第120話 大家の男性と父さん

俺「俺の中にあるN-DNAの持ち主は……テンドウ ソラって人のモノだ」


四季島「テンドウ ソラさん。その人は何者なんだ?」


俺「他言無用で頼むぞ」

言いふらしたりはしないだろうけど


四季島「ああ、もちろんだ」


俺「その人が俺の父親らしいんだ。俺が生まれる前に事故死したんだってさ」

母さんを残して、簡単にあの世に行っちまったやつだ


四季島「そうか……すまない。俺は余計な事をしたんじゃ……そのせいでお前は家を出る羽目に」


俺「いや、そうじゃないよ。実はさ、もう一つ大きな問題が発覚したんだ」


四季島「もう一つ?」


俺「この前、俺の妹に会っただろ」


四季島「ああ、カラオケで挨拶したな」


俺「妹も俺と同じかもしれないんだ」

かもしれない

でも、多分……間違いなく同じ状況だ


四季島「まさか……」


俺「妹も片親が名前持ちだったんだよ」


四季島「そんな事……ありえるのか……」


俺「両親の話が本当なら、な」

わざわざそんなウソを吐く必要はない


四季島「そうか……それが引っ越しの理由か?」


俺「そうだよ。俺の近くに居れば妹も名前持ちから影響を受けるだろ?」


四季島「そうだな……妹を守る為にも、離れるしかないのか」


俺「そういう事。後は南城さん達を妹に近付けさせないように、何か手を打たなきゃな」


四季島「でも、お前はどうするんだ?妹さんに近付けさせないようにしつつ、お前も距離を取るなんて出来るのか?」

それは……おいおい考えていくさ


俺「話しは終わりだ。教室に戻るぞ」


四季島「おい」


俺「なんだよ」


四季島「俺に何か出来ることがあれば、言ってほしい。全力で手伝うから」

そんな自分を責めるような表情をしなくても、俺はお前を責めたりしないってーの


俺「そうだな。何かあれば頼むよ」

俺に身に何かあれば、南城さん達の事頼むぞ



教室に入ると、南城さんと堀北さんがこっちに寄ってくる


南城「大丈夫?何もされなかった?」


俺「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても。それより授業の用意しないと」


二人を着席するように促して、俺もカバンから筆記用具と教科書ノートを取り出す


授業中、チラチラとコッチを心配そうに窺う視線を送る南城さん達に

その都度大丈夫だよって合図を送るのに忙しく、授業が全然頭に入ってこなかった……



帰る前に、一応BとDにも一人暮らしの件を伝えると

引っ越し祝いに遊びに来ると言ってきた

もちろん断った

こいつら、絶対遊びたいだけだろうからな












家に帰ると階段を下りてくる妹と鉢合わせた


俺「ただいま」

しかし、返事はなく

階段を駆け上がって部屋に戻ってしまった


はぁ……どうすっかなぁ


父「帰ったのか」


俺「あ、うん。父さん、ただいま」


父「早速だが、部屋の手配が済んだぞ。見に行くか?」


俺「あ~、うん。行く。カバン置いてくるからちょっと待ってて」

階段を上り自室にカバンを放り込んで階段を下りる


制服のままだけど、いいよな?


父「それじゃ、行くか」


俺「うん」

父さんに案内され、3、40分歩きやっと到着したのは

ごく普通のアパートだった

古そうではあるが、汚いわけでない


俺「ここ?」


父「そうだ。大家に挨拶に行くぞ」


俺「うん」

怖くない人だと良いなぁ


アパートのすぐ近くの大きな一軒家が大家さんの家らしい


ピンポーンとチャイムを鳴らし、少ししてドアが開き

父と歳の近そうな男性が出て来た


父「急にすまないな」


男性「良いってことよ!それがお前のせがれかい?」

軽く会釈をする


父「そうだ。自慢の息子さ」


男性「そうかそうか!はは!連れてきたって事は内見か?」


父「頼めるか?」


男性「いつでも来ていいって言ったろ?鍵持ってくるから、そこでちょっと待ってな」

一旦家に戻り、すぐに鍵を見せながら出てくる男性


なんか父さんと仲良いみたいだし、昔からの知り合いなのかな?



アパートに戻ってきて、案内されたのは1階の角部屋だった


男性「ここの部屋を使ってもらうよ」

鍵を開け中へ入る

広さは、俺の部屋より少し広いくらいかな

コンロはIH式でシンクは、やっぱり小さく感じるな


室内はフローリングで、クローゼットもあるな

洗濯物は、外に干せる……のか?


まぁ、その辺は暮らしてみないと分かんないかな


男性「どうかな?」


俺「いいですね」


男性「そうか、そうか。気に入ってもらえて何よりだ」

一通り室内を見終わって、外に出る


父「急なことで、本当にすまないな」


男性「いいってことよ。ウチとしても空室はない方がいいからな。それにお前と俺の仲だろ?」


父「はは。お前は変わらないな……ありがとうな」


男性「それじゃ、引っ越しの日程とか決まったら連絡くれや。手伝うからな」


父「ああ。よろしく頼む」


男性「どうだ?お茶でも飲んでいくか?」


父「いや、今日は止めておくよ。娘が家で待ってるからな」


男性「かぁ~、家庭を持つ男ってのはこれだから」


父「お前も、いい加減結婚したらどうだ?」


男性「いや、俺はいーよ。結婚なんて懲り懲りだ」


父「そうか。それじゃ、今日はありがとうな」


男性「おう!それじゃ、引っ越しの日を楽しみに待ってるぞ」


俺「あ、えっと。ありがとうございました」


男性「引っ越してきたら、お前の親父の事色々教えてやるからな」

え?


父「この男の言う事は半分くらい嘘だから、あんまり信じるんじゃないぞ」

え?え?


男性「ちぇ、ある事ない事吹き込もうと思ってたのによ~」


父「はははっ」


男性「ははは!」


なんかよく分かんないけど、仲がいいのは分かった

それにしても、この人って父さんとどういう関係なんだ?

仲良すぎだろ……

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