうか、お前が男子生徒Aだな?」


俺「ああ、そうだ。こうして姿を現したんだ。その子を離せ!」

あえて名前は呼ばない

その方がただのクラスメイト感が出ると思うから


武装「ほほぉ、一丁前いっちょまえ英雄ヒーロー気取りかぁ?」


俺「そ、そんなんじゃない!でも、お前らの目的は俺だけだろ⁉」


武装「はぁ、まぁそうだな~。今回の作戦はお前の捕獲だ」


俺「なら、その手を離せよ!」


武装「でもなぁ、残念だが俺にとって名前持ちは全て“敵”なんだよ」

はぁ?

敵ってなんだよ⁉


武装「そんな不思議そうな顔すんなよ、つれねぇなぁ。お前だってあんだろ?こいつ等に酷い目に遭わされた事が何度も!何度も!」


俺「そんなこと」

……無いって言いきれるのか、俺に?


武装「だよなぁ!名前持ちっていう理不尽な奴が、平然と俺たち名前無しを傷つける!」

確かに……名前持ちと名前無しの間には目に見えない溝がある

そして、その溝が埋められないほど深い事を俺達mobは知ってる

しかし、名前持ちは軽々と溝を飛び越えてしまう

その結果で名前無しが傷付くのを知らずに……


俺「そう、だな……名前持ちって奴は、いつも身勝手だよな。まさに的だ」

南城さんに目を向けて、一度だけウインクする

目聡く気がついた南城さんが頷き返してくれる

よしよし、仕込みは万全だな


武装「そうさ!お前も俺達の同士だろ!なら、こっちに来いよ。復讐するんだ!そして、真の平等を実現するんだ!」

真の平等、か


俺「そうだな。それもいいかもな……」


武装「そう来なくっちゃ!手始めにこの女を」

堀北さんを殺すのか?


俺「まぁ待てよ。その女こっちに寄越せよ」


武装「はぁ?」


俺「前から一度ヤッてみたいって思ってたんだ。始末する前に、いいだろ?」


武装「ぷっ、あははははははははは!!!!お前の本性、マジで最っっだな!!いいぜ!いいぜ!最期にいい思いさせてやれよ!!」

堀北さんを乱暴に俺へ突き飛ばす

そいつは銃を天井に向けてこっちを観察している

きっとマスクやゴーグルの奥で気持ち悪い笑みを浮かべてるな


俺「サンキュー、同士」

クラスメイトからの絶望と怨嗟の声が漏れ聞こえる

まぁ、そうなるよな


堀北「そ、その……初めてだから、優しくしてね?」

いやいやいや、何その気になってんの⁉

あいつに聞こえないように小さね声で堀北さんに話しかける


俺「俺が合図したら俺の後ろに隠れてね。みんなは俺が守るから」


堀北「え……」


武装「おいおい、どーした?まさかヤリ方が分からねーとかじゃねーよな?」

何でこうも、こいつは俺の神経を逆撫でるような事を言うかなぁ……


隠し持っていた拳銃を相手に向ける

初めて構えた銃は、両腕がプルプルと振るえるほど重く感じた


武装「おいおい、何のつもりだ?」

相手の奴も銃を俺に向ける

でも、コイツはきっと撃てない

そう、命令されているハズだから


俺「お前の声は、もう聞きたくない。降参するなら、手荒な事はしないと約束する。銃を捨てて、手を上げろ!」


武装「はぁ……お前、俺が『わかりました。降参です』とでもいうと思ってんのか⁉ここにいるクラスメートを皆殺しにしても良いんだぞ?あぁ?」

まぁ、そう言うだろう事は予想してた

だから、俺は拳銃を自分の喉に押し当てる


武装「はぁ⁉おま、何してんだよ⁉」


俺「俺が死ねば、お前らの目的は達成できない。なら話しは簡単だ、俺は俺の命を人質にして闘う」


武装「お前……イカレてやがる!!そこまでして助けるような価値なんて、こいつらにあるか⁉ないだろ⁉無駄死ににもほどがあるだろ!!」

ふっ、動揺してるな


堀北「ヤメテ!君が死んじゃったら……私、私ぃ」

あれ?

堀北さんには俺の作戦が上手く伝わってないみたい?


