第119話 屋上の鍵と内緒話

翌朝、妹は学校を休み部屋から出てくることはなかった


少し心配だけど、母さんも父さんもいるし

俺にできることはない

俺はできるだけ普段通りに登校する


俺「おはよ」


南城「おはよー!」

堀北「おはよう」


今日の授業についてや、昨日の夜のTV番組の話をしながら学校へ向かう


そこへ四季島が声をかけてくる


四季島「今日も両手に華だな」


俺「ああ、そうだな」


四季島「ん……?ふん。また何か問題事抱えてんのか」

何故バレた⁉


南城「え?何かあったの⁉」


堀北「また、私達絡み?」


俺「はぁ、学校着いたら話そうと思ってたんだよ」

まぁ、丁度校門の所だけどさ


四季島「そうか、それは悪かったな。それじゃ俺は」

立ち去ろうとする四季島を呼び止める


俺「四季島、お前にも話しておきたい事がある」


南城「なんで四季島くんなの……?」


四季島「俺にか?」


俺「ああ、そうだ」

お前にだ


四季島「分かった。なら、このまま屋上に行こう」

屋上?

こんな時間に空いてるのか?


四季島は俺たちを先導するように先に歩いていき、俺たちはとりあえず付いて行くことにした


下駄箱へ靴を入れ上履きを履く

無駄話もなく黙って階段を上り屋上のドアの前に到着した


なんと四季島はポケットから屋上の鍵を取り出して

施錠されたドアを開け放った


俺「なんで一生徒が屋上の鍵持ってんだよ」


四季島「コレか?コネだ」

コネって、そんなんアリなのかよ⁉


四季島「ここなら邪魔は入らないだろ?」


4人で屋上へ出る


四季島「それじゃ、まずは俺達全員に言える事を言ってもらおうか」


俺「そうだな。俺、一人暮らしすることになったから」

サクッと説明して、教室に戻ろう


南城「えぇ!?」

堀北「本当なの⁉」

四季島「何があった⁉」

三人共驚愕に目を見開く


俺「そんな、驚くことか?」


南城「そりゃ、そうだよ!」

堀北「唐突過ぎよ!」

四季島「まさか、親父さんと何か?」

一気に聞かれても答えられないってーの


俺「で、これから1週間くらいは準備でバタバタするだろうから」


南城「そっか。何か手伝える事あれば言ってね!」


俺「ありがとう、南城さん」

いつも南城さんは前向きだなぁ


四季島「それで、どこに引っ越すんだ?」


俺「父さんが、つてがあるって言ってくれたから…そこかな。場所はまだ知らないんだ」


四季島「そうか。もし決まってなければ、紹介しようかと思ったんだが」

まさか、お隣さんとかじゃないよな?


俺「サンキューな」

父さん、GJ!


堀北「もしかして……転校……なんて、しないわよね?」

その発言に南城さんと四季島も『そんな可能性もあったのか』と心配そうな表情をする


俺「大丈夫、転校はしないよ」


堀北「そう……良かったわ」


俺「それと、引っ越しの理由は言えないんだ。ごめん」


南城「でも、何かしら理由があるんだよね?」


俺「う、うん。まぁ、いつかはしたいと思ってたんだ。憧れてたっていうか」


四季島「一人暮らしは、憧れだけじゃ大変だぞ?」

さすが、一人暮らしの先輩だな

有難くその忠告を聞くことにするよ


俺「そうだよな……何か困った事があったら相談に乗ってもらおうかな」


南城「私に任せて!」


堀北「千秋だけじゃ…ね?もちろん私も相談に乗るわよ」


四季島「どうしても困った時は、四季島うちの力を貸そう。いざって時は相談してくれ」

いや、お前ん家の力って財力とか権力だろ?

そんな大きな力を借りるような事は、起きないと思うぞ?


俺「みんなありがと。凄い心強いよ」


四季島「それで、他に話しておく事はあるのか?」


俺「四季島だけ、少し残ってくれるか?」


四季島「そうか。俺向けの案件か」

頷いて返事する


南城「また四季島くんだけ?」


堀北「いい加減私達にも話してほしいわ」


俺「ごめん。ちゃんと話せる時が来たら話すからさ」


堀北「いつまで待ってればいいのかしらね」


南城「うん。私たち、待ってるだけなのは……辛いよ」

それでも、今は言えない……

まだ、俺の心が決まってないから

誰を好きになって、一緒にいたいと想うか

まだまだ、俺には分からないから……


俺「ごめん……」

今は謝るしか出来ないな


南城「ううん……無理言ってごめんね。行こ、春香」


堀北「そうね、それじゃ後でね」


南城さんと堀北さんと見送って、残されたのは俺と四季島だけ

他に誰もいない事を確認して、俺は四季島に全部を話す決意を固める


俺「四季島……俺の中にあるN-DNAの出所が分かったんだ」


四季島「そうか!何処だったんだ?お前に紛れ込んだDNAの持ち主は誰なんだ⁉」

興奮気味に聞いてくる四季島に、俺は言葉を詰まらせる

紛れ込んだ、か……


俺「俺の中にあるN-DNAの持ち主は……」

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