俺「ごめん、堀北さん。でも、こうするしかないんだ」


武装「いいだろう。コレを捨てればいいんだな?そしたらお前も拳銃ソレを捨てろ」

よし、乗ってきた!


俺「ああ。まずはお前からだ」

よっぽど俺に死なれたらマズイみたいだな……この作戦、使えるな


俺という人質を使って、一番危ない武器を捨てさせる事に成功する


俺「お前も拳銃、持ってるんだろ?」


武装「ッチ……」

ごそごそと隠し持っていた拳銃を床に捨てる


俺「それだけか?」


武装「ああ」


俺「だって、南城さん!」

そっと背後まで忍び寄っていた南城さんに声をかける


南城「うん!」


武装「はぁ⁉」

振り返るが、時すでに遅し

武装解除した名前無し一人程度、南城さんの敵じゃない!!


南城「空手部直伝!!正拳突き!!」

「ぐおっ……!!」

くの字になる相手に対して更に技を繰り出す


南城「ボクシング部直伝!!ジャブ!ジャブ!ストレート!!」

ドス!ドス!バスン!

顔面にパンチが入り、ふらふらと後退る

南城さんは更に足元に落ちているライフル?を掴み


南城「剣道部直伝!!籠手!面!胴~~~~~~~!!」

撃つのではなく、打撃武器として扱う

どこかのネジが壊れたのか、一部パーツが外れて壊れる

驚異的な速度で振るわれる打撃についにたまらず膝を着く

しかし、南城さんの攻撃は止まらない⁉⁉

そろそろ、止めないとマズイんじゃ……


南城「柔道部直伝!!背負い投げぇーー!!」

ガチガチに装備を固めた大人をものともせず、一本背負いを決める

床に叩きつけられて、肺の空気を全て吐き出し息が詰まる

そのまま、動かなくなった……

もしかして、死んだ?


南城「ふぃ~~、よし!鈍ってなかったね!ブイ!」

ピースサインを俺に向けてくるけど……


俺「え、っと……南城さん?もしかして、殺しちゃっ」


南城「え⁉だ、大丈夫だと思う…よ?この人だって鍛えてるみたいだし、人間そんな簡単に死なないって!ははは……」

ツンツンと足で突っつくとピクピクと微かに動く

生きてるのは良かったけど、その確認方法はどうかと思うなぁ……


俺「とりあえず、そいつ縛って動けないようにしよう」


南城「うん!」

クラスメイト全員で縛れる紐状の物を持ち寄って拘束する


南城「これで、安全になったのかな?」


俺「残念だけど、まだまだ危ない奴らがいるから」


堀北「えっと……?」

あ、堀北さんが混乱してる!

珍しいもの見れた!!


俺「さっきはごめんね。怖かったよね」


堀北「何が起きてるの?」


俺「うん。今からちゃんと説明するから、抱き着くのは止めてくれないかな?」

がっしりと右腕に抱き着いてきている


堀北「だって……」


南城「もう、春香ばっかズルいよ!倒したの私なんだから、ご褒美もらうなら私でしょ⁉」

南城さんが俺の左腕に抱き着く


B「あ~……もしかしてA、なのか?」


俺「そうだよ。BもDも無事で何よりだ」


D「その見た目は……イメチェンか?」


俺「ちょっと訳ありでね……」


B「まぁ、お前だもんな……」


D「だな……」


俺「おい、それどういう意味だよ」


南城「それで、これからどーする?」

抱き着いた状態で聞く事じゃないでしょ⁉


俺「えっと、四季島が他の名前持ちを助けに行ってるから」

そういえば、その後どうするか聞いてないな……


堀北「四季島くんも動いてるのね。なら、解決は秒読みね」

さすが四季島、信頼度高いなぁ


南城「慣れてるもんね~」

そういう方向か……

いやだな、こういう状況に慣れる生活って


俺「とりあえず、四季島が何かしらの連絡をくれるまで待つしかないかな」


南城「りょーかい!」

堀北「えぇ、わかったわ」


四季島……早く連絡寄越してくれ……

直面する危機を脱したせいか、二人が普段より強く体を押し付けてくる

そのせいで、クラスメイトからの視線が超痛い!めっちゃ刺さってる!!

こんな状態が続いたら……胃薬だけじゃ間に合わなくなる……

